※転載・複製は,一切お断り致します。 |
|
エリダヌス座 は,晩秋から初冬にかけての宵,南の空に大きく広がっている河を象った星座です。河の源はオリオン座 の足元に輝く0等星リゲルのあたりで,くねくねと蛇行しながら南へ下り,日本では南西諸島でしかまともに見ることが出来ない1等星のアケルナルが南の果てで流れに終止符を打っています。
エリダヌス座 にはアケルナル以外に目立つ明るい星もありませんし,日本の大半の地域ではそのアケルナルを見ることができないのですが,古くから存在する星座だけあって,よく見ると紛れもなく天の大河です。エリダヌス座 は,エジプトではナイル川に,バビロニアではユーフラテス川に,ローマではパドゥス川(現在のポー川)にというように,各地で身近な川に例えられていました。
当然これらの地域でもアケルナルは見られず,昔は3等星のθ星が川の果ての星とみなされていましたし,アラビア語で“川の果て”という意味のアケルナルという名前も,以前はθ星のものでした。例えアケルナルが見られなくとも,オリオンの足元からθ星までをたどり,世界の大河に思いをはせてみられてはいかがでしょうか。
目立つ星がないといっても,エリダヌス座 の源となるβ星は3等星で,青白く輝くオリオン座 のリゲルの北西にあり,簡単に見つけることができます。最初はこの星からたどるのが一番簡単です。
β星に流れを発したエリダヌス川は,3等星のγを経て,くじら座 α(3等星)の南にあるη(4等星)まで西へ流れ,その後,アルファベットのZの字を描くように南東へ向かい,υ2(4等星)で南西へ向きを変えて昔の終着点θへたどり着きます。そして,ι(4等星)からアケルナルへと,流れ落ちるように一気に南下していきます。
***
ギリシア神話において,エリダヌス座 は,太陽神アポロンの息子フェアトンが落ちて死んだエリダヌス河。
フェアトンは人間の母に育てられていましたが,父親がアポロンであることを友だちに信じてもらえず,アポロンの神殿を訪ねます。アポロンは遠くからやってきた息子を温かく迎え「何でも望みを叶えてあげよう」と言ったのでしたが,フェアトンは,こともあろうに毎日アポロンが御している4頭立ての太陽の馬車を1日だけ御させて欲しいと頼みました。
太陽の馬車が通る黄道には獅子やサソリなどの怖い動物が待ちかまえているうえ,決して道から逸れることは許されません。アポロンは思いとどまらせようとしましたが,フェアトンは聞き入れず,アポロンも約束を破るわけにいかず,渋々ながら承諾することになってしまいます。
ところが,案の定,馬たちは馬車の乗り手がアポロンでないことをすぐに悟り,勝手気ままに走り出すのでした。しかも,高さに目がくらんだフェアトンはまともに御すこともできません。道を外れた太陽の馬車は,地上を燃やし川を干上がらせ,見かねたゼウスは馬車へ向かって雷電の矢を放ちました。
雷電を受けたフェアトンはエリダヌス河へ落ちて死に,フェアトンのために4頭の馬を馬車へ繋いでくれた彼の姉妹たちはエリダヌス河の畔でいつまでも泣き続け,やがてとうとうポプラの木に変わってしまったのだということです。
彼女たちが河に落とした涙は琥珀になったと伝えられ,琥珀を産出するポー川の河口がフェアトンの落ちた場所であろうと言われています。
エリダヌス座 の詳しいお話については星の停車場を,星の名前については星のるつぼをご覧下さい。