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ギリシア神話に登場する最高神でオリュンポス神族の長。
名前の由来は“天空”を意味するインド・ヨーロッパ語の共通の語源 dyeus で,雲・嵐・雨などの気象及び人間社会を司る神とされた。
ローマ神話ではユピテル(Jupiter)に相当し,ユピテルの語源も“父なるディエウス”(Dieu pater),すなわちゼウスと同じ神であることを表す。
ティタン神(巨人族),クロノスとレアの子。
クロノスは,その父ウラノスを倒して世界の覇者となったが,同じように自分の子に地位を奪われることを怖れ,姉のレアとの間にもうけた子(女神のヘスティア,デメテル,ヘラ,男神のハデス,ポセイドン)をすべて飲み込んでしまった。レアは末子ゼウスだけは守ろうと,クロノスにむつきに包んだ石を飲ませたのだった。
ゼウスは成長後,ガイアの薬を遣ってクロノスに吐き出させた兄達と共にクロノスらティタン神族に戦いを挑み,勝利をおさめる。そこで兄弟3人でくじを引き,ハデスが冥界,ポセイドンが海,ゼウスが天界を支配することとなる。
この後ゼウス達は天に最も近いオリュンポス山(Olympos:標高2917mのギリシア最高峰)に住んだという。
姉のヘラを正妃とするが,多くのニンフや人間の女性と関係を持ち,沢山の子をもうけた。
ゼウスとヘラの子は鍛冶の神ヘファイストス,軍神アレス,お産の女神エイレイテュイア,青春の女神ヘーベーの4人。
人間の女性セメレとの間に生まれたディオニュソスの他,ペルセウスとアンドロメダの孫娘アルクメーネに生ませたヘルクレス,アルゴスの王の娘ダナエに生ませたペルセウス,トロイア王家の祖となったダルダノス,スパルタの王妃レダに生ませたカストルとポルックス,フェニキアの王女エウローペに生ませたミノス(クレタ島の王)とラダマンチュス6(立法者)とサルペドン(リキュアの王),ニンフのカリストに生ませたアルカスなど多数の子があるが,これらの子の多くは母親と共にヘラの怒りに触れている。
ゼウス縁の星座は多いが,ゼウス自身の姿も星座になっている。ゼウスは美しい女性たちに言い寄るときに様々な姿に変身したが,その一部が下記の星座たちだ。
【おうし座】
フェニキアの王女エウローペをさらった時にゼウスが変身した,雪のように白い牡牛の姿が,おうし座になったと言われている。エウローペは牡牛になったゼウスにさらわれてクレタ島へと連れて行かれ,そこで3人の子の母となった。エウローペが上陸した土地は,彼女の名をとってヨーロッパと呼ばれるようになったという。
【はくちょう座】
スパルタの王ティンダレウスの妃であったレダが水浴びをしている姿を見たゼウスが,彼女に近づくために白鳥に変身した。その姿がはくちょう座になったと言われている。レダは二つの卵を生み,このうち一つからは,ふたご座になったカストルとポルックスの兄弟が,もう一つからはトロイア戦争の原因となった美女ヘレネが生まれたという。
【わし座】
前身が金色に輝く美少年ガニメーデスをさらうために,ゼウスが変身した鷲の姿がわし座になったという。ガニメーデスはイーダ山で羊の番をしているところをゼウスに見つかって連れてこられ,神々の宴会でお酌をする役目を務めることになった。
ゼウスのローマ名ユピテル(Jupiter)は,木星の英語名として用いられている。
木星の落ち着いたどっしりとした輝きが,神々の王ゼウスを思い起こさせるからだという。
インド・ヨーロッパ語族の家父長制を反映した神で,神々と人間の父として大家族集団の長という位置づけを持っていた。また,ゼウスの位置づけが各地に王国が分立したギリシアのミュケナイ時代に確率していったため,王と王権の保護者としても奉られた。その後,ギリシアで王政が廃止され,ゼウスは正義と立法によって市民生活を守る神となっていった。
ゼウスに対応するローマ神話の最高神ユピテル(ジュピター)は,ゼウスと同じくインド・ヨーロッパ語族の天空神で,気象現象を司る神から人間世界を治める神となり,やがてローマの命運を司る神として崇められるようになっていった。
気象の神としてのユピテルは,ルケティウス:Lucetius(光をもたらす者),プルウィアリス:Pluvialis(雨を降らせる者),トナンス:Tonans(雷をとどろかす者),フルグラトル:Fulgrator(稲妻を放つ者)などの名を持つ。
また,ローマ最後の王タルクイニウス・スペルブス(前6世紀後半)の時代にカピトリヌス丘に建てられた大神殿には,ユピテルが妃のユノ,娘のミネルウァ両女神と共に三位一体の形で祀られいた。毎年二人選出される執政官は,就任する際,この神殿で国歌に対する加護を祈ることになっていた。戦いの際も,将軍はここで犠牲を捧げて出陣し,勝利をおさめるとここで感謝の儀を捧げた。