オリオンの左肩に青く輝くこの星。ベラトリックス――女武者。狩人オリオンの母親は女人国アマゾンの女王だったというが,それでこのような名前がつけられたのだろうか。そんなことを思いつつ,その名と青い光に魅せられる。
ベラトリックスはB型星だ。B型のスペクトルを持つ星は全天でもそう多くはないと思うが,オリオン座においては,まず一等星リゲルがB型星。さらに,B型よりもっと高温のO型星が,“O型アソシエィション”なるものを形成している始末。まさに青い星の天下だ。青,青,青。その個性のなさ。加えてオリオン座の均整のとれた形。この星座の星たちって,ミーハーの集団じゃないかしら? 若い星ばかりだし,それも十分有り得るかもしれない。…なんてことを考えてみたりする。
一等星としてはそう明るい方でもないベテルギウスの赤い輝きが,この星座にあっては,自己主張の光に見えて魅力的に思えるのも,周囲を若いミーハー星がとり囲んでいるからに違いない。
客観的に見れば,ベラトリックスも間違いなくオリオン座ミーハー・アソシエィションの一員である筈なのだが,何故か特別視してしまう原因は,やはりアマゾンの勇敢な女戦士たちを思い描かせる,ベラトリックスという名前にあるのだろうか。