聖ヨハネ祭(St.John's Day)と Midsummer Day

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その子をヨハネと名付けなさい。
彼は主の御前に偉大な人となり,
既に母の胎にいるときから聖霊に満たされていて,
イスラエルの多くの子らを
その神である主のもとに立ち帰らせる。
(ルカ1:14-16『聖書』新共同訳/日本聖書協会)


 インカ帝国の末裔たるペルーの人々がインティライミ(太陽の祭り)を行う6月24日,キリスト教徒,特にカトリックの信徒たちの間では,バプテスマのヨハネ(St.John the Baptist's)の生誕を祝う聖ヨハネ祭が行われる。

 イエス・キリストの先駆者としてイエスの半年前に生まれ,イエスに洗礼を施したバプテスマのヨハネ(洗礼者ヨハネ)は,イエス・キリスト(12月25日)及び聖母マリア(9月8日)以外でカトリックが生誕を祝う唯一の人物だ。
 その誕生が大天使ガブリエルによって告げられたことからもわかるように,バプテスマのヨハネが聖霊により生まれ,生まれながらに原罪から自由であったことが理由とされている。

 聖ヨハネ祭の起源は古く,太陽神の冬至祭だった12月25日がクリスマスに定められると,自ずと夏至の祝祭が執り行われていた Midsummer Day 即ち6月24日にバプテスマのヨハネの誕生日が祝われることとなり,聖ヨハネ祭は夏のクリスマスとも呼ばれてきた。
 イエスの先に立った唯一人の聖人バプテスマのヨハネ。彼は聖人の中でも特別な存在であり,その誕生はキリストの前ぶれとして今日まで祝われ続けているのだ。季節の区切りでもあるこの日は,英国では,四季支払日の一つとしても名残を留めている。

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 ヨーロッパがキリスト教以前の太陽神の時代だった頃,人々は日増しに高くなる太陽が頂点に達すると,そこで耕地に恵みを与えて引き返すのだと信じていたが,聖ヨハネ祭は,この古い祀り事を色濃く伝える。
 夏至祭の日,人々は盛大な夏至の祝火を焚いて太陽に力を与え,悪霊を祓って耕地の繁栄を祈っていたが,この風習は南ドイツを中心に19世紀中頃までヨーロッパで広く行われていた。聖ヨハネ祭の前夜(Midsummer's Eve),山野,時には街の広場などで祝火が焚かれ,立ち上る煙で収穫を占ったり,火の周りを踊って健康を祈り,恋を占い,残り火を家に持ち帰ってかまどの火を新しくし,家の中へ幸運を呼び込んだ。

 なお聖ヨハネ祭の前夜には妖精や魔女,死霊や生霊などが現れ乱舞すると信じられていたが,シェークスピアの『真夏の夜の夢』もこのような伝説を背景としている。


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