サクサイワマンの太陽の祭り

サクサイワマン

 サクサイワマンの遺跡は,丘の上からインカ帝国の都,クスコを見下ろす。
 サクサイワマン(Saksaq Waman)とは,ケチュア語で「満腹のハヤブサ」の意だ。

ジグザグが繰り返される石組み(Saksaq Waman, 1994-11-04)
ジグザグが繰り返される石組み(Saksaq Waman, 1994-11-04)


 巨大な3層の石が22回のジグザグを繰り返しながら積み上がる要塞で,1日3万人によって80年かけて作られたという説もある。
 ピューマの形をしたクスコの街の頭の位置にあり,宗教的なものか軍事的なものか,用途はよくわかっていないという。

破壊された石組みを陽光が照らし始める(Saksaq Waman, 1994-11-04)
破壊された石組みを陽光が照らし始める(Saksaq Waman, 1994-11-04)

 ここが遺跡となったのは,1536年5月。
 2万の兵を連れてサクサイワマンに陣取ったマンコ・インカは,スペインの夜襲に破れ,城壁も円塔も大部分が破壊された。夜は戦わないというインカ兵の習慣が,スペイン側につけ込まれたのだった。

 インカ帝国が滅亡すると,やがてインカの神もカトリックにより駆逐されていった。

青空にそびえる石の壁(Saksaq Waman, 1994-11-04)
青空にそびえる石の壁(Saksaq Waman, 1994-11-04)

インティ・ライミ

 しかし,今でも6月24日の太陽の祭り(インティ・ライミ:Inti Raimi)の日だけは,インカの儀式と共に太陽神が復活する。

 インカ王の子孫は伝統的な衣装をまとってサクサイワマンに降り立ち,傍らの神官に,太陽の神への生け贄である2頭のリャマを屠るよう命じる。
 インカ帝国の子孫たちは,ペルー各地でこの日を祝って舞踏を行うのだ。

サクサイワマンからクスコの街を臨む(Saksaq Waman, 1994-11-04)
サクサイワマンからクスコの街を臨む(Saksaq Waman, 1994-11-04)

 インティ(Inti)は,ケチュア語で太陽の意。そして,インカ帝国の太陽神の名前でもある。
 太陽はインカの民の祖先,インカ帝国の皇帝は太陽の子,すなわちインティの現人神であるとされていた。

 インティ・ライミはインカ帝国の元日である冬至の儀式で,1412年に始まった。インカ皇帝によるインティ・ライミは1535年が最後。
 翌年インカ帝国は滅亡し,インティ・ライミの儀式もスペインとカトリック教会によって禁止された。

 1944年に再び儀式が催され,その後,毎年6月24日にアンデスの至る所で行われるようになっていった。


聖ヨハネの祝日とインティ・ライミ

 6月24日は,キリスト教の世界では聖ヨハネの日となる。

 聖ヨハネの日は,イエス・キリスト誕生の半年前に生まれ,イエスの先駆けとして活動した洗礼者ヨハネの聖名祝日で,夏のクリスマスとも呼ばれる大きな祝日である。

 アンデスの地域の多くで現在はカトリックが信仰されており,インティ・ライミは,今日ではだんだん聖ヨハネ祭とも結びついてきているということだ。


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