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ギリシア神話に登場する愛の神。
ローマ神話ではクピド:Cupido(英語ではキューピッド:Cupid)に相当する。
ヘシオドスの『神統記』によると,世界の始まりの時,カオス(混沌)に続きガイア(大地)・タルタロス(深淵)と共に生まれた最も美しい神。
アリストファネスの喜劇『鳥』によると,大地も大気も天空もない時代,夜の女神ニュクス(Nyx)がもたらした世界の卵から生まれ出た万物の創造者。
多くの神話の中では愛と美の女神アフロディーテと軍神アレスの子とされるが,産褥(さんじよく)の女神エイレイテュイア(Eileithyia)又は虹の女神イリスが母親であるという説や,西風の神ゼフュロス(Zephyros)が父親であるという説もある。
アフロディテとアレスの子であるエロスには,デイモス:Deimos(恐怖),フォボス:Phobos(驚愕),ハルモニア:Harmonia(調和),アンテロス:Anteros(報愛)という兄弟姉妹があった。
ある日,アフロディーテとエロスの母子はユーフラテス川のほとりを散歩していた。ところが,そこへ突然怪物テュフォンが現れ襲いかかってきたため,驚いた母子は魚の姿に変身して川へと逃げた。
後になって,女神アテナがこの出来事を記念して,リボンで結ばれた母子の姿を星座にしたのだという。
エロスの持つ恋の矢は,や座として星座になっている。
エロスの矢には,黄金の矢で射られるとどんな人間も神々も恋心を起こし,鉛の矢で射られるとどんな恋心もいっぺんに醒めてしまうという不思議な力があった。このためエロスは,この矢を使って散々いたずらをしオリュンポスの神々を悩ましたという。
小惑星(433)に,エロスという名がついている。
この小惑星は離心率が大きく地球へ近づく小惑星としてよく知られており,“小惑星は火星と木星の軌道の間に存在する”という常識を覆した。
ガイアやタルタロスと共に生まれたという説があるほど,本来エロスは古く偉大な力を持った神であった。しかし,エロスが単独で崇拝された場所で知られているのは,ボイオティア地方の都市テスピアイ(Thespiai)のみである。
それ以外,エロスは大抵アフロディーテに随伴する者として描かれ,時には複数で表現されてきた。紀元前570年頃に美術に登場するエロスは,羽があったり無かったりする青年の姿であったが,その後翼のある少年の姿で表されるのが普通になった。
ギリシア時代の末期,エロスに対して女性で蝶の羽をもつプシュケーが創造された。
エロスに対応するローマ神話の恋の神クピド(愛欲)は,ウェヌス(ビーナス)の子で,アモル(Amor:愛)とも呼ばれる。もともとのローマ神話の神ではなく,ギリシア神話のエロスにラテン語をあてて作られた神で,翼をつけて恋の矢を放っていたずらをする幼児として描かれた。
頭をして背中に羽のある裸のベビー人形キューピー(kewpie)は,エロスに相当するローマ神話の神クピドを象ったものである。
1912年女流画家のウィルソンがアメリカの家庭雑誌に描いたものが評判になり,翌年セルロイド人形として発売され世界に広まった。セルロイドの原料であるショウノウが日本の特産品であったことから,日本でも多くのキューピー人形が作られ欧米へ輸出された。