おとめ座 (Vir, Virgo)

最終更新:2001-07-06

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おとめ座
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和名

 α星スピカに,は,福井県三方郡でシンジュボシ(真珠星)という和名が見つかっている。

主な星

アラビア語の英語表記: アルファベット下のドットは"."で,母音の長音符は直後に"_"を付記し,代用
星名一般名意味派生和名光度スペクトル距離絶対等級
αスピカ
アシメク
Spica
Azimech
穂先
武器を持たない者
ラテン語
アラビア語
真珠星0.97(Var)B1*250
βザビジャー
アララフ
Zavijah
Alaraph
犬小屋・かど
二つの河
アラビア語
アラビア語

3.61F8*32
γポリマPorrima
Arich
予言と出産の女神の名

3.68
5
F0*
F0*
36+3.6/+3.6
δミネラウバMinelauvah


3.37M3*180
εビンデミアトリクスVindemiatrixぶどうを摘む女ラテン語
2.83G9*100+0.6
ζヘゼHeze


3.36A3*98+1.1
ηザニアーZaniah犬小屋・かどアラビア語
3.88A2*120
ιシルマSyrmaすそギリシャ語
4.08F7*75

光度: Yale Catalogue of Bright Stars, (3nd edition)
スペクトル: 
 * Yale Catalogue of Bright Stars, (3nd edition)
 ** Yale Catalogue of Bright Stars (4th edition, Hoffleit,D.and Jaschek,C.1982, Yale University Observatory)
 *** A List of MK Standard Stars (Garcia,B.1989, Bull.Inform.CDS,No.36)
距離および絶対等級: 『星座ガイドブック』誠文堂新光社,『星百科大事典 改定版』地人書館より抜粋。データが古いため参考までに。

【コメント】

 α星スピカ(Spica)は,ラテン語で穀物などの穂を意味するが,“Spic-”は“針”“とげとげしいもの”という意味を持ち,スパイクタイヤなどの“スパイク”と同じ語源である。
 別名アシメクは,“武器を持たないもの”という意のアラビア語,アル・シマク・アル・アザルが語源で,1515年版の『アルマゲスト』では,“アシメク・イネルミス”と記される。中世の本では,コプト語で“孤独なもの”を意味する,コリトスという名が見られ,バイエルは“アラーゼル”という名を記した。また,ペルシア名ツシェ,シリア名ツェベルタ,トルコ名サルキムが知られるが,これらは全て“麦の穂”と訳すことができる。

 β星サビジャー(Zavijah)は,サヴィヤヴァ(Zavijava)とも言い,“吠える犬の一隅”“犬小屋”という意味のアラビア語,アル・ザーウィアー(Al Za_wiah)が語源。古代バビロニアで,しし座のθ星を“犬の尾”と見ており,この星をその一部と見ていたことに関連すると考えられている。
 別名アララフ(Alaraph)は,しし座β付近に位置したアラビアの第10星宿アル・サルファ(Al S.arfah)が派生で,“二つの川”という意味。この星の出現が雨期と関連していたことに由来するらしい。

 γ星ポリマ(Porrima)は,ローマの神話に出てくるカルメンタという予言と出産の女神の別名。カルメンタにはアンテヴォルタ(Antevorta:前を向くもの)・ポストヴォルタ(Postvorta:後ろを振り返るもの)という二つの性質があり,ポリマはアンテヴォルタの別名の一つ。
 また,アラビアでは“吠える動物の区域”という意味の“ザウイアト・アル・アウワム”という名を持つ。ε・δ・γ・η・βを繋いで描く曲線を“吠える犬の隠れ家”とする伝説があり,その中央にあったγ星にこの名が付いたものと考えられている。美しい実視連星。
 上記表の光度はエール輝星カタログ3版からの引用であるが,SAO星表では2.9等,ヒッパルコスでは2.74等(Var)となっており,もう少し明るい値で紹介されていることが多い。

 δ星ミネラウバ(Minelauvah)は,“アル・アウワに属するもの”という意味のアラビア語,Min al Awwa_'が語源。アル・アウワ(Al Awwa_')とは,現在のおとめ座β・γ・δ・ε・ηに相当するアラビア第11宿のこと。β星の名とする資料もある。
 バビロンでは“ル・リム”と呼ばれ,“雄鹿”“カモシカ”という意味。ヒンドゥ名では“湖”を意味する“アパス”と呼ぶ。

 ε星ビンデミアトリクス(Vindemiatrix)は,日の出前にこの星(またはおとめ座)が見える頃ぶどう摘みが始まったためについた名前で,“Vin”は,ワイン(ぶどう酒)と同じ語源。古くは,おとめ座全体を指してヴァンデミアトル(Vindemiator,ぶどう摘み)と言ったが,13世紀以降女性形の現在の名前になった。

 η星ザニアー(Zaniah)は,β星と同じ語源で,アラビア語のアル・ザウィア(Al Za_wiah)からきている。

 ι星シルマ(Syrma)は,“痕跡”“ひきずる”という意味のギリシャ語をラテン文字化してできた名前。長く引く女神の衣のすそを表しており,プトレマイオスの時代からの古い名前と言われる。




変光星

GCVS (General Catalogue of Variable Stars) より
変光星名変光星型光度範囲周期スペクトル備考
αELL+BCEP0.95(0.10)4.014604B1III-1V-B2Vスピカ
RM6.1-12.1145.63M3.5IIIE-M8.5E
SM6.3-13.2375.10M6IIIE-M9.5E
UM7.4-13.5206.64M2E-M8E:
RSM7.0-14.6353.95M6IIIE-M8E
SSSRA6.0-9.6354.14C6.3E(NE)

【変光星型】 M:ミラ型, ELL:回転楕円変光星, BCEP:ケフェウスβ型変光星, SR:半規則的変光星

【スペクトル型の前後の記号】 接尾記号 E :スペクトルに輝線あり, 接尾記号 V :スペクトルが変化する


★ 神話については,星の停車場おとめ座 をご覧下さい。
★ おとめ座の探し方については,星座入門おとめ座 をご覧下さい。




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