ロンドン旅行記 ★ シティ・オブ・ウエストミンスター(13)

※当ページの転載・複製は,一切お断り致します。
(C) 2008 Yukiko Tsuchiyama, All rights reserved.
(Produced by Mira House.)

参考文献

13. チャーチル博物館と戦時内閣執務室 (Churchill Museum and Cabinet War Rooms, 2008-05-22)

 チャーチル博物館とキャビネット・ワー・ルームズ(戦時内閣執務室)。

 日本人観光客でここを訪れる人は少ないのかも知れない。とりあえず,『地球の歩き方ロンドン'08-'09』には何の紹介も書かれておらず,ここで自分たち以外の日本人を見掛けることもなかった。
 地図上で官庁ビルの一角にただ Cabinet War Rooms と記されるここは,第二次世界大戦で日本の敵として英国を導いたサー・ウィンストン・チャーチル(Sir Winston Churchill,1874-1965)の在りし日の姿を生き生きと伝える唯一のメモリアルである。
 ドイツ軍の空襲にも耐えられるよう,国会議事堂と首相官邸に近いこのビルの地下3mのところに設けられた内閣の作戦室,チャーチルやチャーチル夫人が寝泊まりした部屋などが当時のまま再現されており,チャーチル自身の生涯を紹介する博物館が併設されている。

 終戦翌日に閉鎖され放置されていたものをサッチャー時代に博物館として公開したということで,経緯も内容も非常に興味深い上,場所も訪れやすい。バッキンガム宮殿からウエストミンスター寺院へ行く途中,少しだけ回り道して寄ってみた。


 ホースガーズの門を出てホワイトホールを南下し,パーラメント・スクエアから西へ曲がってここまで来るのに,約20分。セント・ジェームズ・パーク前の Horse Guards Road に面した博物館の入り口は,屋根に土嚢が積まれており,如何にも戦時中の地下基地へ潜るのだという雰囲気が醸し出されている。
 どの程度どんな感じで見学できるのか情報がなくて分からなかったが,中へ入ると愛想の良い男性が受付をしていて,チャーチル・ミュージアムは撮影禁止だけど他の場所は撮って良いよ,チケット売り場は更にこの下にあるよ,と教えてくれた。チケットは大人一人£12.00(2500円)。どうやら,この入場料を支払わないと何も見られないらしい(^^;。
 ロンドンの物価は一々高くてめげてしまうが,せっかく来たのだ。意を決して?私たちは地下のチケット売り場へ向かった。

 階段を降りたところにあったチケット売り場は随分立派で,大きなカウンターの中に数名の女性職員が働いていた。チケットを購入するとサウンドガイドは使うかと聞かれたが,日本語が準備されていなかったので借りなかった。チケット代にはサウンドガイドも含まれているのに勿体ないが,あまりゆっくり見て回る時間もないし,仕方がない。
 しかし,地下鉄や観光バスなど日本語対応が行き届いたロンドンなのに,これだけ多言語のガイドを揃えながら日本語が無いのは興味深い。やはり日本人はあまり訪れないところなのだろう。日本語ガイドはないのにイスラエルの国旗が出ており,ヘブライ語はカバーされているようだ。これも第二次大戦関係の博物館ならではということか。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms -- Entrance and Ticket

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
Fujifilm FinePix S2 Pro
Cabinet War Roomsの前 /S2 Pro キャビネット・ワー・ルームズ入場チケット /FX33 キャビネット・ワー・ルームズのリーフレット(表) /FX33
キャビネット・ワー・ルームズのリーフレット(裏) /FX33 キャビネット・ルーム /D200 地下室への階段 /FX33

 最初にあったのが Cabinet Room,内閣の地下作戦室だ。チャーチルを中心に閣僚たちが集まり,ここで数々の重要な会議が行われた。
 一番奥に一つだけ形の違う木製の椅子があるが,これがチャーチルの席で,前に置かれた赤い箱は,チャーチルが常に持ち歩いていた機密書類の箱である。天井縦横に張り巡らされた赤い鋼鉄の梁が,爆撃を考慮した部屋であることを静かに物語っている。

 キャビネット・ルームを過ぎるとすぐに地下へ続く階段があった。今は使われておらず,ガラス張りになった窓から当時の階段を見下ろすことができる。この階段が,チャーチルや夫人が寝泊まりした「もう一つの首相官邸」へと続くのだろう。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms

Panasonic LUMIX DMC-FX33
当時の家具を置いた廊下 /FX33 チャーチル首相の部屋 /FX33 暗い廊下が続く /FX33
通信室 /FX33 戦時中のポスター /FX33 子供服の交換を呼びかけるポスター /FX33

戦時中のポスター /LUMIX FX33

 この後しばらく,天井に赤い鋼鉄の梁が通った暗い廊下が続き,当時の調度品などが置かれていた。かなりの暗さなので写真もうまく撮れない。こういう時に役立つのは,一眼よりコンパクトデジカメだったりするのが少々納得いかない(^^;。
 廊下の途中の事務室はドアから覗くことができるようになっていたが,後で反対側から見ることができるようだった。

 暗い廊下を過ぎると普通に蛍光灯で照らされた一角があり,ここには戦時中のポスターが展示されている。
 服は繕って着るようにとか,どんなボロ布だって使い道があるとか,子供の服と靴は交換して使い回そうとか,そういった内容で,なるほど,英国版「欲しがりません勝つまでは」というわけだ。英国も本土を爆撃され苦しい戦時を送ったのだから,同じ連合国でもアメリカとは随分と立場が違うのだろう。


 このポスター展示室の先が,写真撮影禁止の「チャーチル博物館」である。
 キャビネット・ワー・ルームズの付属にちょこっとあるだけの博物館かと思っていたが,実に充実した博物館で,どこから現れたのかと思うほど見学者も沢山いて,意外に混雑していることに驚いた。
 その気になれば丸一日つぶれそうなほどの展示物があったが,ここでそんなに時間を潰すわけにもいかない私たちは,勿体ないと思いつつも,サラッと,できるだけサラッと眺めて順路を進んだ。
 写真も撮れず展示物の記憶もきちんと残っていないが,よくよく分かったのは,日本の立場からすれば「憎きチャーチル」が,英国(連合国?)では非常に愛され尊敬されているらしいということだった。チャーチルの子供時代の写真や夫人と4人の子どもたちの紹介なども,ここに来なければ見る機会もなかったことだろう。


 サラッと順路を流しただけだったにも拘わらず,チャーチル博物館にかけた時間は約25分。
 博物館を出ると,キャビネット・ワー・ルームズの残りの部屋を次々に見て回った。最初は一部屋一部屋撮っていたが,似たような部屋があまりに沢山あって,だんだん区別がつかなくなって,写真を撮る気力も失せてきた。本当に,かなり大がかりな地下隠れ家だったのだ。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
事務室 /FX33 個室 /D200 同じ個室 /FX33
Commander Tommy Thompson /FX33 Prime Minister's Dining Room /FX33 Clementine Churchill /FX33

 ちょっと目を惹いたのは,首相のダイニングルームや,チャーチルのクレメンタイン夫人の個室。夫人の部屋は,女性らしくピンクのベッドカバーに薔薇の花のソファ,鏡台などが置いてあって,ひときわ華やかだ。

 大きな地図を掲げ,立派なテーブルと椅子が並ぶのは Chiefs of Staff Conference Room(参謀長会議室)で,当時のメンバーの紹介もあった。
 チャーチルのキッチンと書かれた部屋はダイニングから随分遠かった気がするが,様々な調理器具が所狭しと置かれており,まるでインテリア雑誌のカントリーキッチンのよう(^^;? キッチン雑貨大好きな私は思わず見入ってしまった。料理用ストーブがレトロでよい味出しているし,ホーローのティーポットや二段重ねのソースパンが可愛らしい。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
Chiefs of Staff Conference Room /FX33 Chiefs of Staff Conference Room /D200 Chiefs of Staff Conference Room /FX33
館内案内図 /FX33 The Churchill's Kitchen /FX33 The Churchill's Kitchen /FX33
The Churchill's Kitchen /FX33 Number 10 Annexe /FX33 事務室 /FX33

 さて,最初にガラス張りの窓から見た階段のところまで来た。
 階段自体は封鎖されていたが,「Number 10 Annexe」と書かれた白いパネルがあり,階段について説明していた。No.10というのは,もちろんホワイトホールにある「10 Downing Street」(ダウニング街10番地:首相官邸)のことである。
 「このパネルの右側のドアの後ろには,1階へ続く階段がある。これらは「Number 10 Annexe(10番地の別館」として知られ,1940年12月から1945年7月まで,チャーチルの戦時中の住居と司令部の役目を果たしていた。また彼の個人的なマップルームと,クレメンタイン夫人の寝室を含んでいた。階段はチャーチルがキャビネット・ワー・ルームズの中の隠れ家宿泊所へ行くときに使う通常の通路だった。」


 その先には小さな食堂が設けられており,珈琲を飲んだり軽食をとったりできるようになっていた。時刻は正午を過ぎており,さんざん歩き回ったためひどく空腹だったが,何だか地下で暗くて気が滅入りそうだったので,ここはちょっと覗いただけでパス。先を急いだ。
 この先のエリアには通信室やタイピングルームなど通常業務をこなすエリアが続き,各々の部屋には仕事をしている人形が置かれていて臨場感たっぷり。これらの部屋は24時間体勢で業務が行われていたそうだ。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms

Panasonic LUMIX DMC-FX33
食堂 /FX33 通信室 /FX33 電信室 /FX33
タイプルーム /FX33 書類 /FX33 事務室 /FX33
事務室 /FX33 Room 62 Advenced Headquarters of the GHQ,Home Forces /FX33 国境の地図 /FX33

 電話が並ぶのは,輸送船団の位置や戦況を示す地図が置かれたマップ・ルーム。鳴りっぱなしの電話に因んで「ビューティ・コーラス」と呼ばれていたそうだ。備品も全て戦時中のもので,まるでタイプスリップしたかのような光景だ。でも,当時はもっと大勢のスタッフがいたのだろうな??


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
マップ・ルーム /FX33 マップ・ルーム /D200 マップ・ルーム /FX33
マップ・ルーム /D200 マップ・ルーム /FX33 マップ・ルーム /D200

 そして,最後にやってきたのが The Prime Minister's Room(チャーチルの部屋)。「65A」というルームナンバーがついていた。既に60以上の部屋を見てきたのだろうか(^^;?
 首相の部屋にしては質素なのかもしれないが,今まで見てきた他の部屋に比べると明らかに立派な調度品が並んでいる。チャーチルは毎晩午前3時まで仕事をしていたそうだから,大変な体力と気力の持ち主だったのだろう。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Cabinet War Rooms

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
マップ・ルーム /FX33 Room 65A The Prime Minister's Room /FX33 Room 65A The Prime Minister's Room /FX33
売店の土産物 /FX33 売店の土産物 /FX33 売店の土産物 /FX33
トイレ /FX33 Cabinet War Roomsの前 /D200 Cabinet War Rooms前のHorse Guards Road /S2 Pro

 チャーチルの部屋を過ぎると,最後に売店とトイレがあって出口だった。
 売店にはチャーチル・グッズがいっぱい(^^;! チャーチルの置物やマグまである。まさかこれで紅茶を飲んだりはしないだろうが,日本人のセンスとは違うなぁと思う。
 ワー・ルームズで使われていたのと同じ物と賞してコーヒーや紅茶,ワインなどもあって,紅茶や珈琲,砂糖,小麦などの缶が可愛らしかったのでちょっと欲しかったが,家に持って帰れば並べる場所なんて無いのよね(^^;ということでパス。何しろ最初に寄った観光地なので,お土産物は買わずに見るだけにとどめた。
 お手洗いは,非常に美しいとは言えないが,まぁまとも。入館者は無料で利用できるのがありがたい。

 入館して丁度1時間後,私たちはキャビネット・ワー・ルームズとチャーチル博物館を後にした。
 改めて入り口付近を見回すと,入り口横の階段に銅像が立っている。インドの植民地化で頭角を現しカルカッタ総督にまで上りつめたイギリスの軍人・政治家のクライヴ・ロバート(Robert Clive 1725〜1774)の銅像である。暗い地下で1時間も過ごした私たちの目に,セント・ジェームズ・パークの緑が美しかった。

 さて,来た道を少し戻り,ウエストミンスター寺院へ向かおう。


次へ進む ウエストミンスターのパーラメント・スクエア界隈 Storey's Gate へ進む
次へ進む ウエストミンスター寺院 へ進む



外部リンク
 ・Welcome to the Imperial War Museum



ロンドン旅行記 index   シティ・オブ・ウエストミンスター index   Home