ロンドン旅行記 ★ シティ・オブ・ウエストミンスター(14)

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参考文献

14. ウエストミンスター寺院 (Westminster Abbey, 2008-05-22)

ウエストミンスター寺院 西正面の塔 /Nikon D200

 現在の英国王室の始まりであったノルマン朝ウイリアム1世(征服王,William I,1027?-87,在位1066-87)以降,エドワード5世(1488,即位せぬまま暗殺)及びエドワード8世(1936,結婚問題等で廃位)を除く全ての君主の戴冠式が行われ,歴代の王・女王が葬られるウエストミンスター寺院は,バッキンガム宮殿と共に,いくら英国に興味がなかろうとも名前を知らずに過ごすのが難しい場所の一つではないだろうか。
 建立当時のロンドンは東のシティが中心だったため,West Minster=西の寺と呼ばれるようになったのが名の由来である。

 始まりはウイリアム征服王が即位する前年で,960年に建立されたベネディクト派修道院の跡地に,信心深かったエドワード証聖王(Edward,the Confessor, 1003?-66,サクソン人イングランド王)が建てた修道院だった。しかしエドワード証聖王は完成後数週間で亡くなり,できたばかりの修道院に葬られる。
 その後エドワード証聖王の義弟ハロルド2世が王位を継いだものの,王位を主張してフランスからやってきたノルマンディー公ギョーム2世により撃ち取られてしまう。圧倒的な力でイングランドを征服したギョーム2世は,イングランド王ウィリアム1世としての戴冠式を,証聖王が建てたウエストミンスター寺院で行うことにより自らの正当性をアピールしたのである。


 さて,この寺院の建物だが,まずフランスでの生活経験があったエドワード証聖王が,ノルマン式を手本として建てている。
 それから200年の後,ヘンリー3世(在位1216-72)が,フランスから職人を招いて当時最新式のゴシック様式に改築した。現在の残る多くの彫像などはこの時に作られており,この改築はヘンリー3世の死後,1376年に終了した。
 その後はほとんど外観に手を入れられることもなく,唯一,現在のウエストミンスター寺院のシンボルになっている西正面はクリストファー・レンの弟子によって1745年に完成したということだ。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Westminster Abbey

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
Fujifilm FinePix S2 Pro
ウエストミンスター寺院 西正面 /D200 ウエストミンスター寺院 西正面 /S2 Pro ウエストミンスター寺院 西正面 /S2 Pro
西の塔横の露店 /FX33 西の塔横の露店 /FX33 露店で買ったジュース /FX33

 セント・ジェームズ・パークの横のキャビネット・ワー・ルームズを出て Storey's Gate から Broad Sanctuary へ出た私たちは,まずウエストミンスター寺院の西正面の塔の前へ到着した。そこは寺院の観光ルートの出口になっており,大勢の観光客で大賑わい。ユーロスターで簡単に行き来できるようになった昨今,大陸からの修学旅行なども増えているのだろう,フランス語を喋っている子供の団体が賑やかだった。

 時刻は午後12時40分。朝食にサンドイッチを食べただけで歩き通しだった私たちはかなり空腹だったのだが,ありがたいことに,西の塔のすぐ脇に露店を発見。その露天で何か買って,周囲の人々に倣って植え込みの柵に座って食べることにした。
 売っている物は意外に?美味しそうで,マフィンとレモネード,アップルジュースを購入。座って食べようとすると,あれ?瓶に王冠がついたままだ。再び露店に戻り,店員のお姉さんに蓋を開けたいのだがと尋ねると,彼女はもの凄く嬉しそうに「開けてあげる」と言い,数枚の紙を重ねて大がかりな準備をし,「じゃーん!」と言いながらいとも簡単に王冠を取ってくれた。既に開いていたらしい(^^;。「tah-dah」ではなく「じゃーん!」と言ってくれたのは,日本人へのサービス(^^;? ちょっと楽しかった。


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Westminster Abbey

Nikon D200
Fujifilm FinePix S2 Pro
露店とウエストミンスター寺院 /S2 Pro ウエストミンスター寺院 /D200 ウエストミンスター寺院 /D200
ウエストミンスター寺院とセント・マーガレット教会 /D200 ウエストミンスター寺院 /S2 Pro ウエストミンスター寺院とセント・マーガレット教会 /S2 Pro

 腹ごしらえを終え,美しい緑の芝生の中を通って,ウエストミンスター寺院の観光ルートの入り口になっている北口へ向かう。芝生には人々が座ったり寝転んだりして寛いでおり何だかとてものどかな感じだが,脇にはウエストミンスター寺院の塔がそびえ,正面には聖マーガレット教会(St.Margaret's Church),その更に向こうにはビッグベンが見えているのだ。すごい眺めである。

 ウエストミンスター寺院の入場料金は一人£10(約2100円)。中は撮影禁止だったので,以下は庭の写真しか残っていない。
 入場料金を払って中へ入ると数カ国語のパンフレットが並んでおり,日本語も準備されていた。だが日本語の案内だけではわかりにくいことが予想されたため,英語版ももらっておいた。何故って,「提灯」と書いてあるのに提灯のようなものが見あたらず,何のことか分からなかったのだ。英語版を見ると「lantern」で,なるほどと思った次第。


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Westminster Abbey

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
Fujifilm FinePix S2 Pro
ウエストミンスター寺院の入場券 /FX33 ウエストミンスター寺院リーフレット /FX33 Cloister Garth /S2 Pro
Little Cloister /S2 Pro Little Cloister /S2 Pro College Garden /D200

 中へ入ると,まず主祭壇の前の内陣で,幾重にも重なり高く延びる天井のアーチに圧倒される。何だろう,この光景は? この世のものとも思えない荘厳さだ。それだけでも十二分に長い聖歌隊席をぐるりと周り,主祭壇を取り巻く沢山のチャペルへ向かう。
 何というか,とにかく墓だらけ,棺だらけだ。正直言ってかなりいグロテスクで陰気くさく,そのくせもの凄く豪華である。ウエストミンスター寺院に葬られるくらいだから有名な偉い人ばかりなのだろうが,名前を見てわかる人は殆どいない。
 戴冠式に使う椅子(コロネイション・チェア)も見たし,エドワード証聖王,ヘンリ7世,エリザベス1世&メアリ1世,スコットランド女王メアリなど有名どころの王家の墓も見たが,それ以外に確認できたのは,とても立派でよく目につく場所にあったキャプテン・クックの墓と,ヘンデルとディケンズの墓碑銘くらい。有名人の墓を余すことなく把握したければ,ツアーにでも参加しない限り無理だろう。ウエストミンスター寺院の見学は,壮大なる墓めぐりである。

 墓めぐりを終えて回廊中庭(Cloister Garth)に辿り着いたのは,ウエストミンスター寺院に入って1時間後の14時前。ここに珈琲やサンドイッチなどの軽食,ちょっとした土産物の売店が設けられていたが,何と,それらもみんな墓碑銘の上。ゴミ箱も墓碑銘の上に置いてあって,「いいのだろうか?」という気分になった。おそらく西洋人の感覚では問題ないことなのだろうと思うと,感性の違いが新鮮である。
 その後,修道士たちの修行の場であるチャプター・ハウスや,宝物庫(Pyx Chamber),縁の品々が展示される Abbey Museum を見学した後,小さな回廊(Little Cloister)を通ってカレッジ・ガーデンへ向かい,この庭でひととき和んだ。カレッジ・ガーデンは毎週火水木だけ開園しており,運良くたまたま入ることができたのだった。


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Westminster Abbey

Fujifilm FinePix S2 Pro
Nikon D200
College Garden /S2 Pro College Garden /D200 College Garden /S2 Pro
College Garden /S2 Pro College Garden /D200 ウエストミンスター寺院 西出口 /D200
20世紀の殉教者の彫像が並ぶウエストミンスター寺院 西出口 /S2 Pro ウエストミンスター寺院 北口 /D200 ウエストミンスター寺院とセント・マーガレット教会 /S2 Pro

パーラメント・スクエアとビッグベン /S2 Pro

 カレッジ・ガーデンの見学を終えると,身廊(Nave)と無名戦士の墓を通って,西の塔の袂にある西出口から外へ出る。西出口の扉の上に並んでいる彫像は,20世紀の殉教者だそうだ。
 西の塔の前にある売店には写真集などが色々おいてあったが,まだ旅は始まったばかり,何もかも高額だし荷物も増やしたくなかったし,何も買わずに見ただけで出てきてしまった。多分,土産物を買う機会はこの先何度もあるだろう。

 西の塔の横から Broad Sanctuary へ出たのは,ウエストミンスター寺院を見学するためにこの道路を渡ってから丁度2時間後で,長い見学の余韻にくらくらしながら,私たちは見学前に歩いた芝生の道を道路から眺め,パーラメント・スクエアの横を通って正面に見えるウエストミンスター宮殿=国会議事堂&ビッグベンへ向かって歩き始めた。
 キャビネット・ワー・ルームズとウエストミンスター寺院の見学に随分と時間がかかってしまったが,予定通り,ビッグベンの横にあるウエストミンスター・ピアからグリニッジを目指すことにしたのだった。今ならまだ15時の船に間に合うだろう。


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外部リンク
 ・Westminster Abbey
 ・St. Margaret's, Westminster - Wikipedia



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