ロンドン旅行記 ★ シティ・オブ・ウエストミンスター(15)

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参考文献

15. ウエストミンスター宮殿 (the Palace of Westminster, 2008-05-22,23,25)

パーラメント・スクエアとビッグベン /Nikon D200

 現在は英国議会が議事堂として使用しているため国会議事堂と呼ばれているこの建物は,正式にはウエストミンスター宮殿で,エドワード証聖王(Edward,the Confessor, 1003?-66)がウエストミンスター寺院を建てていた際,その近くに住みたいと考えて1050〜1065年にかけて築いた宮殿である。
 ヘンリー8世(Henry VIII, 1491-1547, 在位1509-47)が住居をホワイトホール宮殿に移して以降は議会として使われることが多くなり,1834年の火災でウエストミンスター・ホールなどほんの一部を残して焼失した後,今の姿に再建された。

 現在のネオ・ゴシック様式のウエストミンスター宮殿は,コンペで選ばれたチャールズ・バリー(Sir Charles Barry,1795-1860)とオーガスタス・ピュージン(Augustus Pugin, 1812-1852)による設計で,1852年に完成したものだが,第二次大戦中ドイツ軍の爆撃で一部破壊され,1950年に元の設計に基づき再建されている。
 クロック・タワーのビッグ・ベンは非常に正確に時を刻むことで知られており,命名は,工事監督だったベンジャミン・ホール(Sir Benjamin Hall,1802-1867)の名にちなんでいるそうだ。15分ごとに小さな鐘が鳴り,毎正時には大きな鐘が鳴る。ロンドンで是非とも聞いておきたい音があるとしたら,これだろう。


ウエストミンスターから (2008-05-22)

 約2時間にわたるウエストミンスター寺院の見学を終え,ウエストミンスター寺院の西正面の塔の横から Broad Sanctuary へ出た私たちは,道路の正面に,パーラメント・スクエアと向かい合って立っているビッグベンを目指して歩き始めた。テムズ川を渡るウエストミンスター・ブリッジの袂にあるウエストミンスター・ピアからリバーボートに乗り,グリニッジに向かうためである。

 パーラメント・スクエアを通り過ぎてウエストミンスター宮殿前の横断歩道まで来ると,目の前に広がる宮殿の大きさは相当なものだ。10.5ミリ対角魚眼レンズを使ってようやく全景が入った。
 南端のヴィクトリア・タワーにはユニオンジャックがなびき,その手前にはオリバー・クロムウェル像が立っている。クロムウェル(Oliver Cromwell,1599-1658)が背にするウエストミンスター・ホールは彼がチャールズ1世(1600-1649,在位1625-49)に死刑を宣告した場所であり,また後にチャールズ2世(在位1660-85)によって彼の首がさらされた場所でもある。ここはやはり,今も昔も英国の大舞台なのだ。

 ウエストミンスター宮殿は一部のみ一般公開されているが,それも8月〜9月の短い期間だけ。私たちの今回の訪問では,ロンドンの象徴たるこの建物の周囲をぐるりと歩き,写真を撮るにとどまった。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

the Palace of Westminster from Westminster

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200
Fujifilm FinePix S2 Pro
St.Margaret's Streetを渡る /FX33 Parliament Square 前から /S2 Pro Parliament Square 前からクロムウェル像とヴィクトリア・タワー /D200
Bridge Streetをテムズ川へ向かって歩く /S2 Pro Bridge Streetからビッグベンを見上げる /D200 Bridge Streetから見たウエストミンスター宮殿 /D200
Bridge Streetをテムズ川へ向かって歩く /S2 Pro Wearminster Bridge の袂からビッグベンを見上げる /D200 テムズ川リバーボートの上から /D200

 ウエストミンスター宮殿の正面を通り過ぎ,ウエストミンスター・ブリッジへ続く Bridge Street を橋に向かって歩き始めると,ビッグベンの高さがいよいよ際立ってくる。少し塔から離れないと,時計を読むこともできないくらいだ。

 私たちはビッグベンの隣にあるウエストミンスター・ピアから船に乗り,ウエストミンスター宮殿を後にした。船の上から遠ざかるビッグベンと国会議事堂を小さくなるまで眺めていたが,宮殿の前にかかる橋の上を通っていく赤い2階建てバスと共に,これほどロンドンにいることを感じさせてくれる光景は無いように思われた。
 橋のたもとでビッグベンを見上げ,英国の行く末を見守る古代ケルト女王ボーディシアの銅像が,テムズ川の上から眺めると,とても印象的だったことも付け加えておこう。


次へ進む ウエストミンスター・ブリッジ ウエストミンスター (2008-05-22) へ進む


サウス・バンクから (2008-05-23)

 ロンドン観光の2日目,ハードな観光スケジュールの最後に再びウエストミンスター宮殿へ戻ってきた。
 今回は,チャリング・クロスからゴールデン・ジュビリー・ブリッジ(一般にはハンガーフォード・ブリッジ,Hangerford Bridge)を通ってサウス・バンクへ渡り,B.A.ロンドンアイやダリ・ユニバース,ロンドン水族館の前を通り,ウエストミンスター・ブリッジの下をくぐって国会議事堂の対岸へというコースである。この位置から,川向こうのウエストミンスター宮殿を撮っておきたかったのだ。


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the Palace of Westminster from the opposite bank

Nikon D200
Fujifilm FinePix S2 Pro
ロンドン水族館前から /D200 対岸から /D200 対岸から /S2 Pro
対岸から /D200 対岸から /D200 対岸から /S2 Pro
対岸から /D200 対岸から /D200 対岸から /S2 Pro

ウエストミンスター・ブリッジから /Nikon D200

 時刻は既に19時近く。長いロンドンの初夏の日もかなり傾いており,完全な逆光のもと,宮殿は肉眼でさえシルエットとなって見えている。この時間になるとヴィクトリア・タワーのユニオンジャックも仕舞い込まれていて少し寂しい感じだ。

 ウエストミンスター宮殿の設計者チャールズ・バリーは徹底したシンメトリーに作ろうとしたそうだが,もう一人の設計者オーガスタス・ピュージンは非対称で力強さを表現すべく,北端のクロックタワーより南端のヴィクトリア・タワーを大きく設計したという。ヴィクトリア・タワーは高さでも時計塔を2m勝っているそうだが,真正面へやってきても,高さの違いは分かるような分からないような?
 揺らめく川面のシルエットと通り過ぎる船の風景が,ただひたすら静かな夕暮れ時の撮影だった。

 撮影後,私たちはウエストミンスター・ブリッジを渡ってビッグベンの前あたりにある地下鉄ウエストミンスター駅を目指した。ウエストミンスター・ブリッジは,ちょうど国会議事堂側の欄干が工事中で板が張り巡らされており,橋からの景色が全く見えなかったことが残念だった。

次へ進む ウエストミンスター駅 平日の夕刻(2008-05-23) へ進む


夜景 (2008-05-25)

 観光最終日の夜,私たちは,みたびウエストミンスター宮殿へ戻ってきた。ウォータールーのロイヤル・フェスティバル・ホールでロンドンフィルのコンサートを聴いた帰り道のことである。

 コンサートの余韻に浸りながらホールを出たのは21時45分。そのままテムズ川河畔へ出ると,初めて見るロンドンの夜景が広がっていた。北緯51度に位置するロンドンではこの時期日暮れが遅いので,ロンドンの暗い空を見る機会はこの時まで無かったのだった。

 青くライトアップされたロンドンアイ,そしてテムズ川の向こうに見える国会議事堂。典型的ロンドンという感じの夜景である。ライトアップされたウエストミンスター宮殿は,どうしても見て帰りたい風景の一つだった。最後の最後になってようやく機会が巡ってきたことに感動しつつ,テムズ川沿いを歩きながらこの4日間親しんだ風景にゆっくりと別れを告げた。
 夜も遅いというのに,河畔もウエストミンスター・ブリッジも意外に人通りが多い。本当は2日前に写真を撮った対岸でテムズ川に映るライトアップされた国会議事堂を撮りたかったが,夜になるとそのあたりは治安が悪いとのことで諦めた。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Night scene

Panasonic LUMIX DMC-FX33
ロンドンアイとビッグベン /FX33 ダリ・ユニバース前から /FX33 ダリ・ユニバース前から /FX33
ウエストミンスター・ブリッジから /FX33 ウエストミンスター・ブリッジから /FX33 ウエストミンスター駅出口から /FX33

 ロンドンよ,さようなら。
 目に入る全ての景色を脳裏に焼き付けビッグベンの前のウエストミンスター駅の入り口まで来た瞬間,丁度22時になってビッグベンの鐘が鳴り始めた。まるで図ったかのようなタイミング。ビッグベンからの餞別のようだった。
 その場に立ち尽くし,私たちは鐘が10回鳴り終わるまで時計塔を見上げ続けた。時計の針が10時を指したビッグベンに向かってシャッターを切りながら,この音を忘れないようにと耳を澄ませた。そして,10回目を聞き遂げると,ロンドンでの時間の全てを終えたのだという気分になって,地下鉄ウエストミンスター駅の階段を降りたのだった。

 ホテルに戻って,鐘を鳴らすビッグベンの写真を撮る代わりに動画を撮れば,音を持ち帰ることができたのだったと気がついた。動画を撮る習慣が身についていなかったための失敗だった。

次へ進む ウエストミンスター駅 平日の夕刻(2008-05-23) へ進む



外部リンク
 ・Palace of Westminster(ウエストミンスター宮殿公式サイト)
 ・Charles Barry - Wikipedia, the free encyclopedia
 ・Augustus Welby Northmore Pugin - Wikipedia, the free encyclopedia



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