ロンドン旅行記 ★ グリニッジ(1)

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参考文献

1. グリニッジの街 (Greenwich, 2008-05-22)

 東経0度と西経0度の子午線が通るグリニッジ。その名の由来は“緑の村”を意味する Green Wick である。
 グリニッジはロンドン中心部から見ると南東のテムズ川下流に位置する王室ゆかりの街で,1997年に Maritime Greenwich としてユネスコ世界文化遺産に登録されている。

 王室との繋がりは1428年にヘンリー5世(1413-22)の弟にあたるグロスター公ハンフリーが荘園館を設けたのが始まりで,その後ヘンリー6世(1422-61)によりテムズ川岸からグリニッジ天文台がある丘陵地までの一帯が切り開かれて公園となり,ヘンリー7世(1485-1509)が宮殿を整えた。
 ヘンリー7世に始まるテューダー朝は,グリニッジが王宮生活の舞台となった時代である。

 宗教改革で有名なヘンリー8世(1509-47),その息子エドワード6世(1547-53),その娘メアリ1世(1553-58)とエリザベス1世(1558-1603)は,みんなグリニッジで生まれ育ったのだ。

 スチュアート朝のジェイムズ1世(1603-25)の時代が始まると王宮の舞台はロンドンのホワイトホールへ移るが,ジェイムズ1世は,ホワイトホール宮殿の設計者イニゴー・ジョーンズ(1573-1652)に依頼し,グリニッジに王妃アン・オブ・デンマークのための別荘を建てた。これは今でもクィーンズ・ハウスとして国立海洋博物館の隣に残っている。

 その後,ジェイムズ1世とアン・オブ・デンマークの息子,チャールズ1世(1625-49)の治世になるとピューリタン革命の影響でグリニッジは一旦荒廃するものの,王政復古を遂げたチャールズ2世(1660-85)は,グリニッジを今の形へと作り替えた。
 即ち,イニゴー・ジョーンズの弟子ジョン・ウェップに宮殿の建て替えを依頼し,建築家として数学者として天文学者として名高いクリストファー・レン(1632-1723)に依頼し王立天文台を建てたのだ。


キング・ウィリアム・ウォーク (King William Walk)

 グリニッジ・ピアでリバーボートを降りたのは15時50分。
 目指す王立天文台の開館時間は17時まで,入館は16時30分までである。時間がない私たちは,ピアからグリニッジ・パークへまっすぐ南下する King William Walk をずんずん歩いて先を急いだ。

 歩き始めるとすぐ左手に Tourist Information の看板が見え,その後ろが旧王立海軍大学になっている。
 実は,こここそヘンリー8世やメアリ1世,エリザベス1世らが暮らした宮殿があった場所である。宮殿再建を依頼したチャールズ2世の逝去により設計変更となり,クリストファー・レンが海軍病院に仕上げ,今日に至っているのだ。
 緑の芝生の庭には古い大砲が設置されているが,これは約200年前に作られたものらしい。

 King William Walk を挟んで海軍大学の向かいあたりにカティ・サーク号があるのだが,2007年5月の火災で半焼し修復中。見ることはできなかった。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

King William Walk

Panasonic LUMIX DMC-FX33
Fujifilm FinePix S2 Pro
Tourist Information at King Willium Walk FX33 Royal Naval College /S2 Pro Nelson Rd. and Romney Rd. /Lumix FX33
Nelson Rd. and Romney Rd. /S2 Pro
Park Bar & Grill /FX33

 高い建物もなく,観光客が多く,道路は明るく開放的な雰囲気だ。
 キング・ウィリアム・ウォークを10分程歩くと,王立天文台へ続く広大なグリニッジ・パークの入り口へ着いた。


キング・ウィリアム・ウォークのパブ キングス・アームス(King's Arms)

 17時ぎりぎりまで王立天文台の中でねばり,公園の外へ出てきたのは17時6分頃。帰りは下り坂で歩く速度も速くなる。

 朝はホテルの部屋でコンビニのサンドイッチとジュース,昼はウエストミンスター寺院の出店でマフィン1個とジュース,一日中歩き通しだというのにたったこれだけしか食べていない私たちは,さすがに空腹で疲れ切っていた。
 幸いにして,キング・ウィリアム・ウォークには観光客目当ての飲食店がずらりと並んでいる。今日の観光の予定は終わったし,ここでゆっくり座って腹ごしらえなどして行くのがよいだろう。

 目指すはフィッシュ&チップスとビール。食べ物が美味しくないイギリスで日本人を確実に満足させてくれるものがあるとすれば,これだろう。しかし,何もかも物価が高いイギリスなので,店に入るのも勇気が要る。
 私たちは,キング・ウィリアム・ウォークに面したキングス・アームス(King's Arms)というパブに入ることにした。


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Inside of King's Arms

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inside of King's Arms /FX33 Guinness & Foster's /FX33 Guinness & Foster's /FX33
inside of King's Arms /S2 Pro Fish and Chips /FX33 inside of King's Arms /D200
inside of King's Arms /D200 inside of King's Arms /D200 inside of King's Arms /FX33

 店の中は焦茶色の落ち着いた雰囲気で,テーブルに着くと,カウンターへ出向いて注文と支払いを済ませるという仕組み。支払いはカードもOKのようだったが基本的に現金払いらしく,カード清算には時間がかかるようだった。

 支払いを済ませると,ビールは自分で席へ持ち帰る。フィッシュ&チップスは出来上がり次第店の人が運んできてくれるという。
 まず飲んだのは,ハーフ・パイント(236.6mL)のギネスとフォスター。フォスターは冷えていて味も日本のビールと似ていて違和感がないが,ギネスは冷えていない。英国ではあまり冷やさないで飲むのだ。ギネスは日本でもお馴染みのアイルランドのギネス,フォスターはオーストラリアのビールである。

 ビールで疲れを癒していると,そのうちケチャップとビネガーが運ばれてきた。フィッシュ&チップスにかけるための調味料だ。ケチャップはハインツだが,ビネガーは見たことのない瓶。実はこのビネガーがとても美味しくて,脂っこい筈のフィッシュ&チップスも爽やかに食べられた。
 空腹といえど小食な私たちは,フィッシュ&チップスを一人一皿食べる自信はなく,一皿を二人で分け合って食べたが,それで正解(^^;。店の人も心得ているのか一皿しか注文しないのに,ナイフとフォークは二人分持ってきてくれた。

 途中でビールが無くなったので,今度はフォスターと1664をハーフ・パイント注文。1664はフランスのビールで少々癖のあるビールだった。これらのビールは皆イギリスでメジャーな銘柄らしく,コンビニでも缶で売っていた。


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Outside of King's Arms

Fujifilm FinePix S2 Pro
Nikon D200
Outside of King's Arms /D200 Outside of King's Arms /D200 Outside of King's Arms /D200
Outside of King's Arms /S2 Pro Sign of King's Arms /D200

 疲れていたこともあり,キングス・アームスには1時間の長居をしてしまった。店を出たのは18時18分。幸いにして高緯度のイギリスの日は長く,まだまだ明るい。
 初めて入った英国パブ,キングス・アームスの外観を心ゆくまで撮って,帰途についた。


グリニッジ・ハイ・ロード(Greenwich High Road)

 キングス・アームスを出ると,私たちは鉄道(National Rail)グリニッジ駅を目指した。鉄道ならば,チャリング・クロスまで20分で行ける筈だった。
 Nelson Road との交差点で左折すると,正面にセント・アルフィージ教会が見えてくる。グリニッジでは赤い観光バスもよく見掛け,バスをうまく乗りこなすことができるのなら,もっと行きたい場所へピンポイントで行けるのだろう。

 アルフィージ教会の前は,Nelson Road と Greenwich Church Street の三叉路になっている。その交差点中央の分離帯で北方向の写真を1枚撮って,南へ下った。
 北へ行けば地下鉄ドッグランズ・ライトレイルウェイ(DLR)のカティ・サーク駅があり,南へ行って道なりに進むと国鉄とDLRの乗換駅であるグリニッジ駅があるのだ。

 セント・アルフィージ教会を通り過ぎると,Greenwich Church Street は Greenwich High Road と名前を変え,南西方向に続いていく。
 通りには小さな店や飲食店が続き,それらは色合いもデザインも明らかに日本の風景とは違っている。しかし,車が左側通行であるためかもしれないが,他の欧州の国々やアメリカと違って,ロンドン周辺の歩道は歩いていて非常に違和感が少なく,安心できる気がした。大陸ヨーロッパの国々の甃とは違って,車道も歩道も日本のようなアスファルトだったせいかもしれない。


※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。

Greenwich High Road

Panasonic LUMIX DMC-FX33
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Nikon D200
St.Alfege Church & London bus at Nelson Rd. /FX33 St.Alfege Church /D200 鳥かごを持って歩く女性 /D200
three-forked road in front of St.Alfege Church  /S2 Pro Rivingon Grull Bar /FX33 子供と猫 /D200
pedestrian way at Greenwich High Rd.  /D200 Greenwich High Road /D200 Greenwich High Road /FX33
pedestrian way /D200 Greenwich Station /FX33 Inside of DLR from Greenwich to Bank /FX33

グリニッジ駅とカティ・サーク駅

 朝から歩き通しで足が痛くてたまらなかったので,グリニッジ駅に辿り着いたときは非常に嬉しかった。
 しかし,昨日からオイスター・カードで気楽に使っている地下鉄とは何か勝手が違っているようだ。テムズ川リバーボートに乗ったときにはオイスター・カードで割引があったが,国鉄にはそういう表示も見あたらない。DLRと国鉄の区別もよくわからない。

 どうしたらいいものか?
 私たちが駅の路線図や料金システムの看板を見てあれこれ話をしていると,背の高い白人男性が話しかけてきた。服装から一見してそうだろうと思ったが,やはりアメリカ人観光客だそうで,「ここからオイスター・カードを使ってロンドンへ戻れるよ」と如何にも簡単そうに言う。路線図の色分けが見にくかったため,彼は国鉄でオイスター・カードが使えると間違っていたらしい。
 路線図を指差し,「ほら色が違うでしょ」と説明すると,彼はいきなり納得し,それじゃ自分が来るときに乗ってきた地下鉄の駅なら確実なのでそこから乗ろうと提案してきた。
 別に鉄道でもよかったしこの駅からDLRも出ているわけだが,まぁいいか。
 せっかくなので一緒にロンドンまで帰ることにし,私たちは三人でグリニッジ駅をあとにした。今来た道を戻ってドッグランズ・ライト・レイルウェイのカティ・サーク駅へ移動する。足が痛いので少々辛かった(^^;。


 このアメリカ人男性はリタイアしたばかりで身軽に一人旅を楽しんでいるといった感じの人で,日本の某大型スーパーの店舗設計のために1986年頃日本に数ヶ月滞在したとかで,どうやら私たちが日本人だったので,話がしたくて話しかけてきたようだった。
 姫路城に二回行ったとか,新幹線であちこちの日本庭園を見て回ったとか,「おはようございます」なら覚えているとか話してくれた。あと,「UKの地下鉄は時間に正確ですばらしい」そうで,アメリカのはどうなのかと聞いたら「だいたい正確」と少々苦しそうだった(^^;。

 カティ・サーク駅からオイスター・カードを使ってバンク(Bank)行きのDLRに乗り,行きに船から見た高層ビル群を今度は地上から眺め,やがて列車は地下へ潜った。
 帰宅時間帯でありビジネス街を通る電車でもあるためか,電車は意外に混雑しており,立ったままそのアメリカ人男性とポツポツ喋ったのだったが,私の英会話技術が悪いことは勿論,観光初日で英語に慣れていなかったこともあって,言葉が出て来ずもどかしかった。サウスケンジントンに宿泊しているそうで,便利に使っているというロンドンの地図を見せてくれたり,ヴィクトリア&アルバート博物館が素晴らしいよ,などと話してくれたが,名前を聞くこともなく,終着の Bank駅で「Have a nice trip ! 」と言って別れたのだった。


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外部リンク
 ・River | Transport for London (ロンドンの交通/船)
 ・Greenwich Council - Home - Home (グリニッジ)
 ・ORNC, Royal, Naval, College, Greenwich (王立海軍大学)
 ・King's Arms, 16 King William Walk, Greenwich SE10 9JH (パブ)
 ・ST ALFEGE CHURCH, at the heart of Maritime Greenwich (セント・アルフィージ教会)
 ・DLR | Transport for London (ロンドンの交通/ドッグランズ・ライト・レイルウェイ)
 ・National Rail Enquiries - Official source for rail information, UK train times and timetables (国鉄)


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