※当ページの転載・複製は,一切お断り致します。
(C) 2008-2009 Yukiko Tsuchiyama, All rights reserved. (Produced by Mira House.)
★参考文献
|
セント・ポール大聖堂は,王室中心のウエストミンスター寺院に対し,ロンドン市民の身近な教会として親しまれる英国国教会の教会である。ネルソン提督,ウエリントン公爵,ナイチンゲールら国民的英雄がここに眠っている。
イギリスの著名人に詳しくなくとも,チャールズ皇太子と故ダイアナ元妃が結婚式を挙げた教会と言えば,何となくこの教会の重要さが理解できるのではないだろうか。
セント・ポール大聖堂の歴史はとても古く,最初の教会が建てられたのは西暦604年。現在の大聖堂は,木造だった古いゴシック様式のセント・ポール大聖堂が1666年のロンドン大火災で焼け落ちた後,クリストファー・レン(Christopher Wren, 1632-1723)によって再建された5番目の大聖堂になる。
レンはグリニッジ王立天文台ほか多くの建造物を残した天才だったが,彼が存命中に完成を見たのは唯一このセント・ポール大聖堂だけだったとか。ロンドン大火災の時のレンは34歳,1708年にセント・ポール大聖堂のドームが完成したときは76歳になっており,息子と共に,最後の石がドーム頂上に置かれるところを宙づりバスケットから見守ったそうだ。
91歳の長寿を全うしたレンは,自らが設計したセント・ポール大聖堂の地下に眠り,その質素な墓碑には「彼の記念碑を探すなら周りを見よ」という意味の文字がラテン語で記されている。この大聖堂こそレンが生きた記念碑というのだ。
そういうエピソードが頭の中にあったため,セント・ポール大聖堂の見学は,私にとってクリストファー・レンの記念碑を訪れることに等しかった。まぁ,おおよそ欧州の教会とはイコール墓なのであるが。
地下鉄セントラル線をセント・ポール駅で下りると,駅のすぐ南側にセント・ポール大聖堂のドームが見え,道路を一筋渡ると大聖堂の裏庭に到着する。
しかし,あれ? 工事中のようだ。緑の木々に囲まれた建物は足場に覆われていた。2008年はセント・ポール大聖堂建立300周年の年で,記念祭に向けてメンテナンス改装中だったのだ。
しかしながら,教会の周囲にはセント・ジェームズ・パークやキュー・ガーデンズに置いてあったのと同じデザインのベンチが置かれ,公園のような美しい雰囲気である。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200 Fujifilm FinePix S2 Pro | ||
裏庭を一通り見学すると,他の観光客たちに従って建物の南側へ出る。
そこは,ちょっとした庭になっており,季節柄,色とりどりのバラが咲き乱れていた。バラの向こうに見える大聖堂の美しさは格別で,五月に英国を訪れた甲斐があったと思わせられた。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200 Fujifilm FinePix S2 Pro | ||
バラ園を抜けて大聖堂の南側に出ると,入り口のある西側へ向かう。
少しずつ前方に現れたファサードは,さすがに非常に堂々としたものだった。
石段の上にそびえ立つこの建物は,全長157m,幅76m,高さ111m,ドーム直径34m。コリント式列柱は下段に12本,上段に8本並んでいる。そして正面の三角屋根のてっぺんに,右手に剣を持つ聖パウロ像が立っている。三方に文字盤がついた南西の時計塔には「ビッグ・トム」という愛称がついており,中の大鐘「グレート・トム」は1716年製だ。
真ん中の大きな扉は特別な行事の時だけ開かれるとのことで,観光客は横の小さな扉から中へ入る。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200 Fujifilm FinePix S2 Pro | ||
2008年5月の入場料は,大人一人£10(約2,100円)。クレジット・カードでの支払いもOK。 また,日本語のパンフレットも準備されていた。 |
入場券を買って中へ入ると,その先は撮影禁止。
ウエストミンスター寺院に比べると,中はかなり明るい雰囲気で,人気もあるのか人も多め。勿論すごく豪華だ。
1階部分を一通り見学して地下室へ下りると工事中。ネルソン提督の墓は見られたが,レンとウエリントン将軍の墓は見られない。残念だが諦めて上ろうとすると,警備の人に,レンの墓の場所は12 o'clockに開くと教えられた。時刻は11時半を過ぎたところ。それならということで,先に棟へ上ってみることにした。
まずは階段を163段上り,ドームの基部を囲むように作られた「ささやきの回廊」を目指す。30mの高さから礼拝堂のフロアを見下ろせるこの回廊は,壁に向かって囁いた声が32m離れたドームの反対側で聞こえることからこう呼ばれているそうだ。
163段でかなり疲れ,とてもそんな囁きを確かめる気分にもなれない状態だったが,ここまで来たらということで,回廊を一周したあと更に上を目指して上っていった。
フロアから282段,「ささやきの回廊」から119段。
次なるターゲットは「石の回廊」だ。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral (石の回廊) Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200 Fujifilm FinePix S2 Pro | ||
フロアから53mの高さにある石の回廊は,外から見るとドームの一番下の部分にあたる。 |
「石の回廊」から眺める風景は既にかなり壮観なのだが,まだこの先がある。ゆっくり休んでいると上っていく気力が失せそうだったので,少しだけ息を整え,私たちは目のまわるような狭い螺旋階段を上り始めた。
次なる「金の回廊」は,「石の回廊」から152段。
目眩がしそうな辛さだったが,ひたすら上る。途中の狭い踊り場で白人のカップルがへたばっており,前を通り過ぎようとする私たちに「Very young!」と声をかけてきた。「いや,間違いなく君たちの方が若いって(^^;!」と思いつつ引きつった笑顔を返す。
やがて,少し広めの踊り場が現れ,職員が一人椅子に座っていた。床には下の祭壇が見られるような窓が開いている。息も絶え絶えでさすがに少し休もうと思い,職員に「How many steps?」と尋ねると「eleven」との答。
突如として元気を取り戻した私たちは,残り11段を上り,フロアから85mの高さにある「金の回廊」へ出た。
これは凄い!
今まで訪れた場所,これから訪れる場所が一望できる素晴らしい風景に,疲れは一気に吹き飛んでしまった!
|
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral (金の回廊) Nikon D200
| ||
テムズ川の対岸にテート・モダンがよく見え,ミレニアム・ブリッジが古いロンドンの代表セント・ポール大聖堂と新しいロンドンの代表テート・モダンを繋いでいる様子がよくわかる。
真北にはバービカンが見えており,その手前にはロンドン博物館あたりのビルが見えている。
|
北側を見下ろしたところにあるのは,大聖堂の横のカフェや,すぐ横にあるパタノスター・スクエア(Paternoster Square)。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
from St.Paul's Cathedral (金の回廊) Panasonic LUMIX DMC-FX33
| ||
スイス・リ・本社ビル(ガーキン)など最近のシティ・オブ・ロンドンを代表する建築群の方角には多くのクレーンが立っていて,ロンドンが建設ラッシュに湧いているのを感じさせられた。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
from St.Paul's Cathedral (金の回廊) Fuji FinePix S2 Pro
| ||
金の回廊はとても狭く,人と擦れちがうのがやっと。
苦労して上ったものの,長々といても仕方がないし,一周して写真を撮って回ると,下り専用の出口から階段を下り,地下にあるクリストファー・レンの墓へ向かった。
なるほど,地味な墓石に読めない文字が刻んである。
レンの墓に向かって「グリニッジ天文台もセント・ポール大聖堂もすごかったよ,でもセント・ポールの階段はもう少し上りやすくして欲しかった」などと勝手な文句を言い,地下の他の部分を見て回った。
地下で結婚式をするカップルがあったようで,準備がなされていたり,何か祝福してもらうために訪れている人がいたり,観光客が大勢いても,セント・ポール大聖堂では宗教施設としての当然の活動が普通に営まれていた。
地下の祭壇の前の椅子にしばらく座って休んだあと,土産物をみるため,やはり地下にあるカテドラル・ショップへ向かった。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200 Fujifilm FinePix S2 Pro | ||
土産物など特に必要なわけでもないのだが,連日の徒歩観光で疲れ切った脚を酷使して金の回廊まで上ったセント・ポール大聖堂なので,「是非とも何か一つは記念品を買って帰らねば!」という気分になっていた私たちは,マグネットを一つ選ぶことにした。
結局マグネットと,「My Guardian Angel」という安っぽいけどちょっと可愛いアクセサリーをお買い上げ。レジの男性が日本語で「ありがとう」と言ってくれたことに気をよくしてカフェへ向かった。
カフェ・レストランは,キューガーデンズと同じく,買った物を勝手に椅子に座って食べる形式。サンドイッチとニンジンのサラダ,ホームメイド・ティーを選んだのだが,ここは見事に語り草の食事になったのだった。
一体全体どうすればニンジンをこんなに美味しくない物体に変質させることができるのだろう!? 全くもって謎としか言いようのない不味さだった。食べ物なら何でも美味しく食べられる筈の私が,一口ごとに吐き気をおぼえるほどの凄さ。噂に聞く「ロンドンの食事は不味い」というのは,嘘ではなかったのだ!
おまけにホームメイド・ティーの甘いこと!! 甘さ以外に何の味もしないくらいだ。これじゃ美味しい紅茶も台無しにならないか?
ただ野菜不足解消のためだけに,ひたすら頑張って人参を胃袋に流し込んだ食事だった。全部で£8(約1,600円)もしたというのに!
英国らしい美味しくない食事を体験させてもらってありがとう,セント・ポール大聖堂よ。
※写真をクリックすると解像度の高い写真の全体像が見られます。一部のサムネイルは切り取ってあります。
St.Paul's Cathedral Panasonic LUMIX DMC-FX33
Nikon D200 Fujifilm FinePix S2 Pro | ||
食後,まだ見ていなかった前の祭壇(from Britain to American)あたりを見学し,外へ出た。
外は相変わらず観光客と鳩がいっぱい。よく晴れた青空から明るい日差しが降り注いでいた。
外部リンク
・シティ・オブ・ロンドン - Wikipedia
・セント・ポール大聖堂 - Wikipedia
・Welcome to St Paul's Cathedral, London (セント・ポール大聖堂オフィシャルサイト)
・クリストファー・レン - Wikipedia
・タワー42 - Wikipedia
・バービカン・センター - Wikipedia
・30セント・メリー・アクス - Wikipedia
・ロイズ - Wikipedia
・テート・モダン - Wikipedia
・ロンドン・アイ - Wikipedia
ロンドン旅行記 index シティ・オブ・ロンドン index