中国旅行記 ★ 無錫から南京まで

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無錫の朝霧 (2000-01-04)

南京インターの狛犬

 6時半に起床。外を見るとほとんど何も見えないぐらいのひどい霧で,眺めの良いホテルなのにと少し残念。ゆっくり準備をして7時半に朝食。朝食はホテルのレストランでバイキングだったが,食べ過ぎの1日目の後遺症もなくなって,ようやく普通に食べられるようになった感じ。中華料理もよいのだが,私は朝の1杯のコーヒーがとても嬉しい。
 昨日,無錫の観光が全部終わっていたので,朝食後も部屋でゆっくり。9時半に出発で,高速道路で南京まで移動する予定だった。けれど,霧のため高速道路は閉鎖中とのこと。どうやらよくある話のようで,賀さんもドライバーも「そのうち開通します」と,そんなに心配していない様子。

 一般国道は,ラッシュ時間帯と重なったせいもあるのか,排気ガスの匂いが立ちこめている。排ガス規制が日本より甘いのかもしれない。高速道路に乗ることができなかった代わりに,また一般道の風景を楽しむことができて,実は私は嬉しかったりする。

 まもなく少しだけど霧が薄くなってきて,予定していたインターより一つ南京よりの“無錫北”というインターから高速道路に乗ることができた。しかし,この霧はこの後一度もスッキリと晴れることなく,中国の風景を私たちから覆い続けたのだった。

 無錫から南京までの距離は上海から無錫までの距離とほぼ同じだが,蘇州経由で無錫にやってきたため,高速道路に乗っている時間は今度が一番長い。高速道路の周囲にはまばらに家が建ち,郊外へ行くほど一戸建てが多くなっていく。家の窓は相変わらず青硝子で,それは小さな家も大きな家も同じだった。
 途中,仙人山というSAでトイレ休憩。バスを降りると,いきなり陶器でできたパンダのゴミ箱がおいてあった。SAのトイレはまぁまぁ美しく,立つと胸あたりまでしか囲いが無いところが日本とは違う。ともかく綺麗なトイレを使えることに感謝して外へ出ると,母がSAの売店のショウウィンドウにへばりついていた。
 「ほら,お母さんがいつも買ってる香酢! 同じものかしら? すごく安いわよ。」
と言って嬉しそう。だが,母は中国元を持っていないというので私が元を貸し,無事香酢を購入。他のツアー客たちはおとなしくトイレに行っただけで,SAで買い物などをしていていたのは私たちだけだったらしく,バスに帰るとみんな座って待っていた。

 やがて降りた南京のインターには,大きな狛犬。つくづく狛犬が好きな国だと感心する。

水族館で昼食

水族館レストラン

 南京に着くと,12時半に昼食予定のレストランで南京のガイドさんと待ち合わせ。霧で遅くなった割には15分ばかり早めに着いてしまったのだが,ガイドさんはすでに到着していた。今度のガイドさんは24歳の男性で,上海科学技術大学を出たあと南京に来てガイドの仕事を2年間やっているという。いろんなガイドさんに会えるのも面白い。

 待ち合わせた場所は水族館らしいのだが,魚の見物は全くなくてレストランへ直行。江蘇料理だ。毎回色々な土地の料理が出てくるのだが,私の中では全て“中華料理”というカテゴリーで括られてしまい,あまり違いはわからない。この店のオーナーの女性は日本語が達者で,食事中,料理の説明をしてくれたり土産物の説明をしたりしている。
 この頃になると中華料理にもだいぶ慣れて,中国茶をたっぷり飲みながら食べることが中華料理を味わうコツだということがわかってきた。油っぽい中華料理なのだが,中国茶を飲めば不思議とくどさがなくなって,たっぷり食べられる。お茶が脂肪を分解してくれるようなのだ。旅の終わりまで毎回満腹以上に食べ過ぎていたのに,私たちも両親もかえって体重が減っていたくらい。

 苦手と思っていた紹興酒も,中華料理と一緒に飲むと,そう飲めない酒でもないことが分かった。日本で味わうどんな中華料理も中国茶も紹興酒も,本場のダイナミックさを表現することはできないのかもしれない。

 ここで私は紹興酒を暖めるための錫製の容器を買い,父は印鑑を2本買っていた。印鑑は,その場で彫ってくれるらしい。日本には無い字体で彫ってもらえるところが魅力のようだ。錫のお酒入れには,オーナーに頼み込んでレストランで使っていた紹興酒を飲む白い陶器のカップ二つもつけてもらう。
 この日本語ができるオーナーとは随分話をしたので,父は,彼女に「日本ではご縁がありますように,といって5円玉をあげるのだ」と言って5円玉を渡していた。すると,母も5円玉を出し,食事の間中私たちにお茶を入れてくれていた給仕の若い女性に「あなたにもよいお嫁さんのご縁がありますように」と言って5円玉を渡していた。彼女の方は,普段お客さんに声をかけてもらったり話をする機会はあまりないのだろうか,随分と嬉しそうだった。

 食後,父の印鑑ができるところをみんなで待ちながら,彫っている様子をデジカメで撮っていると,男性の店員に「それはビデオカメラか?」と英語で話しかけられた。デジタルカメラだと話すと,その人は非常に興味があるらしく,幾らくらいするのか,何枚撮れるのかなどと聞いてくる。中国でも一般の人がデジカメを使う時代になっているのかと思ったが,彼はそういった話題に明るい人のようで,面白がって寄ってきた他の店員に「写真をパソコンに取り込んで使うのだ」などと説明していた。彼が「6年前のプリンタでは画像の印刷は綺麗にできなかった」と言っていたので,「最近のプリンタでは写真みたいに印刷できる」と言っておいた。
 ここでも私たちばかり随分買い物をしたようで,店を出るとき,オーナーがいっぱい買ってくれたからと言って母にパンダのぬいぐるみ2つが入った袋を持たせていた。正直言って可愛くないと思ったのだけど(^^;。

中山陵

中山陵

 昼食後,中山陵(ちゅうざんりょう)へ向かう。中山陵とは孫文の墓である。孫文は日本へ留学していたことがあって,その時“中山”(なかやま)という姓を名乗っていたことが中山陵の名の由来だという。

 料金を払って門を入ると,広い庭園にや陵内遊覧用?の列車型の乗り物オープンカーがあり,皆で疑問に思う。特に利用している人もなさそうだし,車でまわるほどの場所なのだろうか?
 陵の入り口から入った後,お墓まで長い長い坂道を歩いて行くと,道の脇には所々出店のような土産物屋が並んでいる。しかし,あまり孫文とは関係なさそうな土産物ばかりのようだった。

 まるで山一つが墓みたいで,ただっ広いところに長い長い階段があり,それを登ったところに建物が建っている。この建物の地下深くに遺体が埋葬されているとのこと。景色は単調で目新しいものもなく,個人的には非常に撮影意欲のそそられない場所だ。
 階段の登り口には孫文の碑が立っていた。

 さて,いよいよ階段の始まり。階段の両側には,狛犬ならぬ狛獅子?がいる。
 ガイドさんに階段の数を数えてみるようにと言われ,みんなで一生懸命数えてみる。答えは390段。数が合わなかった母は異常に悔しがって帰りも数えていた。私も,こういう時って何故か数えられない人になり,「337, 338, 339, 390」なんてミスを犯すものだから389段になってしまい悔しかったが,帰りまで数えようとは思わなかった。
 それにしても,上から390段の階段を見下ろすとさすがに壮大な眺めで,階段を登った所には,日本の観光地と同じように有料の双眼鏡が置いてあった。

 頂の建物の入り口には孫文の像が座っていて,中に入るとお墓の真上の天井には青地に白い太陽を描いた美しい絵。ガイドさんが「孫文先生への尊敬を表すための晴天の白日」と教えてくれたが,撮影禁止ということで残念!
 建物の外側には中山陵を建設している当時の写真や設計図などが展示してあり,それらを見学した後,私たちはまた長い階段を下りていった。内陸の南京は寒いと聞いていたので思い切り厚着をしていたのだったが,何と,午後になっても晴れない霧のおかげで気温が高く,階段の昇降が多い中山陵では本当に暑くて汗だくになってしまった。

長江大橋

長江大橋

 中山陵を後にした私たちは,南京市内を通って長江にかかる長江大橋を見学に行った。南京市は長江沿いにあるのだ。
 南京はさすがに大都会で,途中,市内の一般道では,信号が変わるまでの時間を秒単位で告げる信号があったりして面白い。どこの国でも都会人はせっかちなのだろうか? 秒数が出る信号機は南京で初めて作られたのだと,ガイドさんが少し自慢げに説明してくれる。

 長江大橋は有料になっていて,料金所を通って見学用の施設へ入るのだが,まず,その橋脚の大きさに驚いた。施設へ入るとお決まりの土産物屋があって,奥には説明用の橋のミニチュアを用意した部屋もある。そこでガイドさんが橋の概要を説明してくれた。
 長江には様々な橋が架かっているが,この南京にある長江大橋が,中国の技術だけで作られた最初の橋なのだそうだ。車道と線路の2階建ての橋で,長さは6000mで,そのうち河川部は1500mほど。川の中には9つの橋桁があって,そのスパンは160m。中心部の水深は35mもあるとのことで,意外と深いことに驚いた。

 説明を聞いた後,エレベータに乗って橋を見下ろせる展望台へ登る。しかし相変わらず霧がひどく,向こう岸もかすかに見えているだけで,写真を撮るにも様にならず残念だった。せっかくの長江なのに! 太陽も出ているけれど,直接見てもぜんぜん眩しくない。
 橋の上の道路には車がひっきりなしに往来し,その下の線路の上も時折列車が走っていく。南京の活気を見るような橋だ。

 見学場所からは,橋を渡っている車や列車がよく見えて,丁度見下ろしたあたりにはバス停もあった。中国では,橋の上は駐停車禁止ではないのね。
 バス停には随分と沢山の人が待っているのだが,バスは通る度に満員で,人は乗り切らないまま置いて行かれる。だが,バス停の人々は,おとなしく置いて行かれるがままに任せるようなことはしないらしい。満員のバスが発進すると,大勢の人々が追いかけ,走るバスの扉を無理矢理引っ張って開けようとしているのだ。結局みんなバスに振り落とされて乗れないのだが,それでも一向に参っていない様子で,次のバスが来ても同じことを繰り返す。その光景には全く驚いたが,中国ではバスに乗るとはこういうものなのだろうか??

南京散策

南京のデパート

 橋を見学した後,まっすぐホテルへ移動しチェックイン。ホテルは今夜も五つ星のシェラトンホテルで,できたばかりでとても豪華で美しい。多分,今回の旅の中でも最も豪奢なホテルだろうと思われる。部屋は36階で,まるで空中に浮いているよう。広い部屋で,やはり果物が置いてある。
 夕食の集合まで1時間半くらいあったので,とりあえず簡単に荷物を片づけて,両親と待ち合わせて街へと繰り出した。

 南京は人口400万人を越える大都市で,江蘇省の省都でもあり,繁華街も大きく発達している。歩いている人々もお洒落で,連れだって歩いているロングコートにブーツ姿の若い女性たちなど,ほとんど日本人と区別できない。

 道端には露店がいっぱい並んでいて,ギョウザみたいなのとか,チャンポンみたいなのとか苺とか焼き芋とか色々あって,母は非常に食べたがっていた。24時間営業のコンビニもあって思わず入ってみたが,万引き防止なのか?店員が何人もいて見張っているので落ち着けない。

 その後デパートにも入ってみたが,時間がなく,結局何も見る暇もなく帰らねばならなかった。
 だけど,こんな短い散策であっても,観光地にはないこの国の素顔がのぞき見られて面白い。今度機会があったら,もっとゆっくりと南京の街を歩いてみたいものだと思う。

四川料理

夕食のレストランにて

 夕食は,18時半にロビーへ集合し,市内のレストランへ連れて行かれる。多分,日本人観光客向けのレストランだろう。他にも日本の旅行社の団体客が入っていた。まるで体育館のような広いレストランで,マーボー豆腐や南京ダック,ぜんざいみたいな白玉粉のデザートなどが出てきた。マーボー豆腐は昨日の昼にも出てきたが,こちらの方がピリッときたけど美味しかった。

 毎回出てきてそろそろ慣れてしまった紹興酒だが,ここでは乾燥杏を入れて飲まされた。ワイングラスのようなグラスに杏を入れて,そこに赤茶色の紹興酒を注ぐのだ。紹興酒も美味しくなるが,杏の方もお酒を吸って美味しくなる。お酒が美味しいと食も進むのか,この日の夕食は,この杏入りの紹興酒を飲みながら今までで一番たっぷり食べた。毎回お皿の上の美味しそうな料理を半分も残して去らなくてはならず心苦しかったが,やっと心置きなく皿の前から去ることができたのだった。

ホテル散策

ホテルのツリー

 さすがにおなかいっぱいで,ホテルに戻ってもすぐに休む気にもなれず,腹ごなしがてら一通りホテルに入っている店を見て歩いた。しかし,本当にまだ営業を始めたばかりのホテルのようで,店が入るスペースの大部分は工事中。たまに開いている店は,私たちには不相応な豪華な品物でいっぱいだった。
 ロビーにクリスマスツリーがあるのは今までのホテルと同じ。

 部屋に戻って片づけ物などをしてると,隣の部屋の父から電話があったので遊びに行ってみると,母が,仙人山のSAで買った香酢が,正にいつも買っている物と同じだったと言って,いたく感動していた。日本で取り寄せている値段の10分の1ほどだったらしい。
 父に,行きの福岡空港の免税店で買ったウイスキーをご馳走になり,気が付くと随分遅い時間になってしまった。

 部屋に戻りシャワーを浴びて就寝する。もう旅も大詰めだ。


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