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5時半に起きて7時40分朝食。8時にホテルを出,南京から上海へ移動した。南京のホテルを出発するときに,昨日からお世話になった南京のガイドさんとお別れ。どのガイドさんもみんな,「日本では“袖触れあうも何かの縁”と言いますね。またいつかお会いすることがあったら宜しくお願いします」と言って最後の挨拶の言葉をしめくくる。決まり文句なのかもしれないけれど,思わず「そうだね」と思う。
さて,これから今回の旅行で一番長い陸路移動だ。幸いに朝は雨で霧が濃くなかったため,昨日のように高速道路が閉鎖になることもなく,上海への移動は高速道路を使って問題なく終了。ガイドの賀さんによると,数日前の同じツアーのお客さん達は,霧で高速道路が通行止めになって上海に着いたのは夕方だったというから,私たちは運がよかった。
雨の高速道路は,ガイドさんが時々解説をしてくれたりするけれど,居眠りしている人が多い。今回のツアーは私たちを除いてみんな旅慣れた熟年夫婦だったが,さすがにハードな日程に疲れているもようだ。
時々,荷台に豚を沢山積んだトラックがバスを追い越していく。どこかに屠殺場でもあるのだろうか,合計10台近く見かけた。
途中,一度だけトイレ休憩のためSAに入った。SAは一々特徴があって,ここには雑誌が沢山置いてあって駅の売店みたい。またSAの周辺は靴工場でもあるのか靴屋さんばっかり。最初はただの見学のつもりだったが,デザインもまぁまぁで安い。
店の人たちも最初は気が無さそうにしていたが,値段を聞いたりして「どうやら買いそうだ!」と思うと,とたんに活気づいてきたのが面白い。隣やその隣の店からも人がやってきて,やんややんやと大騒ぎになる。「SAで靴を買うひとなど滅多にいないのだろうか?」と思うほどだ。
結局85元で靴を購入。日本円にすると千円もしないくらいだから,万一すぐ潰れたとしても楽しみ代で納得できるだろう。賀さんに品物を見てもらうが,ちゃんと糸も通っているし問題ない靴だと言ってくれた。
またしてもSAで買い物などをしているのは私たちだけで,バスに戻ると他の人はすっかり座って待っていたが,靴の買い物は彼らにも受けて「よかったですねぇ」と言われた。
上海に着くと,相変わらず霧というのか霞んでいてスッキリしないが,一応晴れていた。移動は雨で霧に合わず,観光は晴れの中できるのだからありがたい。
すでにお昼になっていたが,まずはトイレ休憩を兼ねて工芸品の土産物屋に入る。トイレは綺麗だったけど,観光客用にチャイナドレスのファッションショーをやっていて,いきなり見せられた。5人ほどのモデルが入れ替わり立ち替わり音楽に合わせて歩いてくるが,チャイナドレスが欲しくなることはなかった(^^;。
他には絹の服や絵や陶器の器やお茶などがあり,母は運河の絵を買っていた。私たちは,泥人形を見てみたけど結局買わず。
土産物屋を出て昼食のレストランへ行くが,夕食までの時間が短いので少しセーブしながら食べる。ここでは川ウナギが美味しかった。
今までのほとんどのレストランと同じく土産物屋が併設されていて,食事が一段落すると日本語を話せる店員がやってきて掛け軸売場に早変わり。「買わないってば」と思いながら見ていたが,ツアーの中には買う人もいて,ちゃんと需要と供給が成り立っているようだった。
上海での最初の観光地は玉佛園(ぎょくふつえん)。
コインを投げ入れると願いが叶うという塔があって,一生懸命コインを投げている若い女性がいた。彼女をまねして他の観光客達もコインを投げるが,けっこう難しそう。
ここには沢山の観音様がいて,巨大な像が多いのが特徴だ。
特に奥まったところに安置してあった白い観音像は国宝らしく,写真撮影も禁止だった。この観音像には本物のダイヤなどがはめ込まれているとのことで,遠目に見ても白くて綺麗で,表情がとても優しかった。この白い観音様が安置してある部屋の横の廊下から向かい側の建物を眺めると,独特の丸い瓦と龍の飾りとすかし模様の飾り窓が美しい。
またお寺全体に狛犬が沢山あって,これが可愛らしかったのが印象的。
玉沸園を出るとかなり日が傾いていたが,それから豫園(よえん)へ行く。
ガイドの賀さん曰く「上海の浅草」だそうで,小さな店が沢山並んでいて,人が沢山歩いていて活気があった。新暦の2000年のお祝いと,旧暦の年末が一度にやってきていて,祝賀の垂れ幕や提灯が多かったのも,賑やかさに一役買っていたかもしれない。ここに限らず,このあたりの街ではどっちを向いても赤い提灯と龍が飾ってあって,エキゾチックな雰囲気を醸しだしている。この数日間で,私にとって中国はすっかり“提灯と龍の国”になってしまった。
豫園の中には,座ると美人になるベンチ,男性と女性に分かれて通る廊下などの見所があり,男性と女性が堂々と逢い引きできない時代の産物のようだった。
また,目立つところでは屋根の上の龍に代表されるが,本当にあちこちに龍がいる。本物の龍は皇帝しか作れないので,これらは蛇やその他の動物と龍の合作で,厳密には“龍”とは呼ばないらしいのだが。
面白い形をした石をいっぱい置いた庭があるのも特徴で,それらはみんな天然のものだということ。丁度夕陽が落ちかけていたが,霞んだ上海の空では太陽が20度くらいの高さにあってもちっとも眩しくなかった。
旅行の日程表によると豫園の後は「リッツカールトンでショッピング」ということだったが,ツアーの人たちはほとんど皆ブランド物に興味がなく,リッツカールトンではトイレを借りただけで,それから1時間ほど自由行動となった。街中を歩いてみたくてうずうずしていた私たちは,早速あてもなく繁華街をうろつき始めた。
しかし,1時間という時間は知らない場所を探索するには意外に短い。待ち合わせの17時半までに入った店はスーパーマーケット1件で,やったことと言えば,そこで桂花陳酒を1本買っただけだった。
桂花陳酒は750mL入りが9元くらいで,日本円にして100円未満という安さだ。ちなみに日本でいつも買っている桂花陳酒は,500mLで500円。重くないなら10本くらい買って帰りたいところだった。
買い物を終えて待ち合わせ場所のリッツカールトン前へ戻ると,暮れてきた上海の街の街路樹に施した電飾が灯って通りは一度に華やかになった。
さて,集合すると夕食のレストランに向けて移動だったが,渋滞がひどくて随分と時間が狂ってしまった。その上,レストランは予約してあるはずなのに席が空いておらず,何故か待ちぼうけ。ようやく席に座った頃には,出発まであと30分もないくらいの時刻になっていた。
レストラン内は非常に混雑していて,店員も心なしか殺気立っている。忙しいのはわかるけど,それにしてもこのレストランはサービスも悪く,事前に上海蟹を頼んでいたのだが,19時出発だというのに出てきたのは18時50分!
時間がなくてほとんど食べられないし,おまけにまだ半分くらいしか煮えていなくて,せっかく料理された蟹がかわいそうでたまらなかった。最後に出てきた焼きめしも,誰も一口も食べる暇がなかった。この後19時半から始まる上海雑技へ行くことになっていたため,食事の時間は少しでも伸ばすわけにはいかなかったのだ。
唯一?よかったのは紹興酒。バスの中で賀さんに,日本で売っている紹興酒はだいたい1年物から2年ものだが,5年物〜10年物になると非常にまろやかで美味しいと聞いたので,5年物を1本頼んでみたのだ。中国人は紹興酒に砂糖漬けにした梅干しを入れて飲むらしく,それを頼んで入れて飲むと,本当に違った飲み物のように飲みやすく美味しい。これなら紹興酒が大好きになりそうだと思った。日本では5年物の紹興酒や砂糖漬けの梅干しが手に入らないので,ここでしか飲めないのが残念。いや,ここでしか飲めないからこそ味わい深いのかもしれない。紹興酒を見直すよい機会になったと思う。
ちなみにこの梅干し,“話梅”(ホアメイ)と呼ぶのだそうだ。
また,コップにお茶の葉を直接入れた中国茶が出てきたのも,他の店ではなかった特徴。歯でお茶の葉を押さえるようにして飲むのだが,慣れるとそう難しくもないものだ。
上海雑技団というのは,簡単に言えば上海の有名なサーカスみたいなもので,賀さんの言うには上海に来たからには是非見て帰らねばならないほどのものらしい。私はこの旅行に参加することにするまでその存在を知らなかったが,そう言われるだけあってかなりの人気らしく,週3回ほどの上演らしかったが,毎回満席になるそうだ。
場所は夕方にブランドショッピングの場所となっていたリッツカールトン(ホテル)の上階。夕食でトラブって少々遅く着いたので,すでに演技は始まっており,一番後ろの席しか空いていなかった。
途中からだったが,サーカスなので舞台を楽しむにはあまり関係ない。それほど興味もなかったというのに上海雑技は文句無しに面白く,思わず一生懸命見てしまった。後ろの席だったこともあり,ここでは風景用に持っていったワイドビノ(視野の広い双眼鏡)が大活躍。
演技をしているのは,ほとんど十代の若い人たちばかりだった。
皿回しやフラフープ,足で傘を回したりの曲芸なのだが,ここでも一々どこか東洋っぽいと思えるところが不思議だ。西洋にはない“何か”がそこにある。それは中国人も日本人も持っている,生まれながらの質なのかもしれない。そんなことを考えた。
ホテルに帰ってきたのは21時半前。夕食を満足に食べられなくてお腹が空いていたものの,雑技が面白かったのでそれなりに満足していた。解散後,ホテルのロビーにあった売店で中国の地図を見つけたので買って帰る。
部屋に戻ると,お茶を入れて小龍包(ショウロンポウ)を食べた。これは,賀さんからの差し入れ。夕食の時,上海蟹の食べ方を教えてくれようとした賀さんが,誤って私の紹興酒をひっくり返して私のGパンが濡れてしまうというハプニングがあったのだが,そのお詫びらしい。
ホテルの小龍包はレストランの食事とは比較にならないほど美味しくて,空腹だった私たちには有り難かったが,きっと高いんだろうなぁと思うとかえって申し訳なかった。確かに紹興酒の香りを漂わせながら歩くのは気持ちよくなかったけれど,かといってミスは誰にでもあることだし仕方がないと思って怒ってもいなかったのだが。
ホテルは上海の古い5つ星ホテルで,部屋の様子やサービスは,昨日まで泊まったシェラトンホテルより一段落ちるような感じ。部屋には果物は勿論,バスローブもない。
コンセントは昨日までと違った形で,海外旅行用アダプタセットの“O”を使う。ちなみに蘇州と無錫の電源は“BF”タイプ,南京は“B3”タイプのアダプタを使った。こんな近距離でこれだけ異なったタイプを使うことになろうとは。事前に調べたとき,統一されていないことは知っていたが,改めて驚いた。