シリウスと違って,フォーマルハウトは私の友人達になかなか人気がある。
秋の南天にぽつんと白く輝く一等星。“南のひとつ星”という和名も“北落師門”という中国名もこの星の哀愁を語る。なまじ一等星であるだけに,その姿が人目をひいて寂しげに見えるのだろう。“フォーマルハウト”は“魚の口”の意であるが,この名の響きがまた耳にやさしい。
フォーマルハウトに会って私がいつも思い出すのは,この星が北欧での“カノープス”であるという話だ。日本や中国では,シリウスに次ぐ明るさを誇り,しかしながら,その緯度の低さ故に南の空低くすれすれにしか見られないカノープスは“南極老人星”と呼ばれ,一目見れば寿命が伸びる吉兆の星とされてきた。
日本より高緯度にあるヨーロッパでは,フォーマルハウトが南国への憧憬をさそう星として,その“南極老人星”の役を果たしているという。
ロンドンで見るフォーマルハウトの高さは8度なのだそうだ。