ちょっと前にテレビで暗渠好きのロックミュージシャンが出てくる番組をやっていた。
暗渠とは,かつて川だったところに蓋をして,川が見えないようにして道路などにしたところを言う。都市の発達とともに,川の存在がじゃまになり,治水や土木技術の発達ともに多くの川が暗渠化されたらしい。
その番組でも,東京渋谷区生まれのミュージシャンが,自分の生まれ育った街の暗渠を訪ねるという構成だった。あの「春の小川」も渋谷区内にあり今は暗渠化されている。
話は昔に戻って小学生の頃,引っ越しを経験しているのだが,最初に通っていた小学校は比較的町中にあった。学校までの道のりはアーケードのある商店街を抜けて500メートルほどの距離だったと思う。その丁度中間地点に,江川線という大きな市道があった。片道3車線ぐらいで,交通量も多く,都市を南北に貫く幹線である。当時はなかったのだが,今では高架の高速道路がかけられ,少し離れたところには地下鉄も通っていた。
小学生の当時,まことしやかな噂が流れた。江川線は昔は江川という川だったというのだ。もちろん川の面影はどこにもなかった。両親に真偽を尋ねたりもしたが,親も昔からそこに住んでいたわけではないので,知る由もなかった。
番組を見て思い出した。江川は本当にあったのではないだろうか。
今でも暗渠になってあの江川線の下を流れているのではないだろうか。
地図で調べると江川線の流れ着く先には港がある。海である。元をたどると市一番の川に突き当たる。本当に江川があるような気がしてきた。