最終更新:2004-10-20
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和名α星シリウス,尻尾のδ・η・ε星に,幾つかの和名が知られる。 (StallaNavigator AstroArts ASCII) |
シリウスの和名としては,アオボシ(青星),カゼボシ(風星),イカビキボシ(烏賊引き星),アトボシ(後星),オオボシ(大星,尾星),エヌグボシ(絵の具星),きらきらぼし,ミナミノイロシロ(南の色白),ユキボシ(雪星),ヒカリボウズ(光坊主)。 青星は,東北や北陸地方などを中心に見られる,青白く輝くシリウスの光をズバリ表現した名前。 犬の尻尾にあたるδ・η・εはいずれも2等星で,小さな直角三角形が意外と目立つことから,東北地方や,静岡・奈良などの広い範囲で三角星と呼ばれていた。 |
星名 | 一般名 | 意味 | 派生 | 和名 | 光度 | スペクトル | 距離 | 絶対等級 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
α | シリウス カニクラ ナイルの星 | Sirius Canicuma | 焼きこがすもの 犬星 | ギシリア語 ラテン語 | 青星,大星 など | -1.46 | A1* | 8.6 | 1.45 |
β | ミルザム | Mirzam | 予告するもの 告知者 | アラビア語 | 1.98(Var) | B1* | 800 | -4.8 | |
γ | ムリプフェイン ムリフェイン | Muliphein | 犬の頭 | アラビア語 | 4.11 | B8* | 320 | -3.8 | |
δ | ウェズン ウェゼン | Wezen | 重さ・分銅 | アラビア語 | ηと合わせて 三角 鞍掛け星 | 1.84 | F8* | 2500 | -7.0 |
ε | アダーラ アダラ | Adhara Adara | 乙女たち | アラビア語 | 1.5 | B2* | 3000 | -5.0 | |
ζ | フルド | Furud | 猿 | アラビア語 | 3.02 | B2.5* | 250 | -2.4 | |
η | アルドラ | Aludra | オリオンの乙女 | アラビア語 | 2.44 | B5* | 2000 | -7.1 | |
光度: Yale Catalogue of Bright Stars, (3nd edition) |
【コメント】
α星シリウス(Sirius)は,ギリシャ語の“セイリオス”(焼きこがすもの,輝くもの)が由来で,ローマ文字音写したもの。夏至の頃,太陽と同時に空に昇り,太陽と一緒に輝いて暑い夏をもたらすと考えられてついた名前。
英語名の“Dog Star”は,カニクラ(Canicula)が語源。Canicula は“犬”を表す canis の指小辞で,メス犬や小犬,星に使われる場合はシリウスを指す。英語の Dog days (土用,暑中)は,太陽とシリウスが同時に出没する暑い時期という意味。
古代エジプトではナイル河の増水を予告する星とされていたことから,ナイルの星またはイシスの星とも呼ばれる。
また,中国では“狼(ろう)”“天狼(てんろう)”などと呼ばれ,その強烈な輝きから狼の目を連想したもの。
β星ミルザム(Mirzam, Mirzim)は,“吠えるもの・予告するもの”という意味のアラビア語,アル・ムルジム(Al Murzim)が語源。シリウスより少しだけ先に昇ってくることから,この名がついたという。
γ星ムリフェイン(Muliphein, Muliphen)は,“犬の頭”“星に誓う”というアラビア語のアル・ムリフェイン(Al Muhlifei.n)が語源。これは,本来はおおいぬ座δ星とはと座の星で構成されるアラビアの星座の名前であるが,19世紀になって,アメリカの天文学者バリットの誤りでこの星の名前に用いられるようになったものという。
他に,イシス(Isis)・ミルザ(Mirza)という名がある。この星は,γという星座3番目の番号を持ちながら4等星の暗さであることから,昔は明るかったのではないかと疑問視されている。
δ星ウェズン(Wezn, Wezen)語源は,“重さ”を意味するアラビア語,アル・ワズン(Al Wazn)。冬の南の星の中で,地平線付近に低く見え,あまり高く昇らないいくつかの星に対して同じ名前がつけられており,地平線から昇るのが大変そうに見えることからついた名前。
ε星アダーラ(Adhara, Adara, Adard,Udara,Udra)は,“乙女たち”を意味するアラビア語,アル・アダーラ(Al 'Adha_ra_)が語源。δ,η,οを合わせた名前だったが,この星の固有名となった。シリウスとプロキオンとカノープスが3人姉妹だったというアラビアの伝説があるが,この4星はカノープスの娘達または侍女と見られていたらしい。
なお,『星座ガイドブック 秋冬偏』(第6版,1983,藤井旭)による数値では1.78等,3000光年だが,『Burnham's Celestial Handbook』(1966,1978, Robert Burnham.jr.)によると1.49等,680光年。太陽の9000倍の明るさで,全天で22番目に明るく1等星に分類されるべきと書かれている。上の表の光度及びスペクトルは,エール輝星カタログ第3版(Yale Catalogue of Bright Stars, 3nd edition)より抜粋。
ζ星フルド(Furud)は,複数形の“猿”を意味するアラビア語,アル・クルド(AL K.uru_d)が語源で,周囲の星々(おおいぬ座ζλ,はと座γδθκλμξ)を合わせた星座の名前。
η星アルドラ(Aludra)は,“オリオンの乙女”を意味するアラビア語,アル・アドラ・アル・ジャウザ(Al 'Adhra_ al Jauzah)が語源。ε星で出てきた伝説で,カノープス(アラビア名:スハイル)の結婚相手がオリオン座のリゲルだったことから,δ・ε・η・οの4星を侍女と見ている。
変光星名 | 変光星型 | 光度範囲 | 周期 | スペクトル | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
R | EA/SD | 5.70-6.34 | 1.1359405 | F1V | |
UW | EB/KE: | 4.84-5.33 | 4.393407 | O7IA:FP+OB |
【変光星型】 EA:アルゴル型食変光星, SD:半分離型の近接連星, EB:こと座β型食変光星, KE:O型からA型までのスペクトルを持つ近接連星
【スペクトル型の前後の記号】
【周期】 接尾記号 : :不確実
【コメント】
★ おおいぬ座の神話及び探し方については,星座入門 の おおいぬ座 をご覧下さい。