を見てみよう

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月の形はどうして変わるの?

月の満ち欠け

 今日の月は,どんな形をしているでしょう? そして,いつ頃どこに見えるのでしょうか?
 “星空を見るための準備”の章で,これらが新聞で調べられることをお話ししましたね。新聞の暦欄には,その日の月齢や月の出時刻などの情報が掲載されています。“月齢”(げつれい)とは,月が見えなくなる新月の時を 0.0 として,それから24時間経過する毎に 1.0 ずつ加えていった数のことです。例えば,新月から丸1日(24時間)たつと月齢 1.0 となり,1日半(36時間)たつと 1.5 となります。月齢は月の形を知る目安になっていて,三日月なら月齢 2.0〜3.0 ,半月(上弦の月)なら月齢 7.4 ,満月ならば月齢 14.8 です。
 新聞などに掲載されている月齢はその日の正午の値なので,例えば夕方6時頃の月を見るのであれば,6時間分(月齢 0.4)くらいプラスして考えましょう。

 それでは,月は何故このように大きさや形を変えていくのでしょうか?
 月は惑星と同じく太陽の光を反射して光っており,太陽を向いた側だけが光っています。その光っている部分が私たちのいる所からどれくらい見えるかによって,見かけ上の形が違ってくるのです。光っている部分が地球から全く見えない時が新月で,逆に全部見えているときが満月,また半分だけ見えているときが半月(上弦の月や下弦の月)になります。月は,29.5日ほどの周期で満ち欠けを繰り返しながら地球をひとまわりしており,地球から見た太陽と月の位置関係が,このような月の形を決めているのです。
 例えば,月と太陽が同じ方向にあるときが新月で,その後太陽から離れるにつれ見える部分が増えていき,新月→三日月→上弦の月→満月という具合に形を変えていきます。満月の時,地球から見た月の位置は太陽と正反対になっています。満月の後,月はまた太陽に近づきながら細くなり,やがて,次の新月を迎えるのです。
 ところで,月の満ち欠けの周期が1ヶ月より少しだけ短いために,時々月に2回満月が巡ってくることがありますね。このようなその月2回目の満月のことを“ブルー・ムーン”と呼ぶことがあります。

 月のように惑星の周りをまわる自分で光らない星を“衛星”(えいせい)といって,水星・金星を除く全ての惑星に衛星があることが知られています。


月は何時どこに見えるの?

 さて,今日の月齢はわかりましたね。けれど,いつどこを見上げれば月が出ているのでしょうか?
 月齢は,月の大きさや形だけではなく,見える時刻や方角についても教えてくれます。下の表を見てみましょう。

月齢と観察ポイント
月齢呼び方昇ってくる時刻さがすポイント
0.0新月
朔(さく)
日の出と同時見えない
2〜3三日月日の出の2〜3時間後夕方の西の空
7.4上弦の月正午頃日没頃の南の空
真夜中の西の空
14.8満月
望(ぼう)
日没頃日没頃の東の空
真夜中の南の空
明け方の西の空
22.1下弦の月真夜中真夜中過ぎの東の空
明け方の南の空
26〜27二十七日月
あとの三日月
日の出の2〜3時間前明け方の東の空

 三日月の頃は夕方西の空に出てすぐに沈んでいた月が,満ちていくにつれ遅い時間に沈むようになり,太陽の反対側にある満月の頃には一晩中見えるようになっていく様子がわかりますね。
 月の出の時刻は,平均すると,毎日だいたい 50分くらいずつ遅くなっていきます。

 昔,日本では月の満ち欠けを基準とする“陰暦”(いんれき)を使って生活していたこともあってか,特定の形の月が昇るのを待って拝む月待ちの行事が行われていました。また,こうして月が出るのを待って過ごしたことから,遅くなっていく月の出を表す呼び名も生まれました。“十六夜(いざよい)の月” “立ち待ちの月” “居待ちの月” “臥(ふ)し待ちの月” “更待ちの月” などという言葉がそれにあたります。
 “いざよい”は,ためらってぐずぐずすることで,“十六夜の月”は,ためらうように昇ってくる満月の翌日の月を表した呼び名です。また,“立ち待ちの月”は出てくるのを立ったまま待つことのできる十七日目の月を,“居待ちの月”は立って待つには遅すぎて,家の中に入って待つ十八日目の月を,“臥し待ちの月”“寝待ちの月”は遅すぎて寝て待つ十九日目の月を,“更け待ちの月”は夜が更けるまで更に待たなくてはならない二十日目の月を表しています。


月の出と月の入り

 夏の夜はいつまでも明るかったのに,秋になると急に日暮れが早くなったり,夏の朝は寝ているうちから明るいのに,冬の朝は起きるとまだ暗かったり,そんな経験はありませんか?
 同じようなことが月にも起こります。月の出や月の入りの時刻は,1年を通じて変化しているのです。

 月が通っていく空の道を“白道”(はくどう)と呼んでいますが,白道は,太陽の通る“黄道”(こうどう)と 5.2度ほどずれているものの,ほとんど同じといっていい近い場所を通っています。ですから,月は黄道の上を進んでいくと仮定して考えてみましょう。
 北半球では,春分の頃,黄道と地平線の傾きが一番大きくなり,その傾きの分だけ月の出が遅くなります。逆に,秋分の頃は,地平線と黄道の傾きが小さくなるので月の出の時刻はあまり遅くならず,代わりに月の出の場所が日に日に北へとずれていきます。

春分の頃の月の出の説明図 秋分の頃の月の出の説明図

 秋分の頃は,そういうわけで満月を過ぎても比較的早い時刻に月が昇るため,月を見るにはよい条件であるといえるでしょう。
 ヨーロッパでは,秋分の日に一番近い満月を“収穫月”(しゅうかくづき)と呼び,その次に巡ってくる満月を“狩猟月”(しゅりょうづき)と呼んでいます。また,日本でも秋分の日に近い旧暦8月15日に中秋の名月を祝い,その次の満月の2日前にあたる旧暦9月13日に,“後の月”とか“十三夜”と呼ぶお月見をしていました。
 ヨーロッパの収穫月と同じように,日本でもお月見は収穫を祝う祭の意味を持っており,中秋の名月の時には里芋を,後の月の時には枝豆や栗を供えたために,中秋の名月のことを“芋名月”,後の月のことを“栗名月”“豆名月”と呼んだりもします。


月の模様を見てみよう

月の海の解説図

 月をよく見てみると,黒い模様が見えていますね。この黒い部分は,月の“”と呼ばれており,地球の海のように見えることからこう名付けられました。水があるわけではありません。

 この月の海が作る暗い模様は肉眼でもよく見えるため,昔から人々の注目を集めてきました。みなさんも「月のウサギ」の話は聞いたことがあるでしょう?
 そう,日本では,月の模様をウサギが餅つきをしている姿に見立てていました。西洋の国々では,同じ模様を蟹の姿に見立てたり,女の人の横顔や,薪を背負った木こりの姿に見立てたりしています。

 ところで,月の模様はいつ見ても同じに見えますね。月は地球を1回まわる間に1回自転しており,いつも同じ側を地球に向けているのです。
 すると月の裏側の50%は,地球からは永遠に見えないのでしょうか?
 実は,そんなわけでもありません。満月の日に,特徴のある模様を見つけてよく観察してみましょう。同じように見える月ですが,満月のたびに見えている模様が少しずつ違っていることがわかります。
 月と太陽の角度,月と太陽と地球の位置関係,地球や月の首振り運動など様々な原因が絡み合って,月は少しずつ振動しているのです。この現象は“秤動”(ひょうどう)と呼ばれ,おかげで私たちは,月表面の 59%を見ることができます。満月の度に必ず見える場所が 41%,残りの 18%は時によって見えたり見えなかったりする場所です。

 今日見えている月の模様は,もしかしたら,今日だけしか見えないのかもしれないと思うと見逃せませんね。

月の模様の解説図


満月の高さを観察しよう

月の高さの説明図

 満月が真南に来たときの高さを,季節を通して観察してみましょう。
 夏の日の満月は南の空低く,冬の日の満月は頭の上高く輝いていることがわかると思います。

 さて,この動き,何かに似ていませんか?
 そう,太陽です。太陽は,夏至の頃に空高く,冬至の頃に南の空低く輝いていますね。天体が真南に来たときの高さのことを“南中高度”といいますが,東京で見る太陽の南中高度は,夏至の頃で地平線から78度の高さに達し,冬至の頃だと31度にしかなりません。
 満月の時,月は太陽の反対側にありますから,太陽が高い季節には低い場所に,太陽が低い季節には高い場所に見えているのです。


地球照の写真

地球照を観察しよう

 三日月をじっくり見てみましょう。
 月の光っていない部分の丸い形が,うっすらと見えていることに気がついたことはありませんか?

 目の錯覚ではありません。この現象は“地球照”(ちきゅうしょう)と呼ばれていて,太陽の光が地球に反射して月を照ら出している姿です。
 三日月の頃,月の夜の部分(暗い部分)から地球を見ると,地球は満月のように丸く大きく輝いていて月面を明るく照らしています。月から見る地球の大きさは,私たちが見る月の16倍もの面積を持っていますから,月から見た地球の丸い姿は,私たちが見る満月よりずっとずっと明るいのです。

 英語では,地球照のことを“古い月に抱かれた新しい月”(the new Moon in the old Moon's arms),あるいは単に“オールドムーン”と呼んでいます。


 さぁ,今夜はどんな月が輝いていますか?




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