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一年前に「なは」を見送った熊本駅に,またお別れムードが漂う2009年早春。
数え切れないほど乗った「はやぶさ」を見送るために,熊本駅へ何度か足を運んだ。新幹線の工事で日々移り変わる熊本駅だが,「はやぶさ」との別れを惜しむ人々の姿は日々絶えることなく増えていった。鉄道ファンだけではない。私のように人生の岐路をこの列車と過ごした多くの人が,惜別の想いを抱いていた。
「そんなに残念なら乗ればよかったでしょ。みんなが乗らないから廃止になるんじゃない」
そんな言葉を色々な場所で幾度となく聞いた気がするが,それができればみんな乗っていただろうと思う。そう,私だって。
忙しい時代。列車で風情を楽しむ旅をするには時間もお金もかかりすぎる。乗りたくても乗れない列車になってしまったのだ,寝台特急は。時代の流れに流されていくものを,誰もどうすることもできやしない。
できることは一つだけ。感謝して,精一杯見送ることだけだ。
予め決めていた場所をキープして到着を待ったが,待てども待てども「はやぶさ」はやって来ない。諦めて駅員のいるホームまで確認に行くと,人身事故の影響で1時間遅れと。しばし呆然。
やたら寒い日で身体も冷え切っていたので暖かい飲み物をとって撮影場所へ戻ると,さっきまで向かいのホームにいた人たちに場所をとられている…。仲間のいない弱さを感じつつ,予定していた場所の後ろでの撮影となった。
回送時の動画の方も,発車のタイミングがわからず警笛を入れ損なうし,ちょっとさんざん。
改札横に,3日前にはなかったカウントダウンの「はやぶさ」撮影ブースが作られていた。あと21日,3週間だ。
もう見ることのできなくなる電光掲示板の「はやぶさ」の文字を感慨深く眺め,3番ホームで駅入りを待った。撮影が目的で来ているような人はあまり見掛けず,たまに電光掲示板の文字をカメラに納めていく人は,ほとんどみんな乗客のようだった。
しかし,この日も「はやぶさ」は下り線が遅れてきたとかで,上りも10分近く遅い出発。そして,何と,警笛を鳴らさずに発車…! こんなことってあり(^^;!? こんなに度々遅れていていいの(^^;?!
「今度こそ警笛を残す動画を撮らねば」という気持ちで赴いたこの日。あと3日の文字に「いよいよ」の気持ちが強くなる。
この日は待つこともなく少し早めに到着した「はやぶさ」は,長々とホームに止まっていた。さすがに撮影をする人の姿はぐっと増え,出発まぎわまで運転席を見学する人などが絶えなかった。
出発の時刻になると,別れを惜しむ人たちが見守る中,「はやぶさ」は何度も警笛を残して出て行った。
改札を入ったところの「寝台特急『はやぶさ』号 さよなら写真展 〜51年間の歴史〜」の写真は前回来たときと微妙に異なっている。その後ろに「寝台特急『はやぶさ』号 〜思い出の手紙集〜」のコーナーもできていた。
写真を撮り終えて改札を出ると,切符売り場で5000部限定で発売されていた「はやぶさ記念乗車券」を見つけて購入。3月1日から発売されていたのだが,しおりタイプは完売していたものの,未だはがきタイプが残っていた! シリアルナンバーは4025,おそらくこの日のうちに売り切れたことだろう。