星座入門 かに座

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かに座のデータ
学名:Cancer
(カンケール)
略符:Cnc
英語名:the Crab
設定者:プトレマイオス
(トレミー)
20時南中:03月26日
かに座の絵入り星図

 かに座 は黄道十二星座の第四番目にあたる星座で,その存在も古代の昔から知られています。けれど,一番明るい星も4等星で,現代の都市部の明るい空の下では,蟹の姿を想像するのは困難です。
 晩冬から初春の頃の宵の口に,暗い星まで見える空の下で,ふたご座しし座 の中間あたりに,暗い4個の星が作るいびつな四角形と,その中にボーッと光る雲のようなものを探してください。4個の星が確認できるような空の下なら,必ずこのボーッとした雲も見えるはずです。ボーッとした雲を囲む四角形は蟹の甲羅の部分に相当し,ここから南北に蟹の脚(αβι)が伸びています。
 下の星図の白い+印は,かに座 が南中したときの天頂の位置で,α・β・δ・ιが4等星,残りの星は5等星。黄道は,ふたご座 δ→かに座 δ→しし座 レグルスのあたりを通っています。

 かに座 の目印となるボーッとした天体は,M44(メシエ44)又はプレセペ星団と呼ばれる散開星団で,100個くらいの若い星が集まってできています。プレセペ星団は古代から知られる数少ない星団の一つで,古代の世界ではこの星団は晴れの日のみ見ることができ,見えないのは嵐の前兆とされ,天気予報に利用されていたといいます。
 プレセペという名はラテン語で“飼い葉桶”という意味で,これは,プレセペ星団を飼い葉桶に,その脇で南北に並ぶδとγを飼い葉桶から餌を食べる2匹のロバに見立てた名前です。γには“北の小さなロバ”,δには“南の小さなロバ”という名前がついています。

 肉眼でもよくわかるプレセペ星団は,英語ではビーハイヴ(蜂の巣),中国では積尺気(ししき=死体から立ち上る気)と呼ばれ,古代ギリシアのプラトンの一派は人間の霊魂が天上と地上を往き来するための出入り口と見ていたそうです。

 なお,かに座 の学名となっているラテン語名 Cancer は英語で癌(ガン)のことですが,これは古来から知られていたガン,乳ガンにかかって固くなった皮膚を,蟹の甲羅に似ていると考えたことが由来になっています。

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 ギリシア神話によると,かに座 は,勇者ヘラクレス(ヘルクレス座 )が,レルナの沼で毒気を吐いて人々を悩ませていた9つ頭のヒドラ(うみへび座 )を退治した(ヘラクレスの十二功業の第2番目)時,ヘラクレスを憎む女神ヘラがヒドラに加勢させるために送った(別の説ではヒドラを助けたくて自ら沼の中から這い出してきた)巨大な蟹の姿だとされています。
 蟹は果敢にもヘラクレスの足に噛みついたのでしたが,あっさりと踏み殺され,哀れに思った女神が,「憎らしいヘラクレスを苦しめた感心な者たち」ということで,ヒドラと共に天に上げたのだといいます。
 そういうわけで,星座の中でも蟹(かに座 )とヒドラ(うみへび座 )は仲良く一緒にいるのです。

 また,飼い葉桶のプレセペ星団と,そこから餌を食べている2匹のロバ,γとδには別の伝説が知られています。
 2匹のロバは,鍛冶の神ヘファイストスと豊穣とぶどう酒の神ディオニュソスのロバでしたが,オリュンポスの神々が巨神族と闘った際,鳴き声で敵を驚かせ敗走させたので,その功績で天に上げられ,銀の飼い葉桶から餌を食べているのだそうです。
 別の神話では,ゼウスの神殿へ向かう途中のディオニュソスが沼地を渡れず困っていたところ,2匹のロバが背に乗せて沼を渡してくれ,ロバたちは,その功績で天にあげられたのだともいいます。

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 かに座 の星の名前については星のるつぼをご覧ください。

かに座周辺の星図

こちらの星図でかに座 を見つけてみましょう。
かに座周辺の星図,星座線無



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