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ギリシア神話に登場する最高の女神で,結婚と出産を司る既婚女性の守護神。ヘラという名は“貴婦人”という意。
ローマ神話ではユノ(Juno)に相当する。
ティタン神(巨人)族クロノスとレアの娘。
弟でありギリシア神話の最高神であるゼウスの妻で,ゼウスとの間に火と鍛冶の神ヘファイストス,軍神アレス,お産の女神エイレイテュイア,青春の女神ヘーベーを生んだ。
最高神ゼウスの妻であり最高の女神であった彼女であるが,ゼウスがニンフや人間の女性を相手に浮気を重ねたため嫉妬に苦しみ,おおぐま座とこぐま座になったニンフのカリストと子のアルカスをはじめ,セメレと子のディオニュソス,アルクメネと子のヘラクレスなど多くの母子がヘラの怒りによって迫害を受けた。
愛と美の女神アフロディーテ,知と戦いの女神アテナと最も美しい女神の座を競ったが,審判のトロイア王子バリスがアフロディーテに買収され敗れてしまう。このためこれが遠因となって起こったトロイア戦争では,トロイア軍に敵対した。
ヘラは,ペルセウスとアンドロメダの孫娘アルクメーネがゼウスとの間に生んだヘルクレスを憎み,ヘルクレスが生まれる前から策略をめぐらしてヘルクレスを亡き者にしようとしていた。
しかし,ゼウスの命を受けた伝令神ヘルメスが,深夜ヘルクレスを揺りかごから連れ出し,ぐっすり眠るヘラの胸元へ置いた。ヘルクレスはヘラの胸から出る神々のミルクを力一杯吸ったが,あまりに強く吸ったためヘラは痛がって目を覚まし,痛みと憎しみのあまりヘルクレスを突き飛ばした。このときヘラの胸から勢い良く流れ出た神々のミルクが天に流れ出し,天の川になったと伝えられている。
小惑星(3)ジュノーは,1804年に3番目の小惑星として発見され,ヘラに相当するローマ神話の女神ユノにちなんで名付けられた。衝の時の平均等級は 9.7等。
ギリシア先住民族の有力な女神だったが,後にギリシアに侵入した人々が,彼らの主神ゼウスの正妻と位置づけた。ペロポネソス半島のアルゴスとイオニア地方のサモス島ではヘラが町の守護神とされ,崇拝されていた。これらの土地では,ゼウスとヘラの結婚を記念する聖婚の儀式(hieros gamos)が行われたという。
古代ローマ人は,自らの最高の女神ユノをヘラと同一しており,ユノも女性の結婚生活を司る女神であった。ユノは多くの女性に崇拝を集め,やがてレギナ:Regina(女王)の称号を得,最高神ユピテル,女神ミネルウァと共にローマ市カピトリウム丘のユピテル神殿に祀られる大女神となっていった。
結婚・出産の女神としてのユノは,ドミドゥカ:Domiduca(花嫁を花婿の家へ導く婦人),プロヌバ:Pronuba(新婦を新婚部屋へ導く婦人),ルキナ:Lucina(子どもを光明の中へ出す女)などの名を持つ。6月が結婚の季節とされたことから,6月はユノの名前を冠してユニウス(Junius)と呼ばれ,多くのヨーロッパ語の6月の名前の語源となった。
旧暦の元日に当たる3月1日のマトロナリア(Matronalia)祭はユノの大祭で,この日女性たちは奴隷に食事を与え男性からの贈物を受けた。また,女性が自分の誕生日に,ユノ・ナタリス:JunoNatalis(誕生日のユノ)へ犠牲を捧げる習慣もあった。
英語の6月名“June”は,ローマ神話でヘラに対応するユノ(ジュノー)が由来になっており,「Junoに捧げる月」という意味。