※転載・複製は,一切お断り致します。 |
|
ふたご座 は黄道十二星座の第三番目に位置し,ふたご座 からおうし座にかけては黄道が赤道に対して最も北に離れていることから,ふたご座 は日本(北半球)から見て最も高い位置を通り,最も長時間見えている黄道の星座です。
下の星図の白い+印はふたご座 が南中した時の東京における天頂の位置で,ふたご座 の二つの輝星カストルとポルックスは,ほぼ頭の真上を通っていくように見えます。
双子の頭になっているカストルとポルックスは,カストルが2等星,ポルックスが1等星に分類されていますが,実際の空を見上げるとカストルの方がほんの少し暗いだけで,同じように明るい二つの星が如何にも双子らしく仲良く並んでおり,よく目に留まります。この二つの星を探し出せば,そこから南西に伸びる2本の星列が双子の身体ですから,ふたご座 は,見つけやすくイメージしやすい星座の一つです。
ポルックスとカストルかどうか自信が持てない時は,三つ星を頼りにオリオン座 を探し,ベテルギウスと,隣のこいぬ座 のプロキオンを確認しましょう。ベテルギウスからプロキオンに向かって視線を移し,プロキオンを直角に北へ曲がったところに輝く星がポルックスです。
ポルックスとカストルは,よくよく明るさをよく比べてみるとポルックスの方が少しだけ明るいことがわかりますが,分からないときのために,「カペラ(Capella)に近い方がカストル(Castor),プロキオン(Procyon)に近い方がポルックス(Pollux)」,CとC,PとPが近いのだと覚えておくと便利です。
***
ふたご座 は,ギリシア神話では,白鳥(はくちょう座 )に変身した大神ゼウスとスパルタ王テュンダレオスの妃レダの間に生まれた兄弟カストルとポリュデウケスの姿であるとされています。ポリュデウケスのラテン語名がポルックスです。
ゼウスが白鳥の姿だったためレダは2つの卵を生み,そのうち一つから生まれたのが双子の男の子カストルとポリュデウケス,もう一つから生まれたのが双子の女の子ヘレネとクリュタイメストラで,ポルックスとヘレネはゼウスの神性を受け継ぎ不死身でしたが,カストルとクリュタイメストラは死すべき運命の人間レダの子として生まれました。
(カストルとクリュタイメストラはレダの夫テュンダレオスの子であったため人間として生まれたのだとも言われます。このように神話には通常幾つものバージョンが存在します。)
カストルとポリュデウケスはとても仲のよい兄弟で,カストルは拳闘の,ポリュデウケスは乗馬の名手となり,共に金毛の羊(おひつじ座 )を奪いに行くアルゴ船の冒険にも参加して手柄を立てました。
数々の武勇伝に名を残した二人でしたが,従兄弟のイダスとリュンケウス兄弟と闘った際カストルが射殺され,悲しみに暮れたポリュデウケスは父親であるゼウスに自分の不死身をカストルと分かち合い,一年の半分を天上で半分を地下(冥界)で過ごさせてくれるよう頼んだのでした。
こうして二人は星座になったのでしたが,この物語は,北半球中緯度地方で見たふたご座 が,一年のあるいは一日の半分のあいだ地平線上に姿を見せ,半分は地平線下に沈んでいることの説明にもなっています。
なお,カストルとポルックスは船乗りの守り神として崇められていますが,これはアルゴ船の航海で大嵐に遭った際,ハーブの名手オルフェウスがハーブを弾くと波が治まり,同時にカストルとポリュデウケスの上に二つの星が現れたという伝説に基づいています。
このため,嵐の夜に船の帆柱の先に現れる放電現象(セント・エルモの火)は双子の化身とされ,中世の船人たちは嵐が来るとこれを待ち望んだのでした。
***
ふたご座 のお話については星の停車場もご参照ください。
ふたご座 の星の名前については星のるつぼをご覧ください。