真っ赤なロード・スターの時代
コツコツと,飽きもせず音楽環境刷新中。近所のショップに限界を感じ,最近は少し遠くまで足を伸ばし始めた。おそらく簡単に集められると思っていたのに意外に集まらないのが,松田聖子の初期のアルバムだ。妹が彼女のファンだったので,必然的に私もテープを何本も持つことになり,よく聞いた。彼女の曲中に住むのは,いつも私の対極のような女の子で,私には考えられないようなものに憧れ,呟き,主張する。無い物ねだりの物珍しさ? 時に自分に疲れると,この歌の子のように生きられたらと思いながら聞いたものだった。一番のお気に入りは,大ヒット曲〈Rock’n Rouge〉を収録した9thアルバム《Tinker Bell》。当時の何もかもを思い出せそうな1枚だ。
幻の名盤
”アイドル”というと,「歌は下手,ルックスがとりえ」のようなイメージが浮かんでしまうが,甘く華やかな声を存分に活かした聖子ちゃんは天性の歌姫だろう。昔のアイドル,みんなそれなりに歌が上手だったし,よく聞いた。明菜もキョンキョンもピンク・レディも。そして,明けても暮れても聞いていたのがキャンディーズ。春風のようなハーモニーを折りなす眩しいお姉さんたち,だった。手元には,頑張って買ったLPが2枚。2006年3月21日に亡くなった宮川泰氏の,恋のバカンス,ふりむかないで,愛のフィナーレ等々をカバーする《キャンディ・レーベル》に,アメリカ・オールディーズを取り入れた《なみだの季節》。どちらも私の名盤なのだが,LPを聞く手立てがない今となっては幻だ。
乙女座宮
中森明菜さんといえば,ごく初期の楽曲〈銀河伝説〉で,獅子座の占いを読んで戸惑う乙女座の女の子が描かれていた。もちろん思い出すのは山口百恵〈乙女座宮〉。明菜はポスト百恵を意識してプロデュースされたと聞いたことがあるが,本当? まぁそれはともかく,女の子の象徴は乙女座で,男の子の象徴は獅子座なのだろうかと,〈乙女座宮〉の時代から疑問だった。乙女座ではない私としては何となく聞き捨てならない(?)し,隣の星座同士ってそもそも相性いまいちだ。おかげで,せっかく素敵な曲名なのに感情移入できなかった。あと,星座名はひらがなとカタカナなのにと表記も気になったのだが,占いでは違うのね? いや,占いなら処女宮と獅子宮の筈?
今は昔の星浪漫
ま,詩に正確な専門用語を求めるなんて無粋というものだ。ウルトラマンは散光星雲M78出身でかまわないし,この場合,おとめ座でも処女宮でもない乙女座宮こそ夢を育む表現なのだろう。陰イオンでもアニオンでもないマイナスイオン(あり得ね!)とはわけが違う。チェックを入れて文句をつけつつ,ひとたび「星」と聞けば反応せずにいられないのが子供の頃の私だった。乙女座宮はどちらにしろ好みの歌ではなかったが,ラジオでかかれば聞かないといけないような気がしていたし,八神純子〈ポーラー・スター〉は名曲だと思っていた。中原理恵とキャンディーズが歌った〈銀河系まで飛んでいけ〉という曲も,「地球は銀河系を飛んでいますが?」とか言いつつ実は気に入っていた。
空へ帰ろう
星が出てくる歌。岩崎宏美さんも,明菜ちゃんとは別物の〈銀河伝説〉を歌っていたっけ。映画『ヤマトよ永遠に』の主題歌で,星の輝きのようなイントロが印象的。彼女の透き通った声が宇宙空間の広がりを想わせた。だが,私のベストは,たぶん久保田早紀〈星空の少年〉。当時の私が星空を見上げるときの気持ちをそのまま歌ったような曲だったし,これが収録された《夢がたり》は秀作揃いで,テープが伸びるまで聞き込んだ。LPで発売されたアルバムがCDで復刻し始めると,最初に私はこれを求めた。どこまでも遠い,遠い空,雲に星。彼方を見つめ続ける心を旅へと誘う,色褪せない1枚。いくら年を重ねても,魂は彷徨い,一歩を踏み出し続けるのだと思う1枚だ。
(2006-03-26~30)