麒麟の頃

  十月と共に現れ、十月と共に去ってゆく。
  嫌われ疎まれそれでも荒れ地を占拠。
  大地を黄色く染めるセイタカアワダチソウ。
  たおやかな黄金の乙女※、
  アキノキリンソウなど彼らの敵ではない。
  だけどその旺盛さが悲しい。
  広がって広がって、そしていつか帰れると?
  海の向こうの北米へ?
  十月の風に揺れる彼らがいとおしい。

  そして昔読んだコミックを思い出す。
  清原なつの 『胸さわぎの草むら』
  もう一度読みたい。読みたいな。

背高秋の麒麟草


 アキノキリンソウは、別名アワダチソウ。セイタカアワダチソウの名の源となった植物だ。その学名 “Solidago virga-aurea” の種小名に含まれる “virga” は、おとめ座の英名 “Virgo” や処女 “virgine” などと同じ派生。”aurea” は金の元素記号が “Au” であることを思い出せばわかるように、”黄金”を意味している。つまりアキノキリンソウは”黄金の乙女”というロマンティックな学名を持っているのだ。ついでに言うと、属名の “Solidago” は “傷を完全に治す”とか”よい薬である” という意味。キク科には薬草が多く、アキノキリンソウも全草にサポニンを含み、利尿や胃の薬などに用いられる。
 一方セイタカアワダチソウはセイタカアキノキリンソウと呼ばれることもあり、正にアキノキリンソウの背高版で、学名 “Solidago altissima” からもそれが窺える。属名 “Solidago” はアキノキリンソウと共通しており、種小名の “altissima” は、”最も高い” という意味だ。キリンの名はセイタカアワダチソウにこそ相応しいのかもしれない。