小さかった頃。
いつも東京の従姉から届くお洒落なお下がりの服が楽しみだった。
今年はシンデレラみたいなあの服,着られるかな?
わくわくしながら試着する。
あぁだめだ。まだ大きすぎる!
今年はどうかな?
まだちょっと大きいけど着ちゃおう!
ぶかぶかの服が持つ余白は未来への夢。
ピッタリ着られる日は大人へ一歩近づく日。
余白は幾らでも楽しみに変わっていった幼い日。
未来が未知なのは今でも同じ筈なのに,
あの頃のように何もかもを新鮮に感じるのは難しい。
あの頃と変わらない空を見上げ,
あの頃のようにワクワクしない自分を悲しく思う。
その代わりに得たものは,
昔持っていたそんな心を思い出し感傷に浸る術。
10月に入るといつの間にか消えてしまう蝉のように,
消えてから気がついて,
ちょっともの悲しい気持ちで懐かしむ。