十七歳の秋

 文化祭が終わり試験が終わり
 夕暮れが晩秋のオレンジ色に染まる頃
 早い日没と木枯らしを愛する私は独りだった
 いつも独りで足早に歩いた

 澄んだ空に傾く夏の大三角を見上げ校門を出る
 向かう先は小さな本屋
 本の背表紙を眺めて過ごす寄り道の小一時間
 ほんのひとときの現実逃避

 店内に流れるFMラジオは甲斐バンドの《安奈》
 手に取る本はハヤカワ文庫の宇宙英雄ローダン・シリーズ
 あるいはデビューしたての村上春樹
 あるいはブルーバックスの物理の本

 誰かが過ごしたかつての時間
 私が過ごす昨日と今日と闇の向こうの遙かな未来
 ただ愛おしく哀しく寂しくて
 黄昏と木枯らしに凍えていれば慰められた

凍てつく黄昏