星座入門 おおいぬ座

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おおいぬ座のデータ
学名:Canis Major
(カニス・マヨール)
略符:CMa
英語名:the Big Dog
the Great Dog
設定者:プトレマイオス
(トレミー)
20時南中:02月26日
おおいぬ座の絵入り星図

 凍てつくような厳寒期の夜,南の夜空を仰ぎ見て,まず目にとまる輝星。それがおおいぬ座 のα星,シリウスです。シリウスは,太陽・月・惑星を除くと全天で最も明るい星で,その燦々たる青白い輝きは,明るく美しく均整のとれたオリオン座 の星々でさえ脇役にしてしまうほど強烈です。
 もし,見つけた星がシリウスかどうか自信がないときは,オリオンの三つ星を使って確認してみましょう。三つ星を結んだ線を東へ伸ばしたところに輝く星が,シリウスです。
 また,シリウスは,オリオンの肩に輝くベテルギウス,こいぬ座 のプロキオンと結んで,“冬の大三角”と呼ばれる美しい正三角形を作っています。

 まるでおおいぬ座 を代表しているような印象を与える明るいシリウスですが,シリウスの別名は Dog Star(犬の星)で,シリウスが犬の星と呼ばれたのは,少なくとも紀元前9世紀のホメロスの著作物にまでさかのぼることができ,おおいぬ座 の成立より古いとされています。つまり,犬の星(シリウス)の周辺に,おおいぬ座 が作られたのです。
 しかし,おおいぬ座 自体もプトレマイオス以前の古い48星座で,数ある星座の中でも形の良い星座の一つです。星を繋げて犬の形を想像するのは難しくありませんので,シリウスを見つけたら,残りの星を探してみてください。

 シリウスは,三角形に描かれる大犬の鼻先に相当し,前足の先と尾の部分に2等星が輝いています。
 尾に輝くηδεの3個の星は,カノープス(りゅうこつ座 )を探すときの目印として役立ちますから,ぜひ覚えておきましょう。シリウスが真南に来た頃,3個の星が作る角度を南に向かって3等分し,西側の線を南へ延ばします。関東以西の開けた場所なら,地平線すれすれのあたりに明るい星が見つかるはずです。ほんの短い間だけ見えるカノープスは,一目見ると寿命が延びるめでたい星だとされています。

 ところで,シリウスは全天で一番明るい恒星ですが,おおいぬ座 には全天で一番明るい2等星もあります。犬のお尻に輝くε星アダラです。
 アダラは,『星百科大事典』(R.バーナム著)では「全天で22番目に明るい星で,実際には1等星のリストに入れるべきであろう」と書かれていますし,『エール輝星カタログ3版』でも1.5等とされています。
 1等星になりそこなった不遇の星アダラは,シリウスが放つ-1.46等の輝きの陰に押され,今夜も控え目に光っています。

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 おおいぬ座 やシリウスには多くの神話や伝説が知られていますので,主なものをかいつまんでご紹介しておきましょう。

 一番ポピュラーなものは,大犬と小犬はオリオンが連れた2匹の猟犬で,大犬は,オリオンの足元にうずくまる兎(うさぎ座 )を狙っているというものです。

 別の神話では,大犬と小犬は,主人のアクタイオンをかみ殺した猟犬たちであるとされています。狩りの名手アクタイオンは猟の途中で女神アルテミスの水浴びに出くわし,女神の怒りに触れて鹿に変えられてしまいますが,突然現れた鹿に驚いた50匹の猟犬たちは,主人の変わり果てた姿とも知らず鹿になったアクタイオンを食い殺すのです。
 この中の1匹,猛犬メランポスがこいぬ座 になったのだと言われ,この物語はどちらかといえばこいぬ座 と結びつけられることが多いようです。

 同じく主にこいぬ座 と結びつけられますが,おおいぬ座 の物語として語られることの多い話として,殺された主人イカリオスの墓前で飢え死にしてしまった忠犬メーラだったという伝説もあります。こちらはこいぬ座 の項でご紹介しましょう。

 また,大犬は,アテネ王エレクテウスの娘プロクリスの犬だったとも言われます。
 プロクリスが所有していた,どんな獲物も捕らえる足の速い犬ラエラプスと,狙った的に必ず当たる矢は,狩りの女神アルテミスが彼女に与えたとする説と,ゼウスがエウロパに与えたもので,エウロパの息子でクレタ島の王でもあるミノスが彼女に譲ったのだとする説があります。
 プロクリスは,しかし,彼女をヘビと見間違えた夫のセファラスが放った“必ず当たる矢”によって命を落としてしまいます。プロクリス亡きあと,犬と矢を手に入れたセファラスは,あるとき,アテネ郊外に出没し人々を悩ませていた狂暴なキツネを退治するためにラエラプスを放ちました。ところが,このキツネは,決して捕まることのない俊足のキツネ。片や狙った獲物は必ず捕まえる俊足の犬ラエラプスであったため,キツネと犬の追いかけっこは堂々巡りになってしまいます。
 セファラスは矢を使おうとしますが,この素晴らしい犬とキツネを惜しんだゼウスが,見かねて彼等を石に変え,ラエラプスは,キツネがいない天に上げられたのだということです。

 無理なく犬の形を作ることができるおおいぬ座 ですが,古代バビロニアでは アルゴ座 (とも座・ほ座・らしんばん座・りゅうこつ座)の一部でした。今日のとも座 を「星の弓」としていた彼等は,おおいぬ座 を弓につがえた矢,シリウスを矢尻に見立てていたそうです。

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 Dog Star シリウスについては,古代エジプトで“ナイルの星”“イシスの星”と呼ばれ,ナイル川の氾濫を知らせる重要な星として崇拝されていたことがよく知られています。約5000年昔(紀元前3000年頃)のエジプトでは,シリウスが夜明け直前に東の地平線から上る夏至の頃(6月25日頃)を1年が始まる日であると決めていたほどです。
 これには大きな理由がありました。

 エジプトでは,毎年その頃からナイル川が増水を始め,氾濫を起こしていたのです。氾濫を事前に知らせる星がシリウスだったというわけです。
 ただし,この氾濫は不吉なものではありませんでした。ナイル川は,上流から運んできた肥沃な土を川の両岸に残し,エジプトの農業を,そして生活の全ての潤していたのです。

 冬の輝くシリウスですが,このように夏を告げる星であり,暑さを告げる星とされてきたのは不思議です。

 日本では丑の日にウナギを食べたりする夏の土用,これを「Dog days」と英訳することがありますが,この盛夏を表す Dog days という英単語も,実は Dog Star,即ちシリウスが関係しています。
 7月〜8月の暑い時期,Dog Star が太陽と共に出没するため,暑い太陽とギラギラ輝くシリウスが重なって暑さをもたらすというのです。「Dog Starは太陽の炎に向かって吠え,太陽の暑さを2倍にする」そうです。

 もちろん,8.7光年の彼方から届くシリウスの光が暑さをもたらすなどということはありません。ですが,シリウス=焼き焦がすもの,という名に相応しい輝きを持つこの星が,偶然にも夏至と共に地上に顔を出し,そんな伝説を生んだと思えば,とても興味深いではありませんか?

 なお,シリウスの古代の呼び方を調べると,カルデア人はカク・シシヤ(指導する犬星),バビロンではカッカブ・リク・ク(犬星),アッカドではムル・リク・ウド(太陽の犬星)などと,犬という呼び方が随分普及していたことがわかります。
 古代中国でもシリウスは天狼星と呼ばれ,犬の星だったのですから不思議です。

 シリウスが赤かったと書かれた古代の文献については赤いシリウスを,また,シリウス・カノープス・プロキオンのアラビア伝説については冬の三人姉妹をご覧下さい。

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 おおいぬ座 の星の名前については星のるつぼを,シリウスについてはシリウスの和名焼きこがすもの をご覧下さい。

おおいぬ座周辺の星図

こちらの星図でおおいぬ座 を見つけてみましょう。
おおいぬ座周辺の星図,星座線無



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