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まずオリオン座 ありき…そう言えるほど,誰もが聞いたことのある,そして見事に均整がとれた,美しく雄大な星座の中の星座。それがオリオン座 です。
均等に並んだ三つ星と,それを取り囲む4個の明るい星という特徴ある星の並びは,冬の南天を一目みただけで目を惹きつけます。古今東西の芸術家たちが好んで題材に選んだことも道理でしょう。
古代の人たちも早くからこの星列に注目し,多くの民族が,腰に三つの星のベルトか飾り帯を巻いた偉大な英雄や神の姿を描いておりました。古代エジプトでは光の神オシリス,バビロニアではメロダック(メロダクバラダン)王,フェニキアでは強き者,スカンジナビア(古代ノルウェー)では巨人オルワンディル,古代アイルランドではカオマイ(武装した王)などです。オリオンという名の起源も,勇士を意味するギリシア語オーアリオンではないかと言われています。
オリオン座 を探すのに,特別なテクニックは必要ありません。冬空の南天に仲良く並んだ三つ星を探し,その上下に並ぶ4個の星を,大胆に繋いでみてください。
大きさがわかりにくい時は,そのあたりで一番明るく輝いている青白い星が-1.5等の明るさを誇るおおいぬ座 のシリウスですから,シリウスと正三角形を描いている2個の1等星,こいぬ座 のプロキオンとオリオン座 のα星ベテルギウスを見つけ(冬の大三角),この三角形に収まるくらいの大きさを想像して星を探してみてください。
オリオン座 のことを日本では鼓星(つづみぼし)などと呼ぶ地方がありましたが,なるほど,鼓を立てた形にそっくりですね。オリオン座 には,この他にも多くの和名が,また三つ星にも多くの和名が知られています。
オリオン座 は,夏の終わりの丑三つ時には東の空からのぼってきます。
斜めに並んだ三つ星の北西の星は天の赤道の上にあって,きっちり真東から昇って真西へ沈みますから,覚えておくと,方角を知るのに重宝します。
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ギリシア神話では,オリオン座 は海神ポセイドンと女人の国アマゾンの女王エウリュアレーの間に生まれた狩人で,ポセイドンから水の上を歩く能力を授かっていました。
狩人オリオンを巡る神話には幾つものバージョンがありますが,よく知られる神話の一つについて,大筋を追ってみましょう。
オリオンは,まずキオス島の王オイノピオンの娘メローペに恋をします。しかし,王はなかなか結婚を許さず,待ちきれなくなったオリオンは酒に酔った勢いで強引にメローペにせまり,怒ったオイノピオンがディオニュソスに頼んで彼の目を潰して海へ捨ててしまいます。
盲目になったオリオンは,東の国で昇る朝日の光を目に受ければ目が見えるようになると言うお告げを受けて,鍛冶の神ヘファイストスが打つ槌の音を頼りに東のレムノス島へ行き,ヘファイストスの助けによって視力を回復しました。
復讐すべくキオス島へ引き返したオリオンでしたが,復讐を許さぬヘファイストスによってオイノピオンは逃がされてしまい,どうすることもできない彼は,やむなくクレタ島へ渡り,そこで月と狩りの女神アルテミスに仕え始めます。
やがてアルテミスに愛されるようになったオリオンでしたが,それを快く思わないアルテミスの兄アポロンは,水面から頭を出して歩くオリオンに金色の光を当てて指をさし,「あの光るものを弓で打ち落としてみよ」と言って,アルテミス自らにオリオンを殺させてしまいます。
真実を知って嘆き悲しんだアルテミスが,ゼウスに頼んで,彼女が銀の馬車で通っていく空の上にオリオンをあげてもらったのだということです。
別の神話では,アルテミスが愛するオリオンを暁の女神オーロラも愛するようになり,嫉妬に囚われたアルテミスは,オーロラのそばにいさせるくらいならと自らオリオンを弓で射て殺してしまった,あるいは,オリオンの目を射て彼を盲目にしてしまったともいいます。
立派な身体を持つオリオン座 の頭の星が暗いのは,彼の失われた視力を物語っているのだそうです。
星座絵のオリオンが視線を向ける先にはおうし座 のすばる(プレアデス星団)がありますが,すばるの星の一つにメローペの名がつけられており,オリオンは天上でもメローペを追いかけているのだといいます。
また,月(アルテミス)が通る白道はオリオン座 のすぐ北を通っており,オリオン座の上に輝く月は,アルテミスの悲しみを物語っています。
夏の星座さそり座 とオリオンのお話については,さそり座 のページでご紹介しています。
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オリオン座 のお話については星の停車場もご参照ください。
また,オリオン座 の星の名前については星のるつぼをご覧ください。