街の風景が切なくて

今住んでいる街はすき。

どこまでも続く高層ビルと谷間を歩く人の群れ、車の波。
その脈動感に過去生きてきたひとたちの魂の記憶が重なって、
不思議なオーラが満ちあふれている。
遺産を引き継ぎつつも常に未来へ変化する力強さ。
誰が何と言おうと、東京は魅力溢れる大都会だ。
大好き。

でも、1000km離れた故郷の街が、いつもたまらなく恋しい。
暑いし寒いし人は閉鎖的だし、私には優しくない場所だった。
生きにくい街だった。
だけど、どんな場所もあそこに取って代わることはできない。
どうしてこんなに遠いのだろう。
どうして簡単に行けないのだろう。
見たいのに見たいのに、あの街の風景が。

日々変化する街並みの中、故郷は私の過去となり、
私は故郷の過去となる。
私はたぶん、これからずっとこの都会の海で生きて行くのだ。
室生犀星の「小景異情 その二」を心に秘めながら。

終着駅