春は迷い

春は迷い

せめて風になれればと。

春休みの肌寒い宵を最後に君と歩いた日
埃の匂いに紛れた微かな春の気配を
たぶん死ぬまで忘れないと思った

今は時の果てで道標となったあの宵に
二度と聞くことのない声の気配をさがす
空より遠ざかった大切だったものたちの行方

青かった春の亡霊は未だ憚ることなく僕を縛り
怒濤の咆哮で僕をなぎ倒す
風になって消えよとあの日のように