運転免許をとるために教習所で路上教習に出始めた頃,
こんなに標識ばかりでは,標識を見るだけで事故を起こしそうだと思った。
そしていつの間にか,魔法がかかっていた。
標識を適度に頭脳から追い払い,見えなくする魔法。
人生の道のりも同じだ。
見えた辛いものや大変なものに一々気を取られていたら崩壊する。
心が,精神が,悲鳴をあげて崩れ去る。
適度に心を傷まなくするフィルターが必要だ。
眼鏡をかけよう。見えなくするフィルターを入れた保護眼鏡。
脳を騙すのは意外とたやすい。
いつの間にか本当に見えなくなった。
でも見たいときにも見えなくなった。
今ではどんな眼鏡をかけたら見えるのかもわからない。
でもまぁ見えなくてもいい,見えてた記憶は残ってる。
代わりに今は他のものが見えている。
見えているはず。
諦めなのか進歩なのかわからない。でもどうでもいい。
立ち止まることは許されない。
正しい眼鏡を捜してる暇はないし,そもそも正しいものなんて存在しない。
そうして私はいつまでも方向音痴。
いつも究極超人あ~る君のように道に迷っている。
もしあのとき迷わなかったらあそこの誰かに会えただろうか。