ベリーの最晩年の頃のこと。
ある日の午後,私は床に座り込んで足の爪を切っていた。突然伸びた爪が気になったのだ。
パチパチと爪を切っていると,今までケージの中で寛いでいたベリーがおもむろにケージから出てきた。そして,私の前に飛んできて,爪を切る様子を物珍しげにしげしげと見物し始めた。ベリーは私が爪を切り終わるまで,ずっと前にいて爪切りの様子眺めていたのだった。
何か面白そうなことをやっていると思ったのだろうか?
人間が足の爪を切るというのが珍しかったのだろうか?
ベリーはとても物見高い子だった。
それは,彼が初めて我が家にやってきた日からのことだった。
ベリーのケージを暖かく覆うために段ボールの工作をしていると,ベリーは今うちに来たばかりでまだ飛んだこともない雛鳥だったのに,近くへ来て工作を見たがった。ベリーは保温のために入れられていた水槽から出ようと必死になっていて,出してあげると近くでしばらく熱心に工作の様子を眺めていた。
まだ挿し餌を食べる雛鳥だったので,しばらくすると疲れて眠ってしまったが。
こんな風に,ベリーはうちに来た初日の最初から,人見知りをすることもなく,恐れることもなく,知らない作業や知らない物を見たがる子だった。
事前に読んだ本には「オカメインコは臆病なのでお迎えから3日くらいはそっとしておきましょう」と書いてあったのに,ベリーの方から色々見たがって近づいてくるのだから面食らったものだ。
ベリーがそんな子だと分かったので,幼い時から私はベリーに何でも見せた。
何か買ってくると,まずベリーの前に行って「ベリー,これは○○よー」「これが○○なんだよー」「これ○○って言うんだよー」と一つ一つベリーの前に掲げて説明した。
ベリーはどこまで分かっていたのか知らないが,兎に角毎回,とても熱心に私の話を聞いて,私が見せる物も,首を伸ばし見る角度を変えて一生懸命見てくれた。
何年もそうしているうちに,ベリーは新しくうちに来たものは全て見るのが当然だと思ったようだった。見るのは権利だと言わんばかりに,見ることを要求するようになった。
宅配便が届けばベリーの前で箱を開かないとギャーギャー騒がれたし,買ってきた物をベリーに見せずにいると,これまたギャーギャーと文句を言われた。買ってきたお菓子の種類までベリーは一々覚えていて,ベリーに見せたことがない塩昆布を見せずに食べていて怒られたこともある。
私がベリーに見せていないことに気づかずなかなか見せてもらえないと,ベリーは地団駄を踏んで,あるいはケージの前面に蝉のように貼り付いて,早く見せろと騒ぎ立てた。


買ってきた新しい物と同じように,彼は人間の作業も常につぶさに観察していた。
ごそごそと模様替えをしていると,落ち着いた頃にベリーはやってきて,隅から隅まで歩いて覗いてチェックした。
新しいPCを組み立てた時など,組み立ての途中でPCケースに首を突っ込んで眺めていた。面白いの!?

きっと爪切りも,PC組み立てや模様替えみたいな面白そうな作業に見えたのだろう。
午後の静かなひととき,爪を切る私の前にベリー。
何と幸せな時間だったのだろう。
今となっては思い出すしかできない風景をChatGPTさんに再現してもらった。


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