2003年11月1日 土曜日。
ペットショップにて
午前11時過ぎにペットショップへ到着した。雛鳥売り場の飼育水槽の中のベリーは相変わらず毛繕いに忙しそうだ。
店の人に餌の時間などを聞き,餌やケージを選んだりしていると12時になった。
ベリーはとても甘えん坊で,まだ一人で餌を食べてくれないとのことだった。
成長の目安のためにも誕生日を知りたかったが分からないとのこと。この子たちの生まれも把握せず世話をしていたのかと驚いた。せめてどこで生まれて生後何日くらいの子が,いつ店に来たとか分からないのか??
そろそろ店の餌の時間だったが,13時までに動物病院へ連れて行って健康診断をしたかったので,餌の時間を待たずに引き取ることにした。
飼育水槽から出され箱に入れられるベリーを,同じ水槽で飼われていたホワイトフェイスのオカメの子が「どうしたの?」というように見に来て,ずっと見守り見送ってくれた。何だか引き離すようで申し訳なかった。一緒に連れて行ってあげられたらよいのだけど,そういうわけにもいかない。ごめんね。
そのホワイトフェイスの雛に心の中で話しかけた。今までベリーと仲良くしてくれて,ありがとう。元気でね!
店の人はすぐに家に連れて帰ってくれと言っていたが,車に入るとベリーを箱から出して用意していたキャリングケースに移動させ,動物病院へ向かった。
動物病院で健康診断
病院には朝から電話して確認してあった。
地方のことで勿論鳥専門の病院はない。鳥を診てくれる病院も少なく,小動物・鳥と看板を出している病院で,鳥の健康診断はするがそのう検査はしないとのことだった。検査をしても99%何も出てこないし,鳥に負担がかかりすぎるという。
本にも,飼い鳥サイトにも,必ずそのう検査をするようにと書いてあるし,鳥をきちんと診られる医者かどうかは,そのう検査で分かると書かれている。
しかしそんな病院がないので仕方がない。鳥は看板に掲げているだけで得意ではない獣医師さんなのだろう。困ったなと思ったがどうしようもない。
まず聴診器を当てて呼吸器に問題がないかどうか調べ,羽の裏にハダニがいないかどうかチェック。獣医師さん曰く,かなり痩せていて栄養状態が悪いとのこと。
店では元気な方だと思ったのだったが,私に見識がなかっただけで実はそうではなかったのだ! ベリーがいたペットショップは犬や猫もトラブルの多い店だそうで,実際に見に行っても獣医師の目には管理がよい店に見えないとのこと。
そんな話をしているうちにベリーがフンをしたので,フンの検査も依頼した。
幸い寄生虫も見つからず,痩せているけど食べて太れば元気になるだろうとのことだった。
また飼育についてアドバイスがあった。
飼育水槽に入れるのは寝るときくらいで,普段はケージの方がよいとのことだ。「水槽で飼うんですか?」と,不審そうな言い方をされた。店の人はまだケージは要らないと言っていたのだが随分と違う。
飼育温度も店では30~32℃と言われたが,医者は25℃以上でよいと言う。
何しろ初めてのことなので話が違って困った。
ペットショップはベリーの生まれも把握せずに育てていたので信用ならないが,飼育温度は急に変えない方が良いのでは?
初日から好奇心全開?
帰宅後,すぐにベリーを飼育水槽へ移した。
しばらくして,店で言われたように粟玉を熱湯でふやかして小松菜の粉を入れたものを与えてみた。
しかしベリーは全く食べない。口を開けようともしない。移動や環境の変化のショックで食べたくないのだろうか?
無理に食べさせるのは止めにして,放っておくことにした。
食事はとらなかったが元気だけはしっかりあるようで,放置されるとベリーはやたらと活発に動き始めた。
最初は羽ばたいてみたりしていたが,そのうち突っ込んである止まり木をよじ登って水槽から出ようとし始めた。見るからに,こちらへ来たくて来たくて仕方がないという感じだ。
本には,オカメインコは臆病で,お迎えした日は疲れているしあまり目を合わさないように静かにそっとしておかなくてはならないと書いてあったのだが,「そっと」どころではない!
獣医師さんに飼育はケージが良いと言われたので,ケージを暖かく保つためにケージの周りを囲う保温用の段ボールの覆いを工作することにし,午後はベリーの目の前でその作業をしていた。
そもそも水槽から出たがって四苦八苦していたベリーは,工作が始まると更に水槽から出ようとして大騒ぎ。あまりにも騒ぐので水槽から出してみると,作業中のケージの上でくつろいで工作を眺めて楽しんでいる。満足したようだ。
もしかして,ベリーは好奇心旺盛で物怖じしないオカメインコなのか?
だがまだ雛だ。
そのうちケージの上で眠り始めて寒そうだったので,再び水槽の中へ戻してやった。
初めての挿し餌
夕方17時頃になって,挿し餌に再挑戦。昼間食べてくれなかったので,ちゃんと食べさせることができるようになるのか不安でずっと憂鬱だった。
少なめに作り,今度は湯煎して餌の温度が冷めないように工夫する。ふやけた粟玉の匂い(美味しそうな匂いだ)がしたせいか,何と,今度は食べてくれた!
もー,何と嬉しいことか!
しかし,冷めるとやっぱり食べなくなる。
仕方なく何度も湯煎のお湯を取り替えて餌を温かく保った。また続けて食べてはくれないので,途中で休ませては温めてまた食べさせるを繰り返す。本当に大変だ!
ベリーはお昼抜きでお腹がすいていたせいか,すごく興奮して頭を振りながら食べるので,口に入れようとしても餌の大半を周囲にまき散らしてこぼしてしまう。口に挿し餌用器具を差し込んであげられるほど大きな口を開けてくれない。どうすれば良いのか?!
餌が終わるとすっかり夜になっていたが,お昼抜きだったので一日の餌の量が明らかに少ない。寝る前にもう一度餌をあげることにして,ホームセンターへ出かけた。
粟穂を買ってこよう。粟穂を入れておくと,遊びながら自分で食べることを覚えると本に書いてあったので,それを期待しよう。見かけから判断しても,そろそろ一人餌の練習を始めても良い時期に達している筈だ。
ホームセンターで,粟穂とベリーの体重を測るための電子天秤を買った。この時に買った電子天秤は,ベリーの最期の朝までベリーの体重測定のために役立ってくれた。
初めての怒り
ホームセンターから帰宅しベリーを覗くと,ベリーは「フッ!フッ!」と鼻を鳴らして首を縦に振っている。何か怒っている? まだベリーに馴染んでいなかったので私は意味が分からなかった。怒っているらしいということだけは,よくわかった。
後から考えれば,おそらくベリーは一人で放置されたことを怒っていたのだ。
昼間,飼育水槽から出て近くへ来たがった時点で,ベリーは自分がこの家の子になったこと,私達と仲間になったのだということを,ちゃんと認識していたのだろう。それなのにいきなり一人にされ不安だったため怒っていたのだろうと思う。
怒りさえも愛おしいものなのだ。
この時の余裕がなかった私はそれをどれほど理解してあげられただろうか。ベリーも私もお互いのことを知らず初めてのことばかり。歩み寄りたいのに,間違えながら少しずつだった。
夜の餌の前に早速買ってきた電子天秤を使ってベリーの体重測定をした。
何と66g!
『ザ・オカメインコ』によると,これは生後13日の体重ではないか。酷く痩せているってことでは!? もう一人餌の訓練をし,羽ばたきもしているのだから,80~90gはあってもいいはずなのに? ショックだった。やっぱり店の管理が良くなかったの?
その後,どれだけ口に入ったのかわからないが,とにかくもう食べなくなるまで餌を食べさせ,就寝させた。人間の食事はその後でもう22時を越えていた。本当に疲れた一日だった。
だがベリーもきっと疲れたことだろう。
でも,とうとうベリーがやってきた。
ベリーはやってきた初日から,ちゃんと家に馴染んで「うちの子」になってくれた。毛繕いに熱心なところも,好奇心旺盛で人の作業をめちゃくちゃ見たがるところも,やってきたその日からベリーはベリーらしく,まさにベリーだった。
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