頑なに咲いていた

  ボイコットを叫ぶ拡声器
  ある者たちは無関心に去ってゆき
  ある者たちは熱心に変革を訴える

  取り残された君は独り座り続けた
  誰もいない講義室
  背筋を伸ばし前を見つめ怒ったように

  その横顔にわけもなく嫉妬した
  安保の残り香くすぶるキャンパスで

紅く赤く

この街角で

  たしかに貴女はここにいた

  空を見上げ花を愛で
  キーを叩きハンドルを握り
  ウィンドウを覗き買い物をし

  わたしのレンズは寂しくて
  ひたすら残照を追いかける
  貴女の貴女の貴女の

ハロウィンの街角で

迷暗

  探し続けて幾星霜
  夕陽に溶けたあの日から

  慕い続けて幾風霜
  引き裂かれたあの日から

  数多の輪廻が吾らを隔て
  記憶は未だ痛み続ける

彷徨って

オレンジの滴

  最期に見たのは夕陽でした。
  美しい、と思いました。
  光というものを見たのは初めてでした。
  そして私の意識は薄れゆき、
  身体はオレンジの光に溶けてゆきました。
  遙か遙かな昔の話。
  闇が地上から消えた日のことです。
  そう、私は闇の妖精でした。
  黄昏が落とすオレンジ色の滴には、
  今も私の上古の記憶が疼いています。

オレンジの滴