暗き淵より

  手をさしのべて抱き留める
  帰ってきた言葉たち

  届かなかった言葉たち

  悲しかったね
  仕方がないね

  一緒に泣いたら出発しよう

暗き淵より

あの頃のまま

  たくさんの時
  いくつもの街

  幾多の涙に
  数多の別れ

  何もかもが過ぎ去って
  変わらないのは記憶だけ

  懐かしい笑顔だけ

この秋の日射しを忘れまい

あてなき家路

  とぼとぼ歩いた戻れぬ道を
  道連れは足もと長い影法師

  オレンジ色の夕闇が
  やさしく肩からこぼれていった

オレンジ色の夕闇が

ハミングの小径

  留まることはかなわない。
  通り過ぎ、わたしは過去になる。

  だが憶えていてほしい。
  草よ木よ風よ、
  わたしがここを歩いたということを。

ハミングの小径

  私の尺を知るのは私だけ。
  それでいい。

  それがいい。

小さな星の双子たち