東京で迎える最後の春だから、
皇居に桜を見に行った。
去らねばならない。
大好きで大好きな東京を。
たくさん泣いて諦めた朝。
根無し草の人生だもの、
わかってたこと。
白鳥の白はまぶしくて、
美しくて清らかで悲しくて。
時が止まってくれたら、
このまま白鳥の白に溶け込めたら、
東京を去らずに済むかしら。
また泣いてしまいそうだから、
浮かび上がる思考の群れを押し戻し、
何回も何回も、
流せぬ涙の数だけシャッターを切った。
東京で迎える最後の春だから、
皇居に桜を見に行った。
去らねばならない。
大好きで大好きな東京を。
たくさん泣いて諦めた朝。
根無し草の人生だもの、
わかってたこと。
白鳥の白はまぶしくて、
美しくて清らかで悲しくて。
時が止まってくれたら、
このまま白鳥の白に溶け込めたら、
東京を去らずに済むかしら。
また泣いてしまいそうだから、
浮かび上がる思考の群れを押し戻し、
何回も何回も、
流せぬ涙の数だけシャッターを切った。
天然…魔法の言葉,天然。
類義呪文に自然って言葉もある。
天然の寒さから遮断され,
寒いはずの冬にコートを着込むのが不快になってしまう不自然な世界。
そんな世界で寝て起きて食べて飲んでいるから,
天然って貴重そうだし,自然って言われたら何か良さそうと感じてしまう。
いやいや危険な自然は多々ありますよ?
自然=良いなんておかしいでしょ。
原発の放射線は悪で天然の放射線は良いみたいな笑い話ね。
いやもうめんどくさい,危険な天然も自然だからいいんだよ。
死ぬのも滅びるのも自然だし。
水の色が本当は透明で,
水の表面は本当は鏡のようで,
映しだされた色が水の色で水色だとしたら。
閉じ込められた天然は,
水色のようにやっぱり少し薄くて a little lighter で,
何となく納得できるようなできないような。
時の流れは優しいだろうか。辛い一面ばかり見る一年だった。
そんなことを言っても仕方がないのだ。
全ては時の流れにさらされ風化してゆく存在。
だけど私は悟ることもできず、いつもいつも、
ただひたすら時の流れを怨み、ただただ苦しみに耐えている。
かつて輝くように大切だった何かは今になって台無しにされ、
あるいは惨めに哀しく衰えてゆく。
胸を突き刺され息もできず喘いでいるのに、
何が何でも見据えて受け入れろ、こんなの序の口なんだよと、
時は淡々と宣告する。
そうだよわかっている。
澱まず流れ去る時の旅は後半になるほど辛くなるだろう。
耐えられそうにないから、もうここいらで退散させてください。
誰に願っても叶えらることはない、空しき願いを心に描き、
行き場のないやるせなさに対抗する手段を探しまわり、
結局はただそっぽを向いて、ため息をつく。
何もかも奪われたら、いつかこの世に未練もなくなるだろう。
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら空を仰ぐ。
ただそこだけが知ってる場所だから。
ただそこだけが帰れる場所だから。
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら彷徨い歩く。
記憶の中の過去の日を。
記憶の中の青い空を。
記憶の中の冷たい空気を。
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら心を閉ざす。
記憶が零れないように。
記憶が色褪せないように。
記憶に埋もれて心が崩れないように。
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら待っている。
いつか帰れる日を。
いつかどこかへ帰れる日を。
いつか帰りたいと思わない日を。