三月、皇居のお堀にて。

東京で迎える最後の春だから、
皇居に桜を見に行った。

去らねばならない。
大好きで大好きな東京を。
たくさん泣いて諦めた朝。
根無し草の人生だもの、
わかってたこと。

白鳥の白はまぶしくて、
美しくて清らかで悲しくて。
時が止まってくれたら、
このまま白鳥の白に溶け込めたら、
東京を去らずに済むかしら。

また泣いてしまいそうだから、
浮かび上がる思考の群れを押し戻し、
何回も何回も、
流せぬ涙の数だけシャッターを切った。

2016-03-27
2016-03-27

空の色は水の色 雲の色は水色

天然…魔法の言葉,天然。
類義呪文に自然って言葉もある。

天然の寒さから遮断され,
寒いはずの冬にコートを着込むのが不快になってしまう不自然な世界。
そんな世界で寝て起きて食べて飲んでいるから,
天然って貴重そうだし,自然って言われたら何か良さそうと感じてしまう。

いやいや危険な自然は多々ありますよ?
自然=良いなんておかしいでしょ。
原発の放射線は悪で天然の放射線は良いみたいな笑い話ね。
いやもうめんどくさい,危険な天然も自然だからいいんだよ。
死ぬのも滅びるのも自然だし。

水の色が本当は透明で,
水の表面は本当は鏡のようで,
映しだされた色が水の色で水色だとしたら。

閉じ込められた天然は,
水色のようにやっぱり少し薄くて a little lighter で,
何となく納得できるようなできないような。

2015.12.11

消えゆくためのいとなみ

時の流れは優しいだろうか。辛い一面ばかり見る一年だった。

そんなことを言っても仕方がないのだ。
全ては時の流れにさらされ風化してゆく存在。

だけど私は悟ることもできず、いつもいつも、
ただひたすら時の流れを怨み、ただただ苦しみに耐えている。

かつて輝くように大切だった何かは今になって台無しにされ、
あるいは惨めに哀しく衰えてゆく。

胸を突き刺され息もできず喘いでいるのに、
何が何でも見据えて受け入れろ、こんなの序の口なんだよと、
時は淡々と宣告する。

そうだよわかっている。
澱まず流れ去る時の旅は後半になるほど辛くなるだろう。

耐えられそうにないから、もうここいらで退散させてください。

誰に願っても叶えらることはない、空しき願いを心に描き、
行き場のないやるせなさに対抗する手段を探しまわり、
結局はただそっぽを向いて、ため息をつく。

何もかも奪われたら、いつかこの世に未練もなくなるだろう。

時の向こうの朝

金木犀も香らないこの街で

わたしはひたすら空を仰ぐ。

ただそこだけが知ってる場所だから。

ただそこだけが帰れる場所だから。

2016-10-14
2016-10-12
2016-10-08

金木犀も香らないこの街で

金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら彷徨い歩く。
記憶の中の過去の日を。
記憶の中の青い空を。
記憶の中の冷たい空気を。
 
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら心を閉ざす。
記憶が零れないように。
記憶が色褪せないように。
記憶に埋もれて心が崩れないように。
 
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら待っている。
いつか帰れる日を。
いつかどこかへ帰れる日を。
いつか帰りたいと思わない日を。

2015.10.03