恋しくて風の空

     毎朝笑いかけてくれた桜の木を
     ただただ懐かしく思うのです

     赤く光を放った葉を宝石のようにまとい
     朝の喜びを告げて輝いた秋の朝

     花嫁衣装のような花びらで
     誇らしげに微笑んでいた春の朝

     硬くつぼんだ希望を枝に
     寒さに凜々しく背筋を伸ばした冬の朝

     小鳥たちに木陰を与え
     濃い緑で涼風を届けてくれた夏の朝

     あなたはいつも優しかった

恋しくて風の空

あなたの前で言葉なんて要らなかった。

往きて無数の春に

     時は止まったままなのに
     心はすくんだままなのに

     黄色い花が風に揺れ
     茶色い小鳥が空を舞い
     緑の風が髪を撫で

     美しさが哀しくて
     煌めきが寂しくて

     思い知るのだ
     消えやしない君の面影

往きて無数の春に

花影に消えた君は幻だったのか。

闇夜の涙は星を仰ぐ

言葉も沈黙も
本音も虚言も
感性も理性も

気がつくと凶器

涙も笑顔も
真心も情熱も
裏切ってゆく

優しさはどこ
愛しさは

貴方に会いたい

The day of Leonids

今はただ、あなたの冷たさが心地よい。

若葉が優しい春の日に

     若葉の緑が優しかったから
     君を溶かしてしまおうと思った

     もう終わりだよ哀しみの時間
     僕は先に行ってるよ

若葉が優しい春の日に

途は続く。哀しみは忘却の魔法に預けよう。

Maple Avenue

Maple Avenue 君がいた
Maple Avenue 僕がいた

あたたかい
静かな時が流れてた

Maple Avenue 帰りたい
Maple Avenue 帰れない

君は消え
木々は色を失った

Maple Avenue 碧い夢
Maple Avenue 遠い日々

僕もゆく
セピアの欠片を握りしめ

Maple Avenue

去りゆく街角に遠い日の面影をさがす。