暮れゆく街をただひとり
当て処なく当て所なく
ネオンの星の煌めきが
音になって降りしきる
星よ私をうずめておくれ
彷徨う心を光の渦へ
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30
真っ赤なロード・スターの時代
コツコツと,飽きもせず音楽環境刷新中。近所のショップに限界を感じ,最近は少し遠くまで足を伸ばし始めた。おそらく簡単に集められると思っていたのに意外に集まらないのが,松田聖子の初期のアルバムだ。妹が彼女のファンだったので,必然的に私もテープを何本も持つことになり,よく聞いた。彼女の曲中に住むのは,いつも私の対極のような女の子で,私には考えられないようなものに憧れ,呟き,主張する。無い物ねだりの物珍しさ? 時に自分に疲れると,この歌の子のように生きられたらと思いながら聞いたものだった。一番のお気に入りは,大ヒット曲〈Rock’n Rouge〉を収録した9thアルバム《Tinker Bell》。当時の何もかもを思い出せそうな1枚だ。
幻の名盤
”アイドル”というと,「歌は下手,ルックスがとりえ」のようなイメージが浮かんでしまうが,甘く華やかな声を存分に活かした聖子ちゃんは天性の歌姫だろう。昔のアイドル,みんなそれなりに歌が上手だったし,よく聞いた。明菜もキョンキョンもピンク・レディも。そして,明けても暮れても聞いていたのがキャンディーズ。春風のようなハーモニーを折りなす眩しいお姉さんたち,だった。手元には,頑張って買ったLPが2枚。2006年3月21日に亡くなった宮川泰氏の,恋のバカンス,ふりむかないで,愛のフィナーレ等々をカバーする《キャンディ・レーベル》に,アメリカ・オールディーズを取り入れた《なみだの季節》。どちらも私の名盤なのだが,LPを聞く手立てがない今となっては幻だ。
乙女座宮
中森明菜さんといえば,ごく初期の楽曲〈銀河伝説〉で,獅子座の占いを読んで戸惑う乙女座の女の子が描かれていた。もちろん思い出すのは山口百恵〈乙女座宮〉。明菜はポスト百恵を意識してプロデュースされたと聞いたことがあるが,本当? まぁそれはともかく,女の子の象徴は乙女座で,男の子の象徴は獅子座なのだろうかと,〈乙女座宮〉の時代から疑問だった。乙女座ではない私としては何となく聞き捨てならない(?)し,隣の星座同士ってそもそも相性いまいちだ。おかげで,せっかく素敵な曲名なのに感情移入できなかった。あと,星座名はひらがなとカタカナなのにと表記も気になったのだが,占いでは違うのね? いや,占いなら処女宮と獅子宮の筈?
今は昔の星浪漫
ま,詩に正確な専門用語を求めるなんて無粋というものだ。ウルトラマンは散光星雲M78出身でかまわないし,この場合,おとめ座でも処女宮でもない乙女座宮こそ夢を育む表現なのだろう。陰イオンでもアニオンでもないマイナスイオン(あり得ね!)とはわけが違う。チェックを入れて文句をつけつつ,ひとたび「星」と聞けば反応せずにいられないのが子供の頃の私だった。乙女座宮はどちらにしろ好みの歌ではなかったが,ラジオでかかれば聞かないといけないような気がしていたし,八神純子〈ポーラー・スター〉は名曲だと思っていた。中原理恵とキャンディーズが歌った〈銀河系まで飛んでいけ〉という曲も,「地球は銀河系を飛んでいますが?」とか言いつつ実は気に入っていた。
空へ帰ろう
星が出てくる歌。岩崎宏美さんも,明菜ちゃんとは別物の〈銀河伝説〉を歌っていたっけ。映画『ヤマトよ永遠に』の主題歌で,星の輝きのようなイントロが印象的。彼女の透き通った声が宇宙空間の広がりを想わせた。だが,私のベストは,たぶん久保田早紀〈星空の少年〉。当時の私が星空を見上げるときの気持ちをそのまま歌ったような曲だったし,これが収録された《夢がたり》は秀作揃いで,テープが伸びるまで聞き込んだ。LPで発売されたアルバムがCDで復刻し始めると,最初に私はこれを求めた。どこまでも遠い,遠い空,雲に星。彼方を見つめ続ける心を旅へと誘う,色褪せない1枚。いくら年を重ねても,魂は彷徨い,一歩を踏み出し続けるのだと思う1枚だ。
(2006-03-26~30)
昨年の引っ越しをきっかけにスカパー!HDが見られなくなり、リアルタイムの観戦が叶わなくなったため今年はF1を見ていなかったのだが、鈴鹿くらい見ておくかと思い立ち、久々にF1観戦。しかし、当然地上波だ。
まぁ覚悟はしていたが酷いのなんの、ストレスたまりましたわ。
そりゃ母国グランプリですからね、ある程度は小林可夢偉に焦点が合うのは当然のこと。仕方が無いでしょう。しかし度を越している! スポーツ中継ではなく可夢偉特番って域に達していて興ざめだった。タイヤその他の解説なんてまるで無し。まともなスポーツ観戦させてくれよ。去年も中嶋一貴ばかりとは思ったがここまでひどくはなかった。
確かに可夢偉は騒がれるだけの活躍をしてきたとは思う。それは認めるし頑張って欲しい。けれど、日本のF1ファンが一人残らず可夢偉だけに興味を持ってレースを見ているわけではない。残りレースも少なくなって稀に見る5人によるタイトル争いだというのに、可夢偉可夢偉一辺倒、上位で色々起きているのに映像は可夢偉ばかり、それはF1ファンに対して失礼ですよ。それにさ、日本人ドライバーもう一人いるんですけど、山本左近のことはどうでもいいわけ? 「来年はフェラーリに乗せてあげたいですね」、それはザウバーに失礼でしょ。ハミルトンが抜いた時も「マシンの差ですね」、まるでドライバーの腕は互角か可夢偉が上と言わんばかり。それはハミルトンに失礼でしょ。ワールドチャンピョンですよ、ハミルトンは。身贔屓も行き過ぎると悪、お願いだから程々にしてくださいませな。
これ以外にもとにかく地上波のF1はいらぬ脚色が多すぎて、そこまで大袈裟な表現を繰り返さなければならぬのかと、聞いていてほとほと疲れた。カリスマ王者アロンソ? いや、アロンソはすごいドライバーだけど、そんなこと言うとかえって安っぽく聞こえるんですけど…?
私が好きなドライバーたちが全員残念な結果に終わったのも悲しかったが、それ以上にいらぬところで疲れて観戦を楽しめなかったのだった。英語でいいからまともな解説聞きたかった。
日本人のノーベル化学賞受賞が喜ばしいニュースであることについて,異論はない。ノーベル賞そのものについての是非はこの際おいておいて,心からお祝い申し上げたい。日本人が世界で評価されるのは何であれ素晴らしいことだ。
しかし! N○Kの19時のニュースを見ていて,腹立たしいことこの上なかった。伏せ字にしたのは検索対策であって,決してこの公共放送と言われる放送局の名前を隠したいわけではない。○には勿論「H」が入る。
今に始まったことではないし,私はテレビなんか滅多に見ないのだが,たまたま見てしまった。そして悪い意味で期待を裏切らないくだらなさだった。人から受信料ぼったくってこれかよ。報道番組を何だと思っているのだ,この公共放送とやらは。
決してノーベル賞受賞にケチをつけるわけではないが,その報道は,受賞者の名前と略歴,研究紹介を淡々と語ってくれれば十分であって,やたらとセンセーショナルに脚色する必要は無いし,ましてや旧友や後輩のインタビューなんてどうでもよろしい。そんなものに何のニュース性もない,というか,そもそもニュースですらないし,貴重なゴールデンタイムを使って報道すべき内容ではない。賞受賞の本質とは無関係だし,タダの野次馬根性か覗き趣味。ワイドショーの任せていればよろしい。どうしてもやりたいのなら,ニュースの時間ではなく,特別番組でも組んでN○Kっぽい上品なワイドショーでもやってくれよと思う。勿論私は見ないけど,そういうのが好きな人はいっぱいいるでしょ。
こんなくだらないことにニュースの時間を使っておきながら,一方ではこの10年で最大規模だった先日の渋谷の反中デモのことは全く報道しないのだから,ジャーナリズムが聞いて呆れる。マスゴミと言いたくもなりますわ。BBC Worldなどを見ていると,日本人が如何に井の中の蛙で世界のことを知らされていないかを痛感するが,こういう毒にも薬にもならぬ”街の声”を垂れ流しているヒマがあったら,そういった世界の事件の報道に時間を費やしていただきたいものだ。少しは日本人の夢の中のお花畑のような平和ボケ解消の役に立つだろうよ。
こういうときだけ理系離れがどうのと言うのも気にくわない。普段から科学の恩恵にあずかって儲けておきながら敬意を払っていないのは君たちではないか,と思う。世の中理科系はしいたげられているのだよ。便利なものを作っているのは技術者たちだというのに,その大半は低賃金で使い倒されるのだ。君たちのニュース番組,文系用語なら説明なしで当然のように使うくせに,理系用語だとごく普通のものに「特殊な○○」が口癖だもんな。如何に文系の視点で番組が作られているか私はそのたびに実感しているが,検証したことあるのか? 今の記憶を持ったままこの社会で人生やりなおせるなら私は理科系なんて損な選択はするまいぞ。
そして元気がない日本社会に元気をですって? これも全く何を持って元気がないといいたいのだろう。とにかく若者は元気がなく,年寄りのバイタリティーを見倣うべきだと言いたげだが,若者の一面しか見ていないことこの上ない。若者ではないけど腹が立つ。
文句タラタラで我ながら疲れ果て,私はBBC Worldの英語放送に切り替えた。やっぱり日本の地上波なんて,よほど厳選した番組を除き見るものじゃない。ヒアリングの練習かたがた外国のニュース見ていた方が100万倍マシだわ。