追憶

あたしは小さくないし
おばあちゃんはもういない

どうしてどうして

胸に鋭い痛みが走るけど
あの頃に戻りたいわけじゃない

きのう

自己満足

独りよがりの愛は迷惑なのです
とても とても

独りよがりな貴女
気づくこともないのでしょう

ただいま

残照

貴女が住む家を訪ねた街なのに
貴女はもういないのですね

どんなに速い乗り物に乗っても
もう会いにゆくことはできないのですね

霜月の空は切なくて

街の風景が切なくて

今住んでいる街はすき。

どこまでも続く高層ビルと谷間を歩く人の群れ、車の波。
その脈動感に過去生きてきたひとたちの魂の記憶が重なって、
不思議なオーラが満ちあふれている。
遺産を引き継ぎつつも常に未来へ変化する力強さ。
誰が何と言おうと、東京は魅力溢れる大都会だ。
大好き。

でも、1000km離れた故郷の街が、いつもたまらなく恋しい。
暑いし寒いし人は閉鎖的だし、私には優しくない場所だった。
生きにくい街だった。
だけど、どんな場所もあそこに取って代わることはできない。
どうしてこんなに遠いのだろう。
どうして簡単に行けないのだろう。
見たいのに見たいのに、あの街の風景が。

日々変化する街並みの中、故郷は私の過去となり、
私は故郷の過去となる。
私はたぶん、これからずっとこの都会の海で生きて行くのだ。
室生犀星の「小景異情 その二」を心に秘めながら。

終着駅