街角に透けて

   いつもいつも路地裏を覗きながら歩いてしまうのは、
   たぶん見え隠れする人々のいとなみが恋しいから。
   ふとしたはずみに、街角の隅に見えないだろうか。
   遠く去ってしまった時代。
   二度と会えない懐かしい人の記憶の面影。
 
   年をとるのがイヤなのは、自分が老いるからじゃない。
   会えない人がどんどん増えてしまうから。
   もういやだ、これ以上のさよならには耐えられない。
   どれほど切実に願おうと、時は過ぎ人は去り容赦ない。
   時の流れに溺れそうで、だから残された過去の欠片にすがりつく。

   そうして今日も明日も、路地裏を撮る。

街角の向こうに

あなたは確かにここにいた。ここにいたのに。

それでも好きよ

エントロピーは増大する
覆水は盆に返らない

壊れた信頼も失った心も
雲散霧消を待つだけね

嵐を呼ぶほどの後悔も
闇より暗い哀しみも

only painfully useless
it’s no use crying over

だけど私は変わらない
変わらない

それでも好きよ

変われないから苦しいの。だけど、ただ前を見つめて生きてゆく。

ただ温かさに憧れた

寒かった寂しかった切なかった
ほんの一欠片の温かさが欲しかった

なのに温かさは怖かった

氷の心が溶け出しそうで
二度と強くなれなくなりそうで

だからただ遠巻きに温かさを見守った

灯り

懐かしいのに手が届かない、柔らかで温かな灯火の頃。

ティータイム

    気を取り直して手を伸ばす
    冷めてしまったティーカップ

    紅茶は変わらず美味しくて
    だから涙がとまらなかった

ティータイム

紅茶の美味しささえも涙を誘った午後でした。

そして初めて気づくのさ

   過ぎ去って
   振り返って
   そして初めて気づくのさ

   君がいたこと
   幸せがあったこと

   手を伸ばせば
   失わずに済んだこと

懐かしい日の黒雲雀

たまによぎる君の瞳の哀しさに、僕は気づいていたはずなのに。