自失

何か感じるべきなのだろう。
何か考えるべきなのだろう。

ぼんやりとそう思う。

だけど心が麻痺してしまって、
頭が錆びてしまって、

ただ化石のように黙りこむ。

自失

わたし

  記憶に思念
  何の証しもない心と想い

  真実も信実も誠実も
  疑惑の前にはただ虚しい

わたし

絶望しても

 人を思いやるのは大切なことなのです。
 人の間で生きてゆくなか、どうしても必要なことなのです。
 でも純粋に誰かを思いやるのは、とても難しいのです。
 人はみな、自分の物差ししか持っていませんから。

 間違った思いやりは相手を困らせ自分の行き場を奪います。
 間違った気遣いは人間関係の歯車を狂わせます。
 間違った遠慮は拡大生産され底なし沼のように事態を悪化させます。
 そうしてこじれた関係は、時に修復不能です。

 けれどどんなに絶望しても、今日もわたしは生きています。
 おそらく明日も生きています。
 人と人との関係の中で生きてゆかねばならないのです。
 どんなに絶望しても、そうするほか道はないのです。

絶望しても

残像

脳裏をよぎる刹那の記憶

あのときのひかり
あのときのくうき

私は急いで手を伸ばす
それらの影をすくおうと

いつもいつも

記憶は指の間をすり抜ける
届かぬ闇へと落ちてゆく

残るは胸の痛みだけ
痛みだけ

残像