星座入門 ぎょしゃ座

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ぎょしゃ座のデータ
学名:Auriga
(アウリガ)
略符:Aur
英語名:the Charioteer
the Wagoner
設定者:プトレマイオス
(トレミー)
20時南中:02月15日
ぎょしゃ座の絵入り星図

 ぎょしゃ座 は,ペルセウス座 に続いて真冬の天頂を通り過ぎる星座で,五角形に並ぶ星列がよく目立ちます。厳寒期の夜,遅くならない時間帯に頭の真上にひときわ明るい星を見つけたら,それはぎょしゃ座 のα星カペラでしょう。下の星図の白い+印が,ぎょしゃ座 が南中した時の天頂の位置です。

 カペラは1等星と呼ばれますが,正確に言えば1等星より明るい0等星なので,シリウスのようなマイナス等級の特別な1等星を除き,大抵の1等星より明るいのです。
 黄色みを帯びたカペラは,現在1等星の中で最も北にあり,一番長く地上に出ています。真夏の少しの期間を除き,一晩のうちどこかの時間帯で地上に出ている輝星ですから,ぜひ親しんで覚えてください。きっとカペラは,あなたの星空の道案内に役立ってくれると思います。

 ぎょしゃ座 にはカペラがありますし,その他も,βが2等,五角形の底辺,牡牛の角の先にあるおうし座 β(星図で"βTau"と表示。五角形の一部ですがおうし座 の星です)も2等,εθιηが3等で,明るい星ばかり。見つけるのは難しくないと思います。
 わかりにくかったら,三つ星を頼りにオリオン座 を探し,そのずっと北にある一番明るい星がカペラ。あるいは,三角の雲のように見えるすばるとV字形の星列の中に輝く1等星アルデバランを頼りにおうし座 を探し,牡牛の角の先を探してみてください。暗い空の下なら,ぎょしゃ座 の五角形の真ん中を,淡い冬の銀河が流れているのを確認できます。

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 ローマの神話では,ぎょしゃ座 は,鍛冶の神ウルカヌス(ギリシア神話のヘファイストス)と知恵の神ミネルウァ(ギリシア神話のアテナ)の間に生まれたエリクトニウスの姿であると言われています。父に似て脚が悪かったエリクトニウスは,2輪馬車の戦車(シャリオット)を発明して戦場を駆け回り,後にアテナイの王となりました。

 しかし,星座絵を見ると,馬車を操る馭者(ぎょしゃ)とは思えない,小さな山羊(または羊)を抱いたおじいさんの姿が描かれていますね。カペラという名前も,ラテン語で小さな雌山羊という意味です。ぎょしゃ座 は,星座絵と星座の名前が一致していないのです。
 この星座の起源は大変古く,ギリシア神話以前の古代からこのあたりには山羊の子あるいは鹿の子を抱いた人の姿が描かれており,古代メソポタミアなどの遺跡で見つかっている羊を抱く老人の姿がそのまま星座絵に引き継がれ残ったのだそうです。
 一方,ギリシアではここをヘーニオクソス(馭者)と呼び,カペラを馭者,ε・η・ζの三角形を手綱,β・θ・βTau・ιでできる箱形を車に見立てていたといいます。
 手綱を持った馭者に見るもよし,子ヤギを抱いたおじいさんを思い浮かべるもよし,この自由な発想こそが星空に絵を描くという星座の原点なのかも知れません。

 なお,おじいさんが抱く山羊には,独立した神話が知られています。
 ゼウスの父クロノスは,我が子に王座を奪われることを恐れて生まれる子どもを次々に呑み込んでいましたが,末っ子のゼウスを生んだ母親のレアは,ゼウスの代わりに石を飲ませてゼウスを助けました。ゼウスはイーダ山に隠れて幼少期を過ごしたのですが,このときゼウスに乳を与えたのが雌山羊でした。幼いゼウスはこの山羊と戯れているうちに誤って角を折ってしまい,後になって,山羊への恩返しとしてこの角を持っている者に幸運が授かるようにしたのだそうです。

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 ぎょしゃ座 の星の名前については星のるつぼを,日本の名前についてはぎょしゃ座の和名をご覧ください。

ぎょしゃ座周辺の星図

こちらの星図でぎょしゃ座 を見つけてみましょう。
ぎょしゃ座周辺の星図,星座線無



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