雨恋

煙のような雨粒に
いま静かに同化しよう

こころもからだも
ただ一輪の紫陽花に

始まりは雨の季節
最期も雨に帰ってゆこう

雨恋

雨よわたしを洗い流して。どこか遠く。遠くまで。

つばさ

     もう戻れない
     大地も思い出も置き去りね
     眩しすぎて涙が出るの

     あぁ違う
     きっと違う

     引き止めてほしかったんだ
     置き去りなのは私の心

つばさ

もう帰れないなら、いっそ空の彼方へ連れてって。

夜と朝の隙間の中で

     いつか歩いた
     真珠色の朝霧の路
 
     夜よ明けないで
     霧よ晴れないで
 
     隣にあなた
     いたような気がした

朝と夜の隙間の中で

あなたと一緒なら霧の向こうにだって行けると思った。

季節は終わらない

     努力したさ幾千回も
     頑張ったさ幾年幾月

     もう少しもう少し

     もう少しで君を追い出せる
     意識の海の深みから

     なのにいつも台無しさ

     春の三日月が
     秋の夕焼けが

     季節の記憶を乱すから

季節は終わらない

夕焼けが哀しいのは心がまだ乾いていないからだろう。

春紫苑は笑う

     風が吹くから心を晒した
     春紫苑は笑う

     月が泣くから夢を捨てた
     春紫苑は笑う

     僕らの時が幾許過ぎて
     僕らの愛が幾千死んで

     春紫苑はやっぱり笑う
     春の野でいつも

ハルジオン

いつかの春に僕も野原で春風になる。