MISOGI

   夏山の嵐の如く突然に
   崩れていった何もかも

   僕はただ雨を待ち
   僕はただ雨に打たれる

   雨よ強く流してしまえ
   優しかった記憶など

MISOGI

雨よ雨よ 僕は君を待ち望む 君の潔さを待ち望む

空へ帰ろう

   夏の夜空があんなにも輝いていたことを
   冬の夜空があんなにも煌めいていたことを
   いつか忘れて生きていた

   秋の夕空があんなにも切なかったことを
   春の夜明けがあんなにも嬉しかったことを
   いつか忘れて生きていた

   空を見上げなくなったからじゃない
   忘れなければ辛すぎた

   輝いていた想い出を
   思い出すのが怖くてそれでも思い出したくて
   目を閉じたまま見上げてる

   空を空を空を

あの空へ帰ろう

わたしが帰る場所。そして帰れない場所。だからあなたはいつも切ない。

街角に透けて

   いつもいつも路地裏を覗きながら歩いてしまうのは、
   たぶん見え隠れする人々のいとなみが恋しいから。
   ふとしたはずみに、街角の隅に見えないだろうか。
   遠く去ってしまった時代。
   二度と会えない懐かしい人の記憶の面影。
 
   年をとるのがイヤなのは、自分が老いるからじゃない。
   会えない人がどんどん増えてしまうから。
   もういやだ、これ以上のさよならには耐えられない。
   どれほど切実に願おうと、時は過ぎ人は去り容赦ない。
   時の流れに溺れそうで、だから残された過去の欠片にすがりつく。

   そうして今日も明日も、路地裏を撮る。

街角の向こうに

あなたは確かにここにいた。ここにいたのに。

それでも好きよ

エントロピーは増大する
覆水は盆に返らない

壊れた信頼も失った心も
雲散霧消を待つだけね

嵐を呼ぶほどの後悔も
闇より暗い哀しみも

only painfully useless
it’s no use crying over

だけど私は変わらない
変わらない

それでも好きよ

変われないから苦しいの。だけど、ただ前を見つめて生きてゆく。

ただ温かさに憧れた

寒かった寂しかった切なかった
ほんの一欠片の温かさが欲しかった

なのに温かさは怖かった

氷の心が溶け出しそうで
二度と強くなれなくなりそうで

だからただ遠巻きに温かさを見守った

灯り

懐かしいのに手が届かない、柔らかで温かな灯火の頃。