旧暦5月のことを“さつき”と呼びますね。
“さつき”の“さ”は神仏にささげる白米である神稲(くましね ※)のこと。
そして“さつき”は神に供える稲を植える月という意味です。
“さつき”は,五月・皐月・早月などと書き,“早苗月”(さなえづき)とも言います。
早苗(さなえ)の“さ”も神稲のこと。
早苗は,苗代から田圃へ植え替える頃の稲の苗のことです。
陰暦5月は田植えの季節だったのです。
“さつき”というとツツジの花を思い浮かべるかもしれませんね。
こちらはサツキツツジを略した呼び方で,五月頃に咲くためこう呼ばれるようになったものです。
サツキツツジは日本特産の常緑低木,関東以西の川岸の岩の上などに自生します。
ところ“五月雨”(さみだれ)という言葉がありますが,これは梅雨のこと。5月に降る雨のことではありません。
そして“五月晴れ”(さつきばれ)は五月雨(梅雨)の間の晴れ間のこと。これも5月の晴れた日のことではないので,間違えないようにしましょう。
旧暦5月は“五月雨月”(さみだれつき)とか“雨月”(うげつ)とも言いますが,旧暦では5月が梅雨の季節だったのです。
梅雨に関係する名として“五月闇”という言葉もあり,これは梅雨の夜が雲に覆われ月が見えず暗いこと,又はその時の暗闇そのものを指しています。
梅雨の頃の夜といえば,オレンジ色に輝くうしかい座のアルクトゥルスが見頃で,この星は“五月雨星”という和名を持っています。
田植えの月らしい言葉としては“五月女”(さつきめ/さつきおんな)があります。これは田植えをする女のことで“早乙女”(さおとめ)とも言います。
稲苗月(いななえづき)・早稲月(さいねづき)も田植えに由来する5月の名前です。
5月の別称は他にも色々ありますので,幾つか列挙しておきましょう。田植えと梅雨に由来する名前が多いですね。
- 悪月(あくげつ) 中国で5月を凶事の多い月,5月5日の出生を凶としたことから。
- 菖蒲月(あやめつき・しょうぶつき) 菖蒲の花が咲く月。
- 五色月(いついろづき) 悪月の厄払いのため五色の糸を垂らした薬玉を飾ったり,鯉幟に五色の吹き流しを付けたりした。
- 鶉月(うずらづき・じゅんげつ)
- 梅の色月(うめのいろづき)
- 開明(かいめい)
- 啓月(けいげつ)
- 啓明(けいめい)
- 建午月(けんごげつ)
- 狭雲月(さくもづき)
- 賤男染月(しずおそめづき)
- 授雲月(じゅうんづき) 梅雨で曇りがちな月。
- 写月(しゃげつ)
- 小刑(しょうけい)
- 星花(せいか)
- 盛夏(せいか)
- 田草月(たぐさづき) 田植えの頃。
- 多草月(たくさづき)
- 橘月(たちばなつき)
- 仲夏(ちゅうか) 夏の真ん中の月。芒種から小暑で旧暦五月に相当。
- 長至(ちょうし)
- 月不見月(つきみずづき)
- 梅夏(ばいか)
- 梅月(ばいげつ)
- 吹喜月(ふききづき・ふぶきづき)
- 芒積(ぼうせき)
- 茂林(ぼりん)
- 浴蘭月(よくらんづき)
- 榴月(りゅうげつ)
- 厲皐(れいこう)
※ 御供米(おくま)とも言う。
5月のお話
・皐月
・立夏と小満
・筍梅雨・青嵐・メイストーム・茅花流し・走り梅雨・卯の花腐し
・Full Milk Moon(ミルクの満月)
・蛙始鳴(かわずはじめてなく)