ヘルメス (Hermes)

 ギリシア神話に登場するオリュンポス12神の一人で,伝令の神。
 ローマ神話ではメルクリウス(Mercurius)に相当する。

誕生
 ゼウスと,ティタン神(巨人族)アトラスの娘(プレアデス7姉妹の一人)で,繁殖や成長を司る春の女神マイア(Maia)の子。
 アルカディア地方のキュレネ山の洞穴で生まれた。

結婚
 ヘレニズム時代以降,アフロディーテとの間に両性具有の神ヘルマフロディトスをもうけたという神話が伝えられる。
 また一部に,牧神パンと愛神エロスの父であるという説も伝えられる。

神話
 ヘルメスは,生まれるとすぐに揺りかごから抜け出し,太陽神アポロンが飼っていた牛の群に足跡を消すための草鞋(わらじ)を履かせて盗んだ。また亀の甲羅に牛の腸の筋を張って竪琴を発明した。
 翌日になって,アポロンに訴えられたゼウスの命令によりヘルメスは牛を返すことになったが,アポロンはヘルメスの作った竪琴の音色に聞き惚れ,竪琴と牛を交換することにした。また,その後ヘルメスは葦笛を発明するが,アポロンはこれも気に入り欲しくなる。ヘルメスに牛追い用の黄金の杖を与え,小石による占いの術を教え,アポロンは葦笛を手に入れた。
 ヘルメスの才能を認めたゼウスは,彼をゼウスの使者として,また冥府の王でありゼウスの兄であるハデスとペルセフォネの使者として,死者の魂を冥府へ導く任務を与えたという。

 ヘルメスは,伝令神として,イオの見張りをしていた百眼の怪物アルゴスを殺したり,美の誉れを競ったヘラ,アテナ,アフロディーテの3女神をイダ山のバリスのもとへ案内したり,数々の働きをしたことが伝えられている。

星の神話 【こと座】
 ヘルメスが亀の甲羅を使って発明した竪琴は,アポロンから音楽に才を発したオルフェウスに贈られ,オルフェウスの死後,こと座として天上に上げられた。

天体神として 【水星】
 ヘルメスのローマ名メルクリウス(Mercurius)の英語読みマーキュリー(Mercury)は,水星の英語名として用いられている。

起源
 ヘルメスは,豊穣多産を祈って立てられたヘイマイという石柱が起源になったのではないかと考えられている。
 ヘイマイは別名ヘルメス柱とも呼ばれ,畑や牧場の境などに立てられた男の頭がついた角柱で,下部中央に起立した陽物がついていた。

 ヘルメスの神格は,豊穣神から,富と幸運の神へ,さらに商業,盗み,雄弁,競技などの守護神へと発展。
 また,ヘイマイが道標の役割を果たしていたことから,道路や旅人の守護神ともされ,親しい神として崇められていた。

 美術作品の中では,古くは髭を生やして衣をまとった旅人として表現され,前5世紀以降になると,翼のついたつばの広い帽子(ペタソス)をかぶり,手には杖(ケリュケイオン)を持ち,翼のある靴を履いた裸の美声年として表現されることが多くなった。

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