「明るいすいせいがやってくる」と,テレビなどで話題になったりすることがありますね。けれど,「すいせい」ってどんな星でしょう?
「すいせい」は2種類ありますので,まず違いをしっかり覚えておきましょう。
水星と彗星
1つは「水星」。
地球や火星などと同じ太陽系の惑星です。
太陽に一番近いところをまわっているので,いつも太陽の近くに見えていて,日の入り直後や日の出直前にしか見ることができません。
もう1つは「彗星」。
漢字が難しいので「すい星」と書かれることもあります。
惑星と同じように太陽系の仲間ですが,惑星とは違った特徴を持っています。わかりやすいのは尻尾です。彗星は,太陽に近づくと塵でできた尾を出すのです。
水星の方はいつどこに,どれくらいの明るさで見えるか常に分かっているので,「明るいすいせいがやってくる」と注目されるのは,彗星(箒星)の方です。彗星は肉眼では見えない暗いものが大半なので,尻尾を出した姿が肉眼で見られるのはとても珍しいことなのです。
尾をたなびかせて空に悠々と浮かぶ様子は少々不気味で,彗星の正体がわかっていなかった昔は,不吉なことが起こる前ぶれとして恐れられたりしたものです。
彗星の和名
彗星の,長い尾を棚引かせた様子が箒(ほうき)に似ていることから,日本では彗星のことを箒星・掃星(ほうきぼし,ははきぼし)と呼んできました。
他に戈星・鉾星(ほこぼし),穂垂れ星(ほたれぼし),稲星(いなぼし),扇星(あふぎぼし),御光星(ごくわうぼし)などの和名が『日本星名辞典』(野尻抱影著)に載っています。
穂垂れ星は,稲穂が豊かに実る吉兆だったとのこと。
長い尾をたなびかせて突然現れる彗星は,世界各国で不吉な星とされてきましたが,日本には逆の見方もあったのですね。
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彗星とはどんな星?
さて,彗星とは,いったいどんな天体なのでしょう?
彗星を作る物質は
彗星の本体は「核(かく)」と呼ばれていますが,核は岩石などを含む氷でできていて,よく「汚れた雪玉」に例えられます。大きさは数10m ~ 10km程度。非常に大きなものでも50km。
惑星は,一番小さな水星でさえ直径4800kmですから,彗星はとても小さな天体です。
彗星は,太陽に近づくと太陽の熱で表面が蒸発します。そしてその蒸発したガスや塵が,彗星の尾となって太陽と反対の方向に伸びていくのです。
こうして彗星の表面から離れた物質は,彗星の軌道上に散らばって,塵の濃い部分が地球にぶつかると流星群になって地球に降り注ぎます。
彗星の軌道は
彗星も地球や他の惑星のように太陽の周りをまわっていますが,ほぼ円形の軌道を描く惑星とは違って,大部分の彗星は細長い軌道を持っています。
彗星の中には数年~数十年,数百年で再び太陽の近くに戻ってくる楕円形の軌道を描くもの,一度きりしか太陽に近づかない放物線の軌道を持つものなどがあり,明るくなると騒がれる彗星のほとんどは二度と太陽の近くに戻ってこないか,戻ってきても1000年か2000年先で,私たちが再び見ることはできません。
彗星との出会いは一期一会
下の写真は,1997年に見られたヘールボップ彗星です。
ヘールボップ彗星は-1等級ほどの明るさとなり大都会の夕空でも難なく見えた大彗星で,核の直径は約50km。公転周期は2534年と計算されていますので,次に地球に近づくのは西暦4531年。気が遠くなるほど未来ですね。
有名なハレー彗星は,前回の接近は1986年3月でした。
次回は2061年の夏。この時は1986年と違って地球に近づき雄大な姿が見られそうです。楽しみですね。
このように,大彗星との出会いは一期一会の貴重なものです。
彗星は慣れていないと見つけにくい天体でもありますので,見つける自信がない人は,ぜひ公共の天文台などが開く観望会へ足を運んでみて下さい。