流れ星って何?
皆さんは,流れ星を見たことがありますか?
「流れ星が消えないうちに願い事を3回唱えると願いがかなう」 なんて言いますよね。願い事を3回唱えるのはちょっと難しそうですが,流れ星はそんなに珍しい天文現象ではありません。星座をたどりながら夜空を見上げていると,意外とたくさんの星が流れていることに気がつくことと思います。
流れ星は,実は宇宙ではなく地球大気の中で起こっている現象です。原因となっているのは太陽系の中を漂っている小さな物質で,彗星が残していったチリだったり,隕石のかけらだったり由来は様々。これらの物質が地球の引力に取り込まれ地上へ落ちてくるとき,流れ星となって見えるのです。
落ちてくるチリが光るなんて,少し不思議でしょうか? せっかくだから,流れ星が光る理由を考えてみましょう。
流れ星の正体は,地球のまわりにある1mm~1cmほどの小さな宇宙のちりです。これがすごい速さで地球の大気の中へ飛び込んできたとき,流れ星になります。
宇宙のちりは,固い大気の壁にぶつかってこわれ,こわれた時のエネルギーで熱くなって周囲の大気分子と一緒に発光するのです。
大気が固いというのは不思議かもしれませんね。私たちを取り巻く大気は,少しも固くありません。けれど,速いスピードでぶつかると,空気も固い壁のようになるのです。ほら,高いところから水に飛び込むと,水面が固くなったように感じて痛いですよね。あれと同じ理屈です。
流れ星が光る場所は,だいたい地上から80km~120kmくらいの高さのところで,国際線の飛行機よりずっと高く,オーロラよりは低い場所です。
流れ星の種類
流れ星は,その性質から大きく二つの種類に分けられます。群流星と散在流星です。
1998年11月,それから2001年11月,しし座流星群が話題になりましたね。テレビでしし座流星群について様々な解説がされました。覚えていますか? しし座流星群とは,しし座の方向から放射状に流れ星が降る現象でした。
群流星とは,しし座流星群の流れ星のように,1年の中である決まった時期だけ,決まった場所から流れ出す流星を呼ぶ言葉です。群流星は,特定の流星群に属した流星で,しし座流星群がテンペル・タットル彗星の残骸だったように,流星の原因となる天体がわかっているものがたくさんあります。
散在流星の方は,いつどんな方向から飛んでくるか全くわからない流星で,原因となる天体も特定できません。
流れ星の見え方
流星群に属した流れ星の特徴は,空の1点から飛び出すように,放射状に流れることだとお話ししましたが,これは見かけの上での話です。
群流星たちはみんな同じ彗星(すいせい=ほうき星)をお母さん(母天体)として生まれ,同じ軌道で太陽をまわっており,このため同じ角度で平行に地球へ飛び込んでくることになり,そんな風に見えるのです。
ほら,平行なはずの道路や線路も真正面に立って見れば一箇所から放射しているように見えますよね。
同じ理屈で,平行に飛んでくる流れ星たちも,真正面にいる私たちが地上から観察すると1点から飛び出すように見えるのです。
ほとんどの流星群には星座の名前がついていますが,これは,流れ星が飛び出すときの中心(放射点または輻射点と呼びます)がある星座の名前になっています。
そう,しし座流星群ならしし座の中から,ペルセウス座流星群ならペルセウス座の中から,流れ星が飛び出していきます。
ついでにもう一つ。
群流星でも散在流星でもそうですが,流れ星には長く尾を引いて光る星と短く一瞬で消える星がありますね。
これは等間隔に並んでいる電柱であっても,放射の中心=遠くになるにつれて間隔がくっついて見えるのと同じ理屈です。群流星の場合は,放射点の中心近くの流れ星は短く,離れたところを流れる星は長く見えます。経路があまりに短い流れ星は,ただ点が一瞬だけ光るように見えるので,静止流星または停止流星と呼んでいます。
主な流星群と見える時期
流れ星はいつでも流れますが,たくさん見たければ流星群の時期をねらって空を見上げるといいですね。特に8月のペルセウス座流星群や12月のふたご座流星群は,毎年安定してたくさん流れる流星群です。ぜひ見てみましょう。
流星群名 | 時期 | 一番流れる日 | 多いときの 1時間あたりの数 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
しぶんぎ座 | 1月1日~1月5日 | 1月3日~4日 | 40個 | 極大のピークが鋭い。 |
こと座 | 4月16日~4月25日 | 4月22日~23日 | 8個 | 時々突発的にたくさん流れます。 |
ペルセウス座 | 7月20日~8月20日 | 8月12日~13日 | 50個~60個 | 極大日をすぎると急に数が減ります。 |
ジャコビニ | 10月8日~10月9日 | 10月8日 | 0個~?個 | 13年周期でやってくる。 普段はほとんど流れないが大出現の記録あり。 |
オリオン座 | 10月10日~10月30日 | 10月21日 | 10個 | ハレー彗星の流星群。 |
しし座 | 11月15日~11月22日 | 11月17日~18日 | 0個~?個 | 33年周期で大出現? 最近は普段から出現するようになってきた。 |
ふたご座 | 12月7日~12月18日 | 12月14日 | 50個~60個 | 日暮れから深夜にかけて流れる。 |
流星群の誕生と成長
表を見てみると,流星群といっても流れ星が沢山見えるものから1時間に数個程度しか見えないもの,毎年安定して見える ペルセウス座流星群や ふたご座流星群のようなものから,突如として大出現する しし座流星群など,様々な特徴があることがわかりますね。
流星群が彗星(ほうき星)を母天体として生まれることは上でお話ししましたが,こういった流星群の現れ方は,その流星群のお母さんである彗星が,どれだけたくさん太陽のまわりを回ったかに関係しています。
まずは,下の図を見てみましょう。
彗星は,地球からも太陽からも遠く離れた冷たい場所から,細長い楕円形の軌道を描いてやって来ます。そして太陽に近づいて暖められると,小さなチリやガスでできた尾を伸ばし,軌道の上にばらまきます。
こうして彗星がばらまいたチリが流れ星の元になる流星物質です。
最初はお母さんである彗星の近くにかたまっていた流星物質たちも,長い年月が経って彗星が何度も太陽の回りをまわっているうちに,だんだんバラバラになって広がっていき,やがては彗星の軌道全体に散らばります。
そして,毎年地球が彗星の軌道を横切るとき,流星群となっていっせいに地球へ飛び込むようになるのです。
そう,毎年現れる ペルセウス座流星群や ふたご座流星群は,軌道全体に流星物質が散らばっている大人になった流星群。
母天体である彗星が太陽へ近づく度に大出現する しし座流星群は,まだまだ流星物質がお母さんにまとわりついている,子どもの流星群ということになりますね。
流れ星を見るには
流れ星をたくさん見るコツは,できるだけ暗い,できるだけ空が広く見えるところへ行くことです。何しろどこを流れるかわからないのですから,視界が開けているということはとても大切なのです。
そんな場所を探したら,あとはただぼ~っと空を眺めて待ちましょう。
長い間空を見上げていては首が痛くなってしまいますから,寝転がって楽な姿勢で空を眺めるように工夫しましょう。寝転がると,見える空の範囲も広がって流れ星が見やすくなります。グランドシートの上にシュラフ(寝袋)を敷くと,寒さも風もしのげるし,背中も痛くなりません。折り畳み式のサマーベッドを使うのもよいでしょう。
じっと動かない流星観測の時は,寒さ対策もいつもより万全に心がけて下さいね。夏なら虫よけや蚊取り線香も準備しましょう。
観察のポイント
さて,準備は整いましたか? 観察を楽しくするために,最後に流れ星の観察ポイントをご紹介しましょう。
流れ星は,よくよく見ていると少しずつ違った特徴を示しています。
まず,色はどうでしょう?
流れ星がもともともっていた物質の違いや,流れ星が通った周辺の大気の構成で,流れ星の色は少しずつ異なっています。オレンジ色だったり青白かったり。色を変えながら流れていく星もありますよ。
次に,明るさはどうでしょう?
普通の星と同じように,流れ星も明るいものから暗いものまで色々です。近くにある星と,明るさを比べてみましょう。
それから,速さはどうですか?
ゆっくり空を横切る流れ星があれば,シュッっと一瞬で消えてしまうものもあります。流れ星が落ちてくる方向と地球が進む方向の組み合わせによって,流れ星の速さが決まっています。
最後に,流れ星の通った跡が残っていないか気をつけましょう。
流れ星には,通った跡に光の痕跡を残すものがあります。これは目の錯覚ではなくて,流星痕という現象です。長く残っている流星痕では,上空の大気の流れによって形が変わっていくのがわかります。ぜひ気をつけて見て下さい。
さぁ,それでは空を見上げて流れ星を待ってみましょう。