星空解説
7月前半は梅雨の最中で雨が多く夜も短く,星を見る条件はよくありません。けれど学校が夏休みに入る頃には梅雨明けし,太平洋高気圧に覆われて安定した晴れの日が続くようになります。
このような梅雨明け後の安定した晴れ続きを,梅雨明け十日と呼びます。夏休みに入ると林間学校やキャンプなどで星を見る機会も増えますね。
今年は20日(水)が下弦,29日(金)が新月です。
海の日の連休の頃は下弦前の月がありますが,日没から夜半すぎまで月明かりに邪魔されずに星座観察ができますし,下旬になるほど良い条件です。
七夕
7月と言えば七夕ですね。
けれども現在の暦では,七夕は梅雨の真っ只中で星が見えないことも多いですね。
今年は7月7日,七夕の日が上弦(半月)です。
夜半までは少しばかり月明かりがありますが,織り姫(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)は都会の明るい空でもよく見える星です。
織り姫と彦星は夏の大三角を形作る星でもあり,見つけるのは決して難しくありません。
晴れ間がのぞいたら,夏の大三角をさがしてみましょう。
参考: 夏の星座を探してみよう
ところで,本来の七夕は旧暦(太陰太陽暦)の行事(※)です。
旧暦七夕の頃には梅雨も明けていてよく晴れます。今年の旧暦七夕(伝統的七夕)は8月4日です。7月7日が雲ったら,8月4日の七夕を待ちましょう。
※ 旧暦七夕(伝統的七夕):
二十四節気の処暑以前で,処暑に最も近い新月を含む日から数えて7日目。
惑星
惑星は夜半過ぎの空に集まっています。
一番見やすいのは 来月衝を迎える土星で, やぎ座に位置しています。また9月に 衝を迎える 木星は うお座と くじら座の境目辺りを移動しています。
火星は うお座から おひつじ座を移動中で,日の出前の東の空。
金星も,日の出前の東の空低い位置に見ることができます。
木星と土星
木星も土星もひときわ明るく輝いていますので,都会の明るい星空でもすぐに見つけることができます。また,月明かりや街明かりがあっても支障なく望遠鏡で観察できます。
小望遠鏡があったら低倍率で衛星の動きや縞模様,環の形を楽しんでみましょう。
望遠鏡で惑星をとらえたら,是非スケッチをしてみましょう。スケッチをすることにより目が惑星に慣れ,何度か続けているとだんだん模様がよく見えるようになっていきます。目の「慣れ」は惑星の模様を観察するのに大切なスキルです。
望遠鏡で木星を見ると,木星の近くに衛星が見えます。小望遠鏡で見える衛星は ガリレオ衛星(※)と呼ばれる4個の衛星のどれかです。
望遠鏡を持たない方は,地域にある公共の天文台などが主催する観望会を捜してみましょう。
土星の環は2009年に真横から見た後,北から眺める形になっています。2017年に一番大きく広がった姿になり,現在は2025年の環の消失に向かって環が年々閉じていっている最中です。
今年の姿をスケッチなどで残しておくと,年々の移り変わりがよく分かります。
※ ガリレオ衛星
ガリレオ・ガリレイによって1610年に発見された木星の4個の衛星。
木星に近い順にイオ,エウロパ,ガニメデ,カリストと名付けられており,ガニメデは太陽系で一番大きな衛星です。イオは活火山があることで知られています。
冥王星
20日に準惑星の冥王星がいて座で衝を迎えます。
冥王星は衝でも暗くて肉眼では見えません。望遠鏡を使っても初心者が見つけるのは難しい惑星ですので,見たい方は公共天文台の観望会などで見せてもらいましょう。
スーパームーン
今月は月最近の翌日が満月です。月が地球に近い位置で満月を迎えるため,大きな満月=スーパームーンとなります。
スーパームーンという言葉はアメリカの占星術師リチャード・ノル(Richard Nolle)氏が定義したもので,天文学とは関係ありません。けれど,月が楕円軌道を描いて地球を周回していること,月と地球の距離が一定ではないことを知る良いチャンスです。
地球と月は近い時と遠い時で 4万キロも距離が変わり,満月の見かけの直径も最大で14%も異なっているのです。
スーパームーンの時には潮汐力が強まり,砂浜の浸食が50%増すという研究結果も出ています。
・ケイトとミラのスーパームーン (1)
・「スーパームーン」で砂浜浸食50%増し、海岸管理者への警告 | 日経クロステック(xTECH)
流れ星
夏休みは一年の中でも特に流れ星が多い季節です。
7月下旬には有名なペルセウス座流星群が流れ始めますが,同じ頃にやぎ座α流星群やみずがめ座 δ南流星群 なども活動しています。
今年は7月29日が新月で,7月下旬からお盆にかけての条件は良好です。
みずがめ座δ南流星群 (ZHR=16) の活動期間は7月12日~8月23日,やぎ座α流星群 (ZHR=5) は7月3日~8月15日。両方とも派手な流星群ではありませんが,長い期間活動しています。
どちらの流星群も放射点が上がってくるのは21時頃。それくらいの時間から未明までが見やすくなります。
やぎ座もみずがめ座も秋の星座で,輻射点(放射点)が同じ方向にあるため,この二つの群の流星を見分けるのはちょっと大変です。
やぎ座α流星群の群流星は,ゆっくりと流れるのが特徴で,爆発を伴う火球が見られることもあります。みずがめ座δ南流星群は母天体がマックホルツ彗星(96P/Machholz)で,やぎ座α群の流星より速く流れます。
ですが,観測するのでなければ群は気にせず,夏休みは流れ星が増える季節だと思って夜空をみあげて楽しむのが良いですね。
夏でも山の上などは冷え込みます。寒さ対策をして流星観察をしましょう。
参考:流れ星を見てみよう
南中する星座
午後8時(20時)に南中を迎える観察しやすい星座たちです。
☆印の星座は南天の星座のため,日本からは見えません。
上旬 | おおかみ座・てんびん座 |
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中旬 | かんむり座・こぐま座・じょうぎ座(☆) ふうちょう座(☆)・へび座頭部 みなみのさんかく座(☆) |
下旬 | さそり座 |
見やすい星雲星団
惑星状星雲 | M57 (環状星雲,こと座) |
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散光星雲 | M8 (干潟星雲,いて座) M17 (ω星雲,馬蹄型星雲,いて座) M20 (三裂星雲,いて座) ほか天の川に多数 |
散開星団 | M21・M23・M24・M25 (いて座) M6 ・M7 (さそり座) ほか天の川に多数 |
球状星団 | M3 (りょうけん座) M4・M80 (さそり座) M5 (へび座),M10・M12 (へびつかい座) M13・M92 (ヘルクレス座) |
銀河(系外星雲) | M51 (子もち星雲,りょうけん座) M101 (おおぐま座) |
2022年7月のカレンダー
日 | 曜日 | 月相 | 天文現象 |
1 | 金 | 山開き | |
2 | 土 | 半夏生(太陽の黄経 100度):5時47分 | |
4 | 月 | 地球が遠日点を通過(距離 1.017au):16時11分 | |
7 | 木 | 上弦:11時14分 小暑(太陽の黄経 105度):11時38分 七夕 | |
9 | 土 | 浅草ほおずき市 | |
11 | 月 | 水星が近日点を通過(距離 0.308au):6時43分 | |
13 | 水 | 月が最近(距離 0.929):18時6分 精霊祭 迎え火 | |
14 | 木 | 満月(スーパームーン):3時38分 | |
15 | 金 | ぼん | |
16 | 土 | 藪入り 送り火 一粒万倍日 三隣亡 | |
17 | 日 | 水星(☿)が外合:4時38分 | |
18 | 月 | 海の日 | |
19 | 火 | 水星が地球最遠(距離 1.337au):18時34分 | |
20 | 水 | 夏の土用の入(太陽の黄経 117度):1時41分 アルゴル型食変光星 アルゴル極小:5時14分 夏の土用の入りから立秋までの間に暑中見舞いを出す。 準惑星 (134340) 冥王星(♇)が衝(いて座,+14等):10時38分 下弦:23時19分 | |
22 | 金 | 火星と月の合(火星食):1時6分 準惑星 (1) ケレスが合:10時25分 | |
23 | 土 | アルゴル型食変光星 アルゴル極小:2時3分 大暑(太陽の黄経 120度):5時7分 土用の丑 | |
24 | 日 | 地蔵ぼん | |
26 | 火 | 月が最遠(距離 1.057):19時22分 | |
29 | 金 | 新月:2時55分 | |
30 | 土 | みずがめ座 δ南流星群🌠が極大 やぎ座 α流星群🌠が極大 | |
31 | 日 | 不成就日 一粒万倍日 |
2022年/令和4年/皇紀2682年/平年/ 壬寅(みつのえとら)
7月のお話
・文月
・July
・小暑と大暑
・山開き・洗車雨・酒涙雨・送り梅雨・戻り梅雨・梅雨明け・梅雨明け十日・かんかん照り・油照り
・Hay Moon(干し草の満月)
・温風至(あつかぜいたる)
・半夏生(ハンゲショウ)
データ出典
・暦 国立天文台 電算室
・流星 IMO | International Meteor Organization
・アルゴル極小 予報 – 日本変光星研究会