二百十日(にひゃくとおか)
立春から数えて二百十日目の日のこと。
毎年9月1日か2日ごろに訪れます。
雑節の一つで日本独自の暦です。
「二百十日」は「八十八夜」と共に明暦2年(1656年)の伊勢暦から記載されていましたが,渋川春海(※)は貞享(じょうきゅう)の改暦(1684年)の際に1度削除しました。しかし,伊勢の船長が奉行所に訴えたことから民間の便のために復活させたと記録に残っています。
二百十日の頃は台風の襲来と稲の開花がぶつかることから,農家で嵐の厄日として警戒されてきました。この時期には各地の神社で風の害を防ぎ五穀豊穣を願う風祭(かざまつり)が行われます。
毎年9月1日〜3日にかけて行われる富山市八尾町の「越中八尾 おわら風の盆」が有名です。
※ 渋川春海(しぶかわはるみ/1639-1715)
江戸時代前期の天文暦学者・囲碁棋士・神道家。
二百二十日(にひゃくはつか)
立春から数えて二百二十日目の日のこと。
毎年9月10日か11日ごろに訪れます。
旧暦では雑節に数えられていたため,現在でも二百二十日を雑節に加えることもあります。
台風と稲の開花が重なることから二百十日と並んで農家の厄日とされてきました。秋の季語にもなっています。
二百十日と二百二十日,そして8月1日の八朔を合わせて「農家の三大厄日」と呼びますが,何れも台風の稲作への影響を警戒した厄日です。旧暦の八朔は現在の8月25日〜9月23日頃となり,現在の二百十日や二百二十日と同じ時期となります。
9月の台風
歴史上の台風
台風の発生は8月が多く,近年では10月にも発生します。
けれど,9月は歴史上の被害が大きかった台風の上陸が多かったことから台風の季節というイメージがあります。
- 室戸台風(1934年/昭和9年):9月21日
- 枕崎台風(1945年/昭和20年):9月17日
- カスリーン台風(1947年/昭和22年):9月15日
- 洞爺丸台風(1954年/昭和29年):9月26日
- 狩野川台風(1958年/昭和33年):9月26日
- 伊勢湾台風(1959年/昭和34年):9月26日
- 平成3年台風第19号(りんご台風,1991年/平成3年):9月27日
洞爺丸台風と狩野川台風は,気象庁によって公式に名前が与えられた最初の台風です。
洞爺丸台風・狩野川台風・伊勢湾台風が上陸したのが何れも9月26日だったことから,9月26日は「魔の二六日」と呼ばれました。
アメリカ式の名前
ところで,「カスリーン台風」というのは奇妙な名前に見えますね。
これは,その頃の日本が連合国軍の占領下にあり,1947年(昭和22年)〜1953年(昭和28年)5月の台風が,アメリカ式にABC順に女性の名前がつけられていたためです。
東海豪雨
西暦2000年9月には東海豪雨がありました。
この年の二百二十日は9月10日でしたが,東海豪雨が起こったのは翌9月11日〜12日にかけてです。
この時は沖縄県の東に台風,北陸地方に秋雨前線という気圧配置で,台風に吹き込む風によって秋雨前線が活発になり東海地方に豪雨をもたらしました。特に名古屋市天白区では甚大な被害が出たのでした。
風台風
平成16年(2004年)台風18号(アジア名ソングダー)は,9月5日に大型で非常に強い勢力で沖縄本島を通過しましたが,沖縄県名護市で最低気圧924.4hPaを記録しました。
その後も強い勢力を保ったまま9月7日に長崎市付近に上陸し,九州北部を横断して日本海へ抜けました。北海道沖に達しても暴風域を伴っており,8日朝に温帯低気圧に変わった後も暴風域を発達させて宗谷海峡に達しました。
風台風として知られるこの台風は,広島市で最大瞬間風速60.2m/s,山口市で50.5m/s,札幌市で50.2m/sを記録し,風により大きな被害を出しました。
下の写真は,この台風が通り過ぎた後の熊本市内の様子です。
大きな木がなぎ倒され,民家の塀も倒れています。折れた道路標識も見かけました。
熊本市では最低気圧964.9hPa,最大瞬間風速47.4m/sを記録。熊本県では43万9200世帯が停電(県の世帯数は67万3500)するなどの被害が出ました。
台風18号が通り過ぎた後
台風の片付けが終わった様子
(写真はクリックで拡大できます。)
参考:
・精選版日本国語大辞典
・大辞泉
・三省堂国語辞典
・『空の名前』(高橋健司 著/光琳社出版)
・暦Wiki/季節/雑節とは? – 国立天文台暦計算室
・貴重資料展示室046 季語・歳時 – 国立天文台暦計算室
・暦Wiki/渋川春海 – 国立天文台暦計算室
・台風第18号 平成16年(2004年) 9月4日~9月8日